最新競馬コラム

濃霧注意報~オークス(2014年)展望~

 797

先週末、私は部屋の中でばたばたと所用をこなしつつ、競馬中継を見ていました。
見ていた、とは言えど、実際の所は諸々の作業を行いつつでしたので、聴いていた、という方が正しいかもしれません。
映像には殆ど目をやることなく、BGM代わりに流していたのです。
その時の時刻は16時半を過ぎた辺り。
3場のレースは全て終わり、中継の話題が翌週メインの展望に移った頃でした。
キャスターさんが専門誌のトラックマンさんに意見を訊いている様子でしたが、その第一声がこれでした。

「さて○○さん、オークスですが……ハープスターの話はもういいです(笑)」

そう来るか、と私も少し笑いました。
しかし、それから1週間近く経ち、こうしてコラムの内容を考えている今、改めて実感しています。
このキャスターさんの言葉、本当に今年のオークスを良く表しているなぁと。
桜花賞の時と同じか、それ以上にハープスター1強ムードが強すぎるのです。お腹一杯になるくらいに。
ただでさえ世代の中で抜けた存在と見られていた上、唯一互角の走りを見せていたレッドリヴェールがダービーに矛先を向け不在。
各トライアルの好走馬も勢力図を塗り替えるようなインパクトは残しておらず……。
血統面においても、父が3冠馬ディープインパクト、母系は2冠牝馬ベガから連なる一族。2400mにも十分対応可能と思えます。
最終追い切りの動きもこの馬としては合格点を付けられるものでしたし、状態面も特に問題はなさそう。
これはもう、本当に彼女で仕方ないのでしょうか。
……いや、競馬に絶対はありません。
今回はそんな"もしかしたら"がありそうな馬達中心に書き綴っていきたいと思います。



かつては"何だかんだで桜花賞上位組が強い"レースだったオークスですが、ここ数年の結果からはそうしたイメージが薄れています。
昨年は桜花賞で惨敗したメイショウマンボが巻き返し、2、3着にはフローラS組のエバーブロッサムデニムアンドルビーが入線。
12年は実績上位のジェンティルドンナヴィルシーナのワンツーでしたが、3着はこれまたフローラS組のアイスフォーリス
11年は忘れな草賞を経由して挑んだエリンコートが勝ち、フローラS組のピュアブリーゼが2着。桜花賞組はホエールキャプチャの3着が最高でした。
10年は桜花賞アパパネとフローラS勝ち馬のサンテミリオンが1着同着。3着はフローラS組のアグネスワルツでした。
……こうして見ると、トライアル組……特にフローラSに出走した馬達が頑張っているのが分かりますよね。
逆に、桜花賞組は"桜花賞の段階で上位人気に推され、尚且つそれに応える走りを見せた馬"以外は信頼感があまりありません。
今回のメンバーで言えばハープスターは全く問題なしですが、5番人気3着とは言え、だいぶオッズが離れていたヌーヴォレコルトや、
3番人気に応えられずに沈んでしまったフォーエバーモア、低人気での善戦に留まったマーブルカテドラルなどは、素直に信用していいのか悩むところ。

ヌーヴォレコルトは父が長距離に強いハーツクライなのですが、母のオメガスピリットは現役時1200mのみを走っていたスプリンター
全体の血統構成からは多少距離が伸びても問題なさそうに映りますが、この母の短距離適性がどう作用してくるかでしょう。
1週前追い切りで凄い時計を叩きだしていたように、状態は良さそうなので、切るに切れない存在と言えそう。

フォーエバーモアは今年に入ってから気難しさが前面に出てきてしまっている印象。
ネオユニヴァース産駒の牝馬にはよくある傾向と言えますが、それだけに2400mという距離に大きな不安があります。
落ち着いてマイペースで走ることが出来れば……とも思いますが、巻き返しは簡単ではなさそう。

マーブルカテドラルは今年に入ってから調教の動きがイマイチ。
その分結果が伴っていない印象ですが、この中間や直前の動きを見るに、少しずつ復調している感じがあります。
とは言え、父がダイワメジャーで母がスプリント寄りのマイラーだったヘルスウォール
この血統構成からは2400mに距離が伸びて劇的に変わるという印象はあまりありません。
状態の良さと実績ある東京コースでどれだけ差を詰められるか……といったところ。

それならば、前述の通り近年活躍の目立つフローラS組を狙う方が妥当なのかもしれません。
特に、3ヶ月ぶりの実戦で迫力ある末脚を見せた勝ち馬・サングレアルには注目が集まります。
この馬の魅力はやはり血統。09年の当レース勝ち馬であるブエナビスタの半妹であるというだけで無視は出来ません。
デビュー2戦目までは血統的な期待の割に地味なレースぶりでしたが、ひと息入れていきなり重賞を勝つというのは流石。
レースレベルも水準級で、ハープスターを除く今年の出走馬相手ならば、G1でも十分にやり合えるのではないでしょうか。
勢いに乗ると相手強化も苦にしないゼンノロブロイ産駒なだけに、大崩れはしないように思います。

