岡村信将
くりーく
菊花賞TR・第63回セントライト記念(20日、中山11R、GII、3歳オープン、馬齢、芝・外2200メートル、1着本賞金5400万円、3着までに菊花賞の優先出走権=出走18頭)最後の1冠へ執念の勝利-。蛯名正義騎乗の2番人気ナカヤマフェスタが、好位追走からゴール前の攻防を半馬身しのいで重賞2勝目をマーク。菊花賞(10月25日、京都、GI、芝3000メートル)に向けて好発進だ。2分12秒0(良)。2着セイクリッドバレー、3着フォゲッタブルまでが優先出走権を獲得。単勝2.4倍の1番人気に推されたアドマイヤメジャーは僅差4着に敗れた。 明るい陽射しに包まれた中山競馬場で、2番人気のナカヤマフェスタが馬場のど真ん中を突き抜けて重賞2勝目をマーク。いまだ勢力図が定まらない菊花賞の主役候補に名乗りを上げた。 レースは好位の外めを追走し、3角すぎから早めに動いて完勝。はた目にはスムーズに見えたが、綱渡りの連続だった。「春に比べて馬体は成長していたけど、とにかく気持ちが難しい。悪いことをしそうな気配があったので用心して乗った」と蛯名正義騎手は神経をつかい、さらには「勝負どころはズブいくらいの手応え。自力勝負のつもりで動いていった」と打ち明けた。 この日の4RでJRA通算1万4000回騎乗を達成した蛯名。その豊富なキャリアを生かし、心身両面でジョッキーに大きな役割が課されていたレースで最高の結果を導き出した。 「見ていても危なっかしい走りに見えました」と二ノ宮敬宇調教師もホッとした表情。「わがままというか、自我が強いというか。難しいです。(人と馬の)上下関係を分かっていないような感じで…。この後は美浦近くのドリームファームに放牧に出します。1度リラックスさせて、いい状態で菊花賞に向かわせてあげたい」とベストの状態を引き出す策を取る。 ズバリ菊の勝算は-。「神戸新聞杯には春に負かされている馬が出てくるけど、こちらは最高の秋のスタートが切れたからね」。順調さを欠いた皐月賞(8着)と道悪に泣いたダービー(4着)が蛯名騎手の脳裏をよぎる。「このまま馬のやる気と前向きさをなくさないように本番までもっていきたい。あのズブさは距離が延びる3000メートルでは逆に武器になるかもしれない」。最後の1冠に向けて、蛯名騎手の腕が鳴る。(阿部裕昭)