いざ、ダービー馬復活へ! 中山競馬場の日曜メインで行われるGII産経賞オールカマー(23日、芝2200メートル)の追い切りが20日、茨城・美浦トレーニングセンターで行われ、昨年のダービー馬レイデオロ(美浦・藤沢和雄厩舎、牡4歳)がウッドチップコースで上々の走りを見せた。5ハロン69秒3と時計は平凡ながら、騎乗したクリストフ・ルメール騎手(39)は高く評価。不本意な結果だった春2戦の雪辱に向けて、陣営は力が入っている。
薄曇りの空から、復活への光が差し込んだ。昨年のダービー馬レイデオロが、Wコースで絶好の動きを披露。美浦に駆けつけたルメール騎手は満足げに切り出した。
「息の入り、フットワークのバランス、反応とも良かった。(同じ休み明けだった)去年の(秋の)初めはまだ寝ている感じだったけど、先週追い切りをやって、今週は“起きていた”ね」
向こう正面からコースに入り、レッドオーガー(1000万下)を6馬身、ゴーフォザサミット(OP)を2馬身追走。直線は内に進路を取り、残り100メートルから鞍上が軽く反応を促すと抜群の加速を見せた。5ハロン69秒3、3ハロン39秒7-12秒4で中のゴーと併入し、外レッドには1馬身先着。過度なテンションの上昇もなく、人馬の呼吸はぴたりと合っていた。ダービー馬のお目覚めだ。
栄光に彩られるはずだった2018年は、まさかの苦戦続き。ルメール騎手が騎乗停止となり、鞍上にバルジュー騎手を迎えた京都記念は、勝負どころで掛かって3着と失速。続くドバイシーマクラシック(4着)は前残りの展開にはまり、末脚を生かし切れなかった。それでも津曲助手は「経験のないスローペースで折り合いに苦労しながらも、我慢し切れたのは今後の糧になる」と前を向く。
前走後はたっぷりと充電期間を置き、捲土(けんど)重来の秋に備えてきた。「たくましく古馬らしい体つきになってきたし、ストライドも大きくなった。ナーバスな面もなく雰囲気はいい。うまく休養で立て直せた」と津曲助手は胸を張る。中山ではGIIホープフルSなど3戦2勝。復権に向けて申し分のない舞台設定だ。
今後、天皇賞・秋(10月28日、東京、GI、芝2000メートル)に向かうかジャパンC(11月25日、東京、GI、芝2400メートル)に向かうかは、今回の結果と内容次第。「今年の2戦はリズムが悪く、ツキもなかった。牧場でしっかり乗ってきて、心身ともにいい状態。今後にGIもあるけど、ここも目標だから」と藤沢和調教師は意気込む。スペイン語で「黄金の王」という名を頂く第84代ダービー馬に、まばゆい輝きを取り戻すときがやってきた。 (漆山貴禎)
★産経賞オールカマーの出馬表はこちら 調教タイムも掲載
★ダービー馬初Vへ
古くから伝統の一戦として定着している産経賞オールカマーだが、意外にもダービー馬の勝利はない。別表の通り、過去に挑戦した3頭のうち2頭の2着が最高。レイデオロには、64回目を迎えるレースに新たな1ページを刻む期待がかかっている。
★漆山がミタ 追い切りチェック
坂路でもWコースでも、馬なりを基本に丹念な乗り込みを積み重ねるのが“フジサワ流”の仕上げ方。よって、目立って速い時計をマークすることや、併せ馬で大差の先着を果たすことは少なく、なかなか調教採点で『S』はつけづらい。
20日のレイデオロも、全体時計はWコース5ハロン69秒3と水準級だったため、評価は『A』にとどめた。ただ、ラスト1ハロン12秒4という数字が示すとおり、ルメール騎手が軽くGOサインを送ってからの反応は見事だった。先月24日の坂路4ハロン60秒4から計10本の時計を出し、上々のデキで秋初戦を迎えられそうだ。
★67歳祝う
レイデオロを管理する藤沢和雄調教師(66)は、同じ23日に阪神で行われるGII神戸新聞杯にも管理馬ゴーフォザサミット(牡3)を送り出す。同日に2重賞を勝てば、2003年2月2日(GIII東京新聞杯=ボールドブライアン、GIII京都牝馬S=ハッピーパス)に次いで自身15年ぶりの快挙。レース前日の22日に67歳の誕生日を迎える名伯楽が、自ら一日遅れでバースデーを祝おうとしている。