最新競馬コラム

【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR④~ミスタースタニングが勝利!プレミアムボウルに単距離馬勢ぞろい

 944

【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR④~ミスタースタニングが勝利!プレミアムボウルに単距離馬勢ぞろい | コラム | ウマニティ

日本が台風21号に襲われ暴風豪雨の中、総選挙の投開票が行われた10月22日、香港は快晴に恵まれ、夏を思わせる陽差しがシャティン競馬場を照らしました。この日、G2 2レースが行われ、香港競馬最大の祭典である12月10日の香港国際競走(HKIR)へ向けた蹄音が一段と高まりました。筆者は総選挙には投票せず、HKIRへの道筋を極めんと欲して香港で勝馬投票に興じていました。非国民となじられようと非難されようと、こればかりはその汚名を甘受することに吝かではありません。

さて、HKIRまでの重賞戦線は下図にまとめてあります。夏のシーズンオフの有無は日本と香港で大きく異なりますが、日本の夏のローカル開催が香港のシーズンオフに相当し、日本の秋競馬スタートが香港のシーズンインに相当します。異なるのは日本ではレースが距離別に整備され、ぞれぞれの路線でG3、G2、そしてクライマックスのG1と日付をずらしてヒートアップしていくのに対して、G1 4レースが12月10日一日に行われる香港では前哨戦も同日に複数行われるという点です。



この日も本番、香港スプリント香港マイルと同じ条件のG2 2レースが行われました。この日の2レースは日本、それも関東に例えれば、夏の上り馬と休養明けが対峙した中山を終えて舞台を東京に移し、夏をしっかりと休養、たっぷりと英気を養った有力馬が新興勢力を迎え撃つ毎日王冠のような位置づけと説明すれば分かりやすいかと思います。ただ、本番が12月第1日曜の香港では、この後に秋の天皇賞のような一つ目のクライマックスが来るのではなく、秋の天皇賞の距離が短縮される前のように、この後にもう一回トライアルを挟んでHKIRの頂上に向かう点が日本とは異なります。

日本の秋の中長距離戦線、前哨戦から秋の天皇賞、ジャパンカップ有馬記念と皆勤する馬は殆ど見られなくなりました。現代の競馬ではいかに馬を消耗させずにピークを本番に持っていくか、これが調教師に課せられた最大のテーマになっているからです。香港も同様です。9月第1日曜の開幕から12月10日までの本番までの間、どのレースに出走し、またスキップするか、調教師は虚々実々の駆け引きを演じます。本番までの4レースを皆勤する馬もいないわけではありませんが、そのうち調教代わりにレースを使われている馬、仕上げてレースに臨む馬、いずれなのかを見極めるのが前哨戦の楽しみであり、的中への早道です。

また、11月19日のトライアル、本番は定量戦であるのに対して、それまではハンディ戦。新興勢力は軽ハンディを利して上位を占め本番の出走権確保を目指し、実績馬は重いハンディを課される中で本番へと続くファーストステップをいかに無理のないよう、負担の残らないようにレースを進めるか。これを見極める点も検討の大きなポイントです。この日の2レースも正にこの勝利の方程式そのものであり、こうした観点からレースを振り返ります。

<プレミアムボウル=精英碗>
香港スプリンター陣のこのレースまでのレーティング(国際ではなく香港域内)上位馬が勢ぞろいしました。128のミスタースタニング、ザウィザードオブオズ、127は春のスプリント王決定戦、チェアマンス・スプリント・プライズを制したラッキーバブルズと香港スプリント覇者のペニアフォビアの2頭。これに126のノットリスニントゥーミー、124のアメージングキッズと続きます。

このうちミスター、ぺニア、ノット、アメージングは中華人民共和国の建国記念日を祝う10月1日のザ・ナショナルデー・カップに出走、それぞれ6、9、2、8着。残るラッキー、ザウィザードオブオズの2頭は休み明け初戦でした。ここにザ・ナショナルデー・カップで重賞初制覇を果たしたダッシングフェローを筆頭とするレーティング115以下の新興勢力が激突するという構図です。

