第36回
エリザベス女王杯(13日、京都11R、GI、3歳上牝馬オープン国際(指)、定量、芝・外2200メートル、1着本賞金9000万円 =出走18頭)さらにパワーアップして帰ってきた。ライアン・ムーア騎乗で1番人気に推された英国の
スノーフェアリーが、ゴール前で鋭い末脚を発揮して、再び日本馬を押さえ込んだ。JRA平地GIでの外国馬の連覇は初めて。2週後の
ジャパンC(27日、東京、GI、芝2400メートル)にも登録しているが、出否に関して陣営は明言を避けた。2着には2番人気の
アヴェンチュラ、3番人気の
レーヴディソールは11着とデビュー以来初めて黒星を喫した。
ゴール直前、外から来ると思っていたピンクの帽子が、馬場の内めから一瞬にしてすべてを飲み込んだ。英国から来た女王は今年も恐るべき強さで日本の牝馬を一蹴。これが世界の脚なのか。昨年の覇者
スノーフェアリーが外国馬初のJRA平地GI連覇を飾った。
「連覇がかかっていてもいなくても、日本の大レースを勝つのは気持ちいいもの。これで
スノーフェアリーのレベルの高さを証明できたと思う」
ライアン・ムーア騎手は、笑顔で偉業を成し遂げた女王をたたえた。
大外からのスタート。1000メートル通過57秒5のハイペースを、後方外めで気分良く走らせた。3コーナーで馬群が途切れると、進路を外から内に一気に切り替えた。直線では3頭の勝負と思われたが、磨きをかけた末脚がさく裂した。上がり3ハロン33秒8。2番目に速い2着馬より0秒4も速い豪脚を繰り出して、2度目の日本でのトップゴールを果たした。
「ペースが速いと前の馬は下がってくる。そうすると馬群に隙間ができる。そこを狙っただけ。チャンスが来たときに、いつものようにスピードアップしてくれたんだ」
こともなげに言うムーアだが、強さは際立っていた。これまでJCや
安田記念を制した外国馬が連覇を狙ったが、敗れた。かなわなかった偉業が、英国の牝馬によって達成された。
「
スノーフェアリーを、そしてスタッフを誇りに思うが、何よりも彼女に乗って5戦5勝という偉大なライアン・ムーアに感謝したい」
エドワード・ダンロップ調教師はジョッキーに賛辞を贈った。10月の仏GI
凱旋門賞3着から中1週で英GI
チャンピオンS(3着)に出走し、中3週で日本に来る強行軍。トレーナーは「それは心配していなかったが、4歳で斤量が増え(54キロ→56キロ)、大外枠のスタートで後ろからの競馬になるという条件に、少しあきらめそうになった。昨年の4馬身より着差が縮まったが、この勝ちっぷりが感動的だった」と、声を震わせた。
登録がある
ジャパンCは、状態を見極めて決断する。だがレース後にムーアは言った。
「まだベストのフォームじゃなかったね。走り終わってもタンクにガスが残っている感じ」
余力はある。今度は日本の誇る牡馬勢と、そして
凱旋門賞で先着を許したデインドリームとシャレータとの再戦を。日本の、いや世界のファンが待ち望んでいる。 (柴田章利)