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学生団体うまカレ副代表の金沢ユウダイです。先週のフローラS、1番手に取り上げたビッシュは5着。敗れはしましたが、「ディープインパクト×Acatenango」には今後もぜひ注目してみてください!前回のコラムはこちら→http://umanity.jp/racedata/columndet_view.php?cid=7116
さて、今週は芝3200mの天皇賞(春)!
個人的に、この天皇賞と菊花賞、2つの長距離GIは馬券的には難解なものの、考察する面白さ、騎手の駆け引きなど非常に好きなGIです。
昨年はゴールドシップの横山典弘騎手が、「向こう正面で押し上げ、一度ペースを落とし、直線へ向く」という、まるでインターバルトレーニングのようなスタミナ色の濃いレース質に変えました。最内枠からこの競馬をやってのけたこの騎乗は「伝説」となり何十年後も語り続けられることでしょう。2着フェイムゲームも「絶対に外に出さず馬群を割ってやるんだ」という北村宏騎手の執念の騎乗でしたし、3着カレンミロティックも京都の下り坂で自身の持久力を最大限に活かし切る、蛯名騎手の見事な騎乗。やっぱり「長距離は騎手」巧く乗れた人馬が好走するのです。
どの人馬が巧く乗れるのかを、枠順、馬の特性、騎手のタイプから考察する。これが長距離GIの醍醐味だと思います。しかし、フェイムゲームやカレンミロティックのように、同じ能力値と推測するのであれば、昨年の天皇賞や、近走で「巧く乗れた」馬よりも、「巧く乗れなかった」馬の方の評価を上げる方が投資する側としては賢明でしょう。この辺りも考慮しながら考察していきたいと思います。
●距離は問題ないが、厳しいレースに
有馬記念を制し、58キロを背負った日経賞でも貫禄勝ちを収めた主役ゴールドアクターは、3代母までに欧州的なスタミナがギュッと凝縮されていおり、母父キョウワアリシバはAlydarの代表産駒Alyshebaの仔で、朝日CC3着などがあります。スクリーンヒーロー×Alydar系という字面以上に馬体に柔らかみがあり、スタミナを感じさせるのは、このAlydar系のなかでもスタミナに寄ったAlysheba→キョウワアリシバと、スタミナが凝縮された母系の影響と考えられます。この馬のストロングポイントは、競馬の巧さ。そのストロイングポイントを活かすために、この枠(どこかで内に入れる可能性はあるにしても)はマイナスですし、どちらかというと日経賞のように内回りでジワッと捲る競馬が合っているタイプ。内のポケットに入って全てが完璧にいった有馬記念のように巧くいくかというと、そうはいかない可能性の方が高いと思います。オッズを考慮してもここは狙いにくいです。
●ハーツクライ産駒らしい成長曲線
阪神大賞典を圧勝してきたシュヴァルグランは、ジャスタウェイやマジックタイムのように、2・3歳時に「これは大物か⁉」というパフォーマンスをみせてから少々伸び悩み、古馬になって本格化というハーツクライ産駒らしい成長曲線を描いてきました。ヴィクトリアマイルを連覇した半姉ヴィルシーナの他にも、ダノンシャンティや種牡馬Devil’s Bagといったスピードが魅力の名門Ballade牝系。母のクロスを継続して自身はHalo≒Red God3×4・5・5、軟質なスピードを増幅させているので、体質は柔らかめで母父Machiavellianという字面以上に距離が持ちます。母系にメジロのスタミナ血脈が入るモーリス然り、母父サクラバクシンオーのキタサンブラック然り、母からスタミナ(≒持続力)を取り込んでいるからこそ一流マイラーが生まれ、母からスピード(によって前受けできる)を取り込んでいるからスタミナを活かすことができます。シュヴァルグランも、父のスタミナを母のスピードによって活かしているといえるでしょう。牝系の裏付けはありますし、ここはジャスタウェイのような新星誕生に期待しても良いのではないでしょうか。
●どっちつかずで勝ち切るのは至難の業
菊花賞、有馬記念2着のサウンズオブアースはネオユニヴァースに、Hyperionの持続力、Alibhaiのパワーを伝えるDixieland Bandが母父。しかしその奥の母母父が非常に軟質なSecretariat。もっとDixieland Band的な血や、硬派なスピード血脈を取り入れていれば、有馬記念をひと捲りで勝ってしまうような馬が生まれていると思うのですが、京都大賞典のような瞬発力勝負でも好走可能、神戸新聞杯のような持続戦でも好走可能で、どっちつかずのタイプ。昨年の天皇賞は外枠で厳しい競馬になってしまい9着。今回も同じ外枠ですが、「どこかで内に入れることができた」など巧くいく方の可能性に賭けてみても面白そうです。しかし軸としてはおすすめできません。
●絶好枠でも嫌いたい
