宝塚記念が終わると、一般的には夏休み。よほどの競馬好きでもない限り、この時期のローカル重賞をTVにかじりついて観戦はしないのが競馬の常識だ。出走メンバーも当然小粒になり、“強い馬による強い勝ち方”を楽しむG1のような観戦醍醐味はグンと減る。ならば何故競馬ファンはローカル重賞を買うか?答えは一つ。“高配当を獲りたいから”だ。
「待ってました!」というオールドファンたちの心の声が聴こえてくるようだ。そんな彼らの心の声に応えて、今回は「荒れるローカル狙い撃ち」の格言を紹介しよう。曰く「夏のローカルは老兵を狙え」である。
1987年の吾妻小富士賞(現在の吾妻小富士OP)。当時10歳(現在の9歳)のイクエヒカルが勝利した時、実況アナウンサーは「信じられません!なんと、なんと10歳馬!イクエヒカル堂々の勝利!」とその勝利を“奇跡”と讃えたが、あれから35年、競馬と競走馬を取り巻く環境は大きく進化した。飼料の劇的な改善や、トレーニング・馬の健康管理の方法の大幅な改善により、高齢馬の活躍の場は更に広がり、JRA平地および重賞競走の最高齢勝利記録は今や、アサカディフィートの持つ10歳(35年前ならば11歳、小倉大賞典)である。
スターホースが出揃う秋のG1戦線ではどうしても見劣る老兵…。そんな彼らが「鬼の居ぬ間に洗濯」とばかりに狙うローカル重賞。高配当を運んでくれる馬は次の要素を持っている。
①距離・コース適性がある
②実力自体はあるが前哨戦で大敗している(6着以下)
関屋記念の過去の結果を遡っても、春のG1戦線で“死んだフリ”をしていた面々の活躍は散見される。一昨年の優勝馬サトノアーサーや3年前の優勝馬ミッキーグローリー、そして同年2着馬ミエノサクシードなどである。サトノアーサーは2020年、同レースまでに5戦未勝利。だが直前のエプソムカップを6着に敗れるまで4戦連続して1番人気を背負うなど、ファンはその底力を認めていた。ミッキーグローリーは前年のマイルCS5着のあと1年近くなりを潜めての勝利だったが、同馬もそれまでの実績を考えれば関屋記念はむしろ狙いすました1鞍だった。多くの経験を重ねた“レース巧者”でありながら、G1戦線では一歩及ばない。そんな馬が「メイチ勝負」をかけてくるレースが関屋記念、と言っても過言ではない。
今年のメンバーを見ると、前述の好走馬たちと戦歴が酷似する馬が一頭いる。ザダルだ。デビュー以来3連勝は輝かしく、セントライト記念3着までは一流路線だが、菊花賞挑戦以降は10戦してG1チャレンジなし。エプソムカップ、京都金杯と2つのG3勝ちを収めているが、いずれもG1につながるレースというよりは“宴のあと”的なレースで、超一流馬たちが出走しないところを狙いすまして獲りに行った感が強い。収得賞金7500万円はメンバー中ダントツ1位。「力はあるが死んだフリ」の老兵指名にピッタリの馬と言えよう。
2度の凡走で人気を下げるはずの今回、走り頃ではないだろうか。
(文:のら~り)