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【安田記念】 血統考察 byうまカレ

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【安田記念】 血統考察 byうまカレ | コラム | ウマニティ

学生団体うまカレ副代表の金沢ユウダイです。
先週の日本ダービーは、マカヒキが優勝。落鉄しながらハナ差2着に好走したサトノダイヤモンド、不得意な上がり勝負になりながらも2着馬に肉薄したディーマジェスティ、府中2400mでシーザリオの仔に先着したエアスピネル、そして究極の上がりを使ったリオンディーズ皐月賞とは全く異なるレースの質ながら上位5頭は皐月賞と同じ。本当にハイレベルな春2冠だったと思います。

今週の安田記念も、モーリスを筆頭に少数精鋭、超ハイレベルなメンバーとなりました。気になる馬のところだけでも読んでみてください。

モーリス
母メジロフランシスはBlandford4・4×5で朝日杯3歳S(当時)を制した4代母メジロボサツに、フィディオン、モガミ、カーネギーと重厚な欧州血脈を配されNorthern Dancer3×4。字面的には重厚な血が重ねられているが、競走馬というのは、スピードがあるからスタミナが活き(=先行できるからスタミナを活かせる)、スタミナがあるからスピードが活きる(スタミナがあるからスピードを持続できる)のであり、名短距離馬には重厚な血が入っていることが多い。最近の例でいえばメジャーエンブレムも、母父はオペラウスだ。
モーリスのマイルでスッと先行できるスピードというのは、スクリーンヒーローの牝祖モデルスポートのTom Fool≒Spring Runの3/4同血クロス(MenowとBull Dogが共通)2×3によるものと考えられる。一言でいうと、モデルスポートのスピードを「日本のMライン(=メジロ)」である母のスタミナで持続させているということだろうか。また、筆者はカーネギーの母がTeddy6・6×5・5・6・7・7、モガミの母もTeddy5・6×5・5とTeddyの血量が豊富で、Bull Dog(父Teddy)を遠目に増幅させていることもポイントだろうと考えている(モーリスの母父カーネギーもそうだが、世界で、特に欧州の活躍馬にはBold Reason≒Never Bendのニアリークロスを持っている馬が多く、Teddyの血量というのは様々なところで論じられている)。
スタートして先行できるスピード、直線での加速力、ニホンピロウイナーノースフライトタイキシャトルダイワメジャーを知らない自分にとっては、「マイラーとは何か」ということを教えてくれた紛れのない名馬。負けるとすれば、緩い流れで中距離馬の瞬発力に屈する時ではないか。今回はそういう流れになりそうではあるが・・・。

リアルスティール
母母Monevassiaが名種牡馬Kingmamboの全妹という超良血馬で、3歳時にSir Gaylord≒Secretariat6×4の緩さが出ていたラングレープロディガルサンといった兄弟と比べると、最もマイラーだったKingmamboらしいパワーが発現されており、「パワーで突進している」という表現が合う走りをする。マイラーのKingmambo(=Monevassia)に、マイラーのStorm Catを配されたのが本馬の母ラヴズオンリーミーだから、もっとも母らしさ(マイラーらしさ)が出た本馬が現状兄弟の中で最も活躍しているというのは納得がいく。とはいえ、生粋のマイラーではないから、モーリスを負かすにはややスローで中距離質なレースになった方が良い。

サトノアラジン
ラキシスの全弟で、キズナリアルスティールエイシンヒカリらと同じディープインパクト×Storm Catというニックス。年齢を重ねるにつれて緩さが抜け、距離適性も短めにシフトしてきた。いくら緩い流れが向いていたとはいえ、前走の勝ちっぷりは本物。しかし、生粋のマイラーではないから、モーリスを負かすとすれば緩い流れで中距離質の瞬発力が要求された時であろう。メンバー的にそうなる可能性は高そうだ。

イスラボニータ
NasrullahとPrincequilloが豊富な母父Cozzene、母イスラコジーン自身はNot Afraid≒Gold Digger4×4でもあり、突き詰めればThe Tetrarchが豊富で、米血とのバランスが良いからか驚くほど柔らかく、美しい全身運動で走る。東京は合っているが、ベストは1800だから、マイルであればスローの方が差し込みやすい。しかしライバルにもそういったタイプは多く、どこまで肉薄できるかだろう。同世代が相手だった皐月賞セントライト記念こそ勝利したものの、基本的に内回りだと大幅なパフォーマンスダウンになるので、中山記念とは度外視、大阪杯は良く走った方だと思う。

フィエロ
母ルビーはロックオブジブラルタルの全妹だから、ミッキーアイルとは3/4同血の間柄となる。母系にNasrullahとCount Fleetを持つから、それなりの柔らかさも感じさせる。コースは問わないタイプで上位との力関係だけで、今回も普通に走ったならば3着争いが一杯一杯というところだろう。

クラレント
エリモピクシーは、Haloと血統構成の似た母母デプスのスピードも良く伝えるが、Hyperion5×4・6・7でもあり、この持続力とそのスピードを活かしている。クラレントの場合はHalo≒Drone≒デプス3×4・4のニアリークロスもあるが、3/4弟レッドアリオンよりも大飛びで、大きな視点でいえば、ジャングルポケットドゥラメンテほど斬れないにしても、NasrullahとHyperion的な末の走りで、極端な前傾戦にならなければジリジリを斬れ続ける。レッドアリオンが「粘り」ならば、クラレントは「重厚に斬れ続ける」といったところで、直線の長いコースはもちろんプラス。ただ、昨年より相手が強化されている点がどうか。