キタサンブラックは、500キロを超える大型馬で、母父はサクラバクシンオーですが、体質は非常に柔らかく、「フワッと」先行するスピードがあります。これはサクラユタカオーやジャッジアンジェルーチの影響が大きいと考えられ、サクラユタカオーはPrincely Giftを通じるNasrullah3×4を持ち、その仔サクラバクシンオーも母系に入ればこの軟質な体質を伝えます。キタサンブラックは菊花賞を制していますが決してステイヤーではなく、体質の柔らかさや、大きなフットワークによる燃費の良さで距離を持たせ、器用さを武器にしたレース巧者の中距離馬というべきでしょう。好走する能力を持っていたこと、そしてスローペースになりやすい日本競馬において自分でレースを作れるレースセンスは評価すべきですが、セントライト記念と有馬記念、大阪杯は展開が絶好、そして菊花賞は北村宏司騎手の好騎乗でした。今回は持久力を活かすため、早めの仕掛けをしてくるであろうカレンミロティックやサトノノブレスという存在もいますし、絶好枠でも持久力勝負になる=「今回は巧くいかない」ことが予想されるので嫌いたいです。
●間違いなく手が合う
昨年のステイヤーズSを圧勝したアルバートは、ラブリーデイでGI馬を初めて輩出したペルースポート牝系で、母母アンデスレディーがノーザンテースト×ガーサントですので非常に底力があります。近3走は中山の内回りを走りましたが、ウムブルフに似た走法で(例えが分かりにくい(笑))広いコースでこそ活きる末脚といえます。そして、ルメール騎手はお手馬にメジャーエンブレムやリアファルといった先行馬が多いですが、差し馬を乗りこなすのが非常に巧い騎手で、ウオッカを絶妙に先行させたJC、ベルシャザールの計ったような差し切りをもう1度思い出すべきでしょう。待ちに待った外回り、そして間違いなく手が合うルメール騎手とのコンビ、脚を余した前走は非常に良い負け方で、ここは巻き返しがあるでしょう。
●持久戦になれば力は通用
アドマイヤデウスは3代父ティンバーカントリーの母Fall Aspen、母父トニービン、自身の母母アドマイヤラピスがHyperionの濃い馬で、一定のペースで走ることができる持続力に長けています。しかし、ティンバーカントリーは父Woodmanらの影響で強靭なパワーも伝えます。だからアドマイヤデウスは四肢が太く、内回りコースを捲り切って持ち前の持続力で粘り続けた日経賞がベストの形、昨冬に京都外回りの日経新春杯を上がり最速で制したのは能力のなせる業といえます。持久力ではメンバーの中でもトップクラスですし、大外枠だった昨年と一転して今年は内枠、岩田騎手らしい積極的な騎乗で持続戦となれば能力は間違いなく通用します。
●潜在能力は1番
トーホウジャッカルは5代母Cequillo、母父Unbridled’s Song、父スペシャルウィークの母父マルゼンスキーにより、大局的に見るとPrincequilloとThe Tetrarchを増幅させているため体質は非常に柔らかく、半姉トーホウアマポーラと違い距離が持ちます。この体質の柔らかさから、明らかに広いコース向きで、それを考慮すると昨年の宝塚記念4着は相当なパフォーマンス、地力の成せる業です。潜在能力はメンバー中トップと言ってもよいと思っていますから状態さえ戻っていれば復活の可能性は十分あるでしょう。
●「巧く乗れて」どこまで・・・
タンタアレグリアはMr.Prospectorクロスの影響で柔らかさがあり、京都の長丁場は合っているはずです。この馬を知り尽くし、京都の長丁場は抜群に巧い蛯名騎手が完璧に乗ってどこまでやれるか。フェイムゲームも昨年のような持久戦になってほしいところ、カレンミロティックも昨年のような競馬が出来るかどうかでしょう。特にフェイムとカレンの2頭は、先述したように「昨年巧く乗れた」2頭ですから、今年は「巧く乗れない」方に賭けてみたいです。
【まとめ】
広いコース向きの差し馬で、日経賞で良い負け方、2戦続けての騎乗で間違いなく手が合うルメール騎手と手が合い、ラブリーデイで初GI制覇を成し遂げた牝系の勢いもある、アルバートの一発に期待したい。人気どころでは斤量増は気になるが、ハーツクライ産駒らしい成長曲線を描いてきたシュヴァルグランが1番手。菊花賞馬トーホウジャッカルの復活は十分考えられるし、昨年「巧くいかなかった」アドマイヤデウスも力は間違いなく通用。京都の長丁場が抜群に巧いタンタアレグリアと、昨年「巧くいかなかった」サウンズオブアースまで。キタサンブラックとゴールドアクターは上述した通り嫌ってみたい。
【参考】
日本サラブレッド配合史―日本百名馬と世界の名血の探究(笠雄二郎著)
望田潤さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo
栗山求さんの連載「血統SQUARE」http://www.miesque.com/motomu/works.html
『覚えておきたい 日本の牝系100』(平出貴昭著)
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