第72回
オークス(22日、東京11R、GI、3歳牝馬オープン国際、定量、芝2400メートル、1着賞金9700万円 =出走18頭)
後藤浩輝騎乗、7番人気の伏兵
エリンコートが、500万下→忘れな草賞を連勝してきた実力を証明。中団から脚を伸ばして、ゴール寸前で逃げ粘る8番人気の
ピュアブリーゼを捕らえ、重賞初制覇を
オークスの大舞台でやってのけた。タイム2分25秒7(良)。2番人気の
ホエールキャプチャは追い込み届かず、クビ+ハナ差の3着。1番人気の
桜花賞馬
マルセリーナは後方から差を詰めたが、4着止まりだった。
新女王誕生の瞬間は、雨の中だった。トントン拍子の3連勝で、栄冠をゲット。
エリンコートが、雨にけむる府中の直線を力強く駆け抜けた。
「急激に天気が悪くなり、場内のライトを気にして内に逃げる面を見せていたので、直線はそれを修正するので精いっぱいでした。でも、まだ余力はありましたよ」
曇り空をはね返すようなすがすがしい表情で、
後藤浩輝騎手が振り返った。
道中は中団から折り合い重視で運んだ。人馬のリズムに乱れはなく、4角でスッと加速しながら直線へ。ところが、いざ追い出すと内へと馬がヨレだした。懸命に左ムチをふるって立て直しつつ、せめぎ合う。グッとクビ差抜け出したところがゴールだった。
92年デビューの後藤騎手はクラシック初V。「勝ったことがまだ信じられない。頭が真っ白。感無量です」と白い歯をみせた。
一方、
笹田和秀調教師は開業3年目でGI初勝利。表彰式に向かう途中、地下馬道の出口でオーナーブリーダーの吉田照哉氏に「君は何かを“持ってる”ね」と語りかけられ、こちらも曇り空とは対照的な晴れやかな笑顔をみせた。
「賢く走ってくれました。『(後藤)浩輝、頑張れ』と声が出ました。馬に感謝しています」
レース直後、師匠で義父の
伊藤雄二・元JRA調教師から「おめでとう」と電話があった。調教助手時代には96年
オークスなどを制した女傑
エアグルーヴを筆頭に、数多くの名牝を師匠の下で手がけてきた。初タイトルが牝馬だったことは偶然ではなく、“財産”が存分に生かされた結果だろう。
この後は休養に入り、
秋華賞(10月16日、京都、GI、芝2000メートル)に備える。「1戦ごとに勉強してくれています。今後、成長してくれれば、この後も活躍できると思います」と、トレーナーは胸を躍らせた。秋になれば、樫の女王はさらにたくましくなった姿を見せてくれるはずだ。(宇恵英志)