レッドアリオン
エリモピクシーについては、クラレントの項を参照。アリオンの場合は父がアグネスタキオンで、もちろんHalo≒Drone≒デプスというニアリークロスも持つが、タキオンの母母アグネスレディーがHyperion5×5、Lady Juror5×5という「粘り」の塊だから、昨年のマイラーズC、関屋記念の走りをみてもわかるように先行したときにベストパフォーマンスを発揮する。クラレントに比べると1800mがベストというタイプで、マイルだとスローの方が粘り込みやすいというのも昨年の重賞2勝をみれば明らかだ。このようにHyperionとLady Juror的持続力に優れた馬は、ハーツクライ然り、ワンアンドオンリー然り、マジックタイム然り、本格化以前は追い込み脚質になりやすい。アリオンも3歳時は追い込み脚質であり、血統通りの成長を遂げてきたといえる。揉まれ弱い気性があるから、大外と小頭数はプラス。近走は条件が合わなかったし(昨年の安田記念もインの3番手に入ってしまった)、すんなり逃げor先行が出来れば、本格化した今、粘り込みがあっても驚けない。

ダノンシャーク
母カーラパワーがCaerleon×Shirley Heightsで、NasrullahとPrincequilloとLa Troiennneを継続交配されていて、母系にゼダーンも持つことから、大飛びの外回り向きマイラー。生粋のマイラーだからロードカナロア安田記念3着のように、マイル戦らしい締まった流れで持ち味が活きる。東京のマイルは合っているが、中距離馬が多くペースが落ち付きそうなのはマイナスだろう。

ロサギガンティア
母ターフローズは2000mのリディアテシオ賞を制するなど中距離でも活躍たが、母父Big Shuffleの母母がOwen Tudor≒Court Martial2×2というLady Jurorの尻に敷かれた凄い配合で、このスピードが本馬にも伝わっていると考えられる。内回りのスプリングSと阪急杯の3~4角で見せた加速こそがこの馬の本質で、外回りのここはオーロCのようにスローになって加速力を活かしたいところ。しかし、前走も1400mとは思えない緩い流れでサトノアラジンにあっさり差し切られてしまったから、さすがにこの相手だと1枚落ちるという子とか。

ロゴタイプ
Sadler’s Wells≒Nureyev4×4のパワーに下支えされたHalo4×3的機動力で走る馬で、内回りコースで器用さを活かしたいタイプ。58キロを背負い正攻法で勝ち馬に肉薄したダービー卿はさすがというパフォーマンスだった。直線の長いコースで好走するとなるとスロー希望だろうが、それでも富士Sでは3着だった。

ディサイファ
世界的に活躍馬を輩出するSoaring牝系でも、Ameriflora(グラスワンダーの母)らを輩出するGraceful Touchの分岐。母父Dubawi Millenniumはティンバーカントリーらを出すFall Aspen牝系で、ドバイワールドカップやジャックルマロワ賞に勝った名馬だが、一世代しか産駒を残すことが出来ず、その中からDubawiを輩出したのだから種牡馬としてのポテンシャルも相当なものだったのだろう。名牝系に、名血で貴重なDobai Millenniumを配されたのが本馬の母ミズナ。そこにディープインパクトだから、必ずや種牡馬にしなければならない馬といえよう。母のパワーを父ディープインパクトで中和させているが、このメンバー相手となると馬場が渋ってほしいところ。本質的にはパワーで捲れる内回り向きだが、父がディープインパクトで柔らかくしてしまっているから二兎を追っていると言いえ、競走馬としてはチャンピオンになれない配合なのかもしれない。しかしそれは、種牡馬としては母ミズナ似の馬、父ディープ似の馬という相反するタイプの馬を出せるということだから、競走馬ではチャンピオンになれないからこそ、種牡馬として成功する可能性が高い。とにかく無事に種牡馬入りをしてほしい。

コンテントメント
父HussonetはMr.Prospector直仔で、オーストラリアとチリでリーディングサイアーになった名種牡馬。半弟に2001年の香港ヴァーズステイゴールドの2着となったEkraarがいる。 Nasha3×4だが、母父がRaja BabaだからNasrullah≒Perfume4×4・5・5でもあり、芝での活躍馬を多く輩出しているというのも納得がいく。モーリスの2着に好走したチャンピオンズマイルはインの3番手付近で競馬が出来ていたが、東京の長い直線で世界レベルの日本馬相手となると厳しいだろう。

【まとめ】
モーリスは生粋のマイラーだから、ペースが緩んで中距離馬の斬れにやられる可能性はなくはない。
◆ディープ×Storm Catの2頭(サトノアラジンリアルスティール)は、年齢を重ねるにつれマイラーらしさが出てくる配合で、どちらもその傾向がみられる。とはいえ、生粋のマイラーではなく1800m寄りに適性があるからスロー希望で、打倒モーリスならやはりこの2頭。
イスラボニータは1800mのGIがないので、現状ではベストコースのGIだが、先述3頭と真っ向勝負で地力が足りるかどうか。
レッドアリオンは、大きな視点でみれば配合的にはハーツクライダイワスカーレットと同じで、「粘り」が武器の馬だから、揉まれ弱い気性を考慮しても、小頭数+大外枠という好条件が揃った今回は粘り込みが合っても驚けない。


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【参考】

『日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究』(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)


「うまカレ」とは、競馬の魅力を同世代を中心に発信していこう、競馬界を若い力で持ち上げようと、関東の競馬を愛する大学生が集まり6年前に結成された学生団体です。テレビ出演や、フリーペーパー制作など様々な活動をしています。詳しくは以下のブログやSNSをご覧ください。

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執筆者:うまカレ(MYコロシアム>最新予想にリンク)

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