今週末のサウジでの騎乗を最後に騎手を引退し、3月から調教師に転身する福永祐一騎手(46)=栗・フリー=が、最後の公式記者会見に臨んだ。会見後にはランフランコ・デットーリ騎手(52)=イタリア出身、英国拠点=からエールも。自身が憧れたスーパースターからの言葉に、有終の美への思いを新たにした。なお、サウジ国際競走は国内で馬券の発売は行わない。
競馬の神様はサウジアラビアで大きなプレゼントを用意してくれていた。キングアブドゥルアジーズ競馬場での最後の記者会見。引退レースへの意気込みを語って会場を出た福永騎手を待ち構えていたのは、自身にとってのスーパースターで、凱旋門賞6勝など〝世界ナンバーワン〟といわれるランフランコ・デットーリ騎手だった。
「いい記念になったね。『調教師になる』って言ったらビックリしていたよ。最後のレースに一緒に乗れるのは、フランキー(デットーリの愛称)ファンとしてはすごくうれしいね」
ハグを交わした際に引退を報告すると、もう一度グッと肩を抱かれてねぎらわれた。その後は同じ時間帯に会見を行った香港で数々の実績を残し〝マジックマン〟と呼ばれるブラジル人騎手ジョアン・モレイラとともに撮影会に。くしくも3人ともに、年内で騎手を引退することを表明しているだけに、貴重なスリーショットとなった。
騎手を志したときに憧れたのが、すでに世界のトップに君臨していたデットーリ騎手。「スター騎手だったからね。一緒のレースに乗ったときにはフワッとなった。短期免許で日本に来てくれたときはうれしかった。世界の一流に触れられる貴重な機会やったからね」。サウジアラビアで引退することを選んだからこその再会に、笑顔がはじけた。
ともに憧れのスターとの競演となるラスト2鞍のパートナーには、好感触をつかんでいる。サウジダービーのエコロアレス(栗・森、牡3)は、22日の追い切りに騎乗。「非常にコンディションはいいと思う。初めて海外で騎乗したシーズグレイス(1996年香港国際C9着)も森先生だったからね」と力を込めた。引退レースとなるリヤドダートスプリントのリメイク(栗・新谷、牡4)の調教にはまたがっていないが、「陣営がいろいろと考えてくれている。結構深い感じがあるサウジのダートがマッチすれば、いい結果を出せると思います」とV締めを狙う。
96年のデビューから27年。騎手人生の最後のときをかみしめながらも、自然体で臨む構えだ。
「いよいよラストが近づいているなと感じています。ただ、騎手としてやるべきことに集中していく。日本の多くの方が画面越しに声援を送ってくれていると思うので、いい結果を出していい報告をしたいですね」
力強い言葉で締めくくった福永騎手の表情は、身につけた青空色のコントレイルのジャージーのように晴れやかだった。
◆デットーリも惜別 デットーリ騎手は福永騎手の引退を惜しみつつ、新たな道へのエールを送った。「祐一とは長い間一緒に乗っていて、寂しい気持ちだね。彼は引退するには若過ぎる。調教師としてのグッドラックを願っているよ」。自身も今年いっぱいで引退する意向を表明済み。「今年は今まで自分を支えてくれた世界中の人に感謝を伝える年。アメリカで乗り始めて、サウジアラビアに来て、ドバイ、アスコット、メルボルンにも行く予定。今後は競馬関係のコメンテーターをするけど、〝ノートレーナー〟だね」と、セカンドキャリアについて語った。
◆サウジCデー諸競走 2020年にサウジアラビアジョッキークラブが主催で創設された国際レースで、GⅠで1着賞金1000万ドル(約13億5000万円)のサウジCを頂点に、同日に重賞が6レース行われる。日本馬は1回目から多数参戦していて、6重賞のうちサウジCを除く5レースで勝ち馬を出している。今年は5レースに日本馬が出走予定で、総勢20頭が中東の地で熱戦を繰り広げる。
◆放送予定 サウジCデー諸競走はグリーンチャンネルの「ALL IN LINE2023 サウジカップデー中継」で25日午後11時から26日午前3時まで放送される。福永騎手が騎乗するサウジダービーは26日午前1時5分、リヤドダートスプリントは同1時45分に発走予定。サウジCは同2時35分を予定している。