1番人気は春のスプリント王、ラッキーが単勝2.5倍、これに昨シーズン閉幕間際にG3ウィナーに上りつめたザウィザードオブオズが3倍と休養明けの2頭が支持を集めました。前者はこの距離13戦7勝2着6回の実績に「バリア・トライアル=試閘」と呼ばれる実戦形式の調教2回でともに1着と好仕上がりを見せていたこと、後者は「雷神」との異名をとり、神の領域に迫る名手、J.モレイラ騎乗がその理由でしょう。これにザ・ナショナルデー・カップ組が続きます。ここで6着ながら春のスプリント王決定戦でラッキーに僅かに及ばなかったミスターが9.1倍、4着のマジックレジェンドが10倍、3着のデービーピンが11倍と続きました。勝馬のダッシングフェローは良績が直線1000mに集中していることから単勝36倍まで人気を落としています。馬券上手の香港競馬ファンは実績馬に軍配を上げました。

レースはファビュラスワンが前走のザ・ナショナルデー・カップ同じ様にG1ウィナーのぺニアを抑えてハナを奪い、ぺニアとストラスモアが2番手、3番手を奪い合います。1番人気のラッキーは外にミスターを見て後方から4番手、ザウィザードオブオズは最後方からレースを進めました。800m通過45秒51と決して遅いペースではありませんでしたが、軽快に飛ばすファビラスが直線に差し掛かると、並んでいた2頭は内外に別れて追い出しにかかります。ファビラスは113ポンドの軽ハンディを利して粘りこみを図りますが、残り50mで外からミスターが襲い掛かり、最内をついて馬群を縫ってラッキーがファビラスの外に馬体を合わせて交わしましたが、外のミスターに半馬身及びませんでした。後方2頭目に控えたアメージングが直線鋭い足を繰り出して1馬身差の3着に突っ込み、単勝41倍の低い評価を覆しました。


ラッキーは1番人気を裏切ってしまいましたが、着差は馬群を捌くまでに足を使った分が8割、一度使った差が2割。次走のトライアルではミスターと互角にまで仕上げられると見ます。2番人気のザウィザードオブオズは9着と見せ場なく終わりましたが、休み明けと初めて背負わされたトップハンディの133ポンドが敗因。休み明けを叩いた上積み、定量126ポンドのトライアルでは決して無視はできません。3着のアメージングは前走叩いた上積みがしっかりと結果に結びつきました。

香港競馬ファンが下した評価通りに実績馬が上位を占めました。新興勢力は定量戦となるトライアルでこのレースの上位を占めた実績馬の壁を破るのは相当難しいのではないでしょうか。敗戦組からトライアルでの逆転を望めるのはザウィザードオブオズ程度と見ました。また、スプリンターズSに挑戦し、5着と健闘したブリザードは遠征の疲れから100%回復させてから復帰の予定でトライアルは回避の予定。ブリザードに関しては稿を改めます。
(写真提供:HKJC)

Road to HKIR⑤~重賞連勝を果たしたビューティージェネレーション!シャティン・トロフィーはJ.ムーア厩舎が1、2着を独占へ続きます。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

 ナイス!(2
  • (退会ユーザー)
  • (退会ユーザー)

このコラムへのコメント

コメントはありません。

関連競馬コラム

新着競馬コラム

人気競馬コラム

会員登録(無料)でできること

レース情報

今週の注目レース

4月28日()
天皇賞(春) G1
4月27日()
青葉賞 G2
ユニコーンS G3

⇒今週の番組表へ

先週のレース結果

4月21日()
マイラーズC G2
フローラS G2
4月20日()
福島牝馬S G3

⇒先週の番組表へ

総賞金ランキング
JRA競走馬総賞金ランキング
4歳以上
1 ドウデュース 牡5
102,726万円
2 スターズオンアース 牝5
84,098万円
3 リバティアイランド 牝4
74,444万円
4 ディープボンド 牡7
67,569万円
5 ジャスティンパレス 牡5
65,388万円
6 シャフリヤール 牡6
59,685万円
7 タスティエーラ 牡4
57,005万円
8 セリフォス 牡5
49,313万円
9 ジャックドール 牡6
49,004万円
10 ソールオリエンス 牡4
48,668万円
» もっと見る

3歳
1 ジャスティンミラノ 牡3
27,482万円
2 ステレンボッシュ 牝3
21,547万円
3 ジャンタルマンタル 牡3
18,666万円
4 アスコリピチェーノ 牝3
16,854万円
5 コスモキュランダ 牡3
15,392万円
6 シンエンペラー 牡3
11,128万円
7 コラソンビート 牝3
9,942万円
8 エトヴプレ 牝3
9,644万円
9 スウィープフィート 牝3
9,386万円
10 レガレイラ 牝3
8,278万円
» もっと見る