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【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR⑥~中長距離界に新星、ナッサ!香港初勝利を重賞で飾る

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【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR⑥~中長距離界に新星、ナッサ!香港初勝利を重賞で飾る | コラム | ウマニティ

菊花賞キセキ、4度目の挑戦となる常連ステファノスら香港国際競走(HKIR、12月10日)への名乗りが続々と聞こえてくる中、香港では11月5日、トライアル3レース(11月19日)に向けて最後のハンディキャップ重賞、ササレディスパース(G3)が行われました。トライアルまでの重賞の中で1800mと最長、香港カップ香港ヴァーズに照準を合わせた中長距離馬のステップレースになります。香港はマイル以下のレースが7割以上を占め、中長距離馬は手薄、重賞ウィナーは4頭に留まりましたが、このメンバーから本番では日本の主力である中長距離陣営を迎え撃つ香港代表が選出されるだけに必見のレースです。

香港を訪れた方なら街中でササという化粧品小売りチェーンを目にしたことがあるでしょう。一軒の化粧品店ササを上場企業まで発展させたサイモン・クォック(郭少明)氏は香港ドリームを実現した立志伝中の経済人で、夫人、子女ら一族で「ビューティー」の冠号を持つ多くの競走馬を所有する大馬主一家、“郭家軍”の総帥です。このレースをスポンサーし、化粧品チェーン店らしく、この日の女性来場者はドレスアップがお約束。エスコートの男性ももちろんおめかししての来場と、この日のシャティン競馬場はパリ・ロンシャン競馬場をほうふつとさせるほど華やかです。


さて“郭家軍”、このレースに出走はありませんでしたが、今季は昨年の香港マイルを制し安田記念に挑戦したビューティーオンリーに加え、子息名義のビューティージェネレーションがG3、G2を連勝して香港マイル戦線に名乗りを上げ、“郭家軍”で香港マイルV2、上位独占をを虎視眈々と狙っています。
そして、このレースには“郭家軍”に並ぶ香港の大オーナー“蕭家軍”が3頭を出走させてきました。自動車部品メーカーを郭氏同様に一代で立ち上げた蕭百君氏一家は夫人、子女ら多数の競走馬を擁し、一族のシンボルである赤と黒縦縞の勝負服を目にしない競馬開催日はないほどです。また、日本企業との取引も多いため、蕭百君氏、長男の蕭剣平氏、蕭剣新氏のいずれもネイティブ級の日本語使い。オーストラリアに生産牧場も持って自家繁殖しているほか、欧米、南半球から現役馬をトレードしてビッグレースの常連となっています。

今季初戦のプレミア・ボウル(G2、芝1400m)を3着したタイムワープは重賞未勝利ながら単勝2倍の1番人気。同レースで6着、昨季は香港では数少ない2400mの重賞、クイーンマザー・メモリアルカップ(G3)を勝ったイーグルウェイが7.7倍で3番人気。南アフリカからトレードされ、ここまで4戦未勝利のナッサが7.9倍で4番人気とまずは人気面で上位を独占しました。
この他では前走、前々走とクラス2の1800mを3、2着したドゥウィーニが7.1倍の2番人気、昨年のこのレースの覇者で連覇を目指したホーススオブフォーチュンはトップハンディ131ポンドが嫌われてか7番人気19倍と人気を落としました。

レースを引っ張ったのは“蕭家軍”の総大将、タイムワープ。好スタートから3頭雁行の中、1ハロン過ぎからハナを奪うとJ.モレイラに導かれ皮を切らせて肉を断つ、肉を切らせて骨を断つ逃げ戦法。1000m通過が58秒69とハイペースで後続にも足を使わせます。イーグルウェイは後方2番手から、ナッサは中団7番手と“蕭家軍”は後ろから前から勝負をかける構え。
軽快にラップを刻むタイムには重賞ウィナーのホース、ハーバーマスターロマンティックタッチ、ドゥウィーニが続きましたが、直線に入ると先ずハーバーが脱落。タイムは内埒沿いにスパートをかけて後続を突き放し、モレイラ・マジックがまんまとはまるかと見られた残り50m、中団に控えていた“蕭家軍”3番手のナッサが馬場中央から鋭く伸びて首だけ交わしたところがゴール。“蕭家軍”が上位独占を果たしました。
タイムがハイペースでレースを引っ張ったため、勝ち時計の1分45秒41はレコードタイム。先行した重賞ウィナーのロマンティック、ホースが3、4着に粘りこみ、“蕭家軍”のもう1頭で後方に控えたイーグルが大外から直線だけの競馬で5着に突っ込みました。


勝ったナッサは南アフリカで6戦2勝、G2、G1で3着の後、今年4月香港デビュー。ここまで4戦未勝利でしたが、5戦目の香港初勝利が重賞初勝利と大金星、南アフリカG1 3着の力を漸く発揮しました。T.ミラード調教師は「南アフリカでこの馬を購入した時からただものではないことは分かっていた。今日それが証明出来て、この馬の相当な実力を確信できたよ」と喜びを語りました。この後は19日に2000mのジョッキークラブカップに登録。層の厚い“蕭家軍”の他馬との兼ね合いもあり香港ヴァーズに出走する可能性も否定できません。T.ミラード調教師は昨年のホースオブフォーチュン、一昨年のトップアクトから3連覇。このレース4勝目を挙げ、ササ・レディースパース男の異名をとりそうです。



1、2、5着と出走させた3頭が全て掲示板に乗った“蕭家軍”、香港カップ香港ヴァーズの中長距離G1の2レースにどのような割り振りをするのか、トライアル後には判明することでしょうが、その動向に目を離すことはできません。また、連覇は逃したもののトップハンディながらハイペースを追走して4着に粘ったホーススオブフォーチュンにも本番では警戒が必要です。
(写真提供:HKJC)


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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