同レースで2着だったブランネージュは、先行勢で唯一馬券圏内に残るしぶといレースぶり。
展開面を考えると勝ち馬以上に評価していい一戦だったと思いますが、この馬について引っ掛かるのは、
昨年の時点で陣営が"マイルでも少し長い"という感触を持っていたこと。
ここ2戦は1800m、2000mで連続して好走して充実振りを示してきましたが、流石に2400mまで距離が伸びるとどうか……。
シンボリクリスエス×母父フレンチデピュティという血統面からも、マイル近辺がベストという印象があります。

逆に、距離が伸びても平気な顔で居そうなのが同レース3着だったマイネオーラム
本馬について評価したいのは、外の8番枠から最後までしっかり脚を伸ばしていたという点。
近年の東京コースは内有利の傾向が強く、中でもフローラSの行われる2000mは外枠の馬が特に苦戦する舞台。
その枠から、スタートで大きく外にヨレた上、道中も比較的外目を回りながら脚を伸ばしてきたというのは非常に価値があります。
前述のサングレアルブランネージュは道中でぴったりと内を走っていましたから、全体的なロスを考えれば本馬も互角以上の評価をして良さそう。
ロージズインメイ産駒の半兄・コスモオオゾラ皐月賞&ダービーで差のない競馬を見せていますし、
父がステイゴールドに変わった本馬ならば、兄に劣らない意外性や勝負強さを備えていそう。配当的にも妙味ある存在だと思います。

その他で触れておきたいのは、能力そのものなら上位と言えるマイネグレヴィル
昨夏の函館や昨年末~今春の中山の走りに比べると、東京では明らかにパフォーマンスを落としていますが、
前に行ける脚質とスタミナや底力に溢れた血統構成は魅力的です。
先週の東京芝レースの結果を見ていると、チチカステナンゴやオペラハウスといった"中山っぽい血"を持った馬が頑張っていました。
依然としてそこそこ速いタイムの出る馬場なのですが、こうした血統馬が好走出来るという事は、
本馬が持ち味を出せなかった開幕週よりも多少力の要る馬場状態になっている可能性があります。
距離が更に伸びることで各陣営が慎重になり、前走以上に楽な形で逃げることが出来たりすれば一発があるかもしれません。

また、叩かれて変わり身がありそうなマジックタイムにも警戒が必要そう。
ハーツクライ×母父ブライアンズタイム×母母父サドラーズウェルズという少々重厚過ぎる血統馬で、
脚質は違えど適性的にはマイネグレヴィルに近いものを感じます。
彼女と同じく、重厚な血が生きる先週のような馬場状態ならば巻き返しがありそうですし、
ハープスターが早めに動いて前を一掃する形になった場合にも、スタミナを生かしての雪崩れ込みが期待出来そうです。
同じことは、オペラハウス産駒であるニシノアカツキにも言えますね。

フローラS組以外となると、スイートピーS組と忘れな草賞組ということになりますが、今年の両レースはレベル的に特筆出来る部分が少なく……。
それならば、皐月賞を経由するという異例のローテで挑んでくるバウンスシャッセの方が面白いでしょう。
2歳時の3戦はいずれも平凡な内容でしたが、今年に入ってからはレースぶりが極端に良化。
ゼンノロブロイ産駒の牝馬らしく、相手が強くなっても極端に崩れることなく走っています。
勝ち星を挙げているのがやたらと上がり時計の掛かる函館と中山で、半兄のホーカーテンペストも中山巧者。
それだけに東京での切れ負けが心配ですが、ロスなく運べそうな内枠と前に行ける脚質は魅力的。
前走の皐月賞は11着と着順は振るいませんでしたが、勝ち馬とは0.7秒差。牝馬同士ならかなり威張れるレベルにあると思います。
もしマイネグレヴィル辺りが後続を離すような逃げを打った場合、絶好位で運べるのは本馬のような先行型。
追い込み一手のハープスターにとって、最も脅威となるタイプと言えるかもしれません。



……という訳で、今年のオークスハープスターvsフローラS組vsバウンスシャッセと見立ててみました。
選択する券種にもよりますが、ハープスターを絡めるとどうしても配当が低くなってしまうのが困りもの。
かと言って、絞り過ぎて消した馬に突っ込まれたら泣くに泣けないですよね。
桜花賞もそうでしたが、買い目を考える難しさも秘めたレースだと思います。

個人的にも、こうした圧倒的人気馬が居るレースはついついひねくれたくなるので、どこまで冷静な予想が出来るかが課題。
これが十数年前……競馬を見始めた頃の私だったら、素直にハープスター◎だったと思うのですよね。
人気馬に裏切られたという数多くの傷が、一人の少年をただのひねくれオヤジに変えてしまったのですよ。ぐすん。

 ナイス!(13

このコラムへのコメント

コメントはありません。

関連競馬コラム

新着競馬コラム

人気競馬コラム

会員登録(無料)でできること

レース情報

今週の注目レース

3月31日()
大阪杯 G1
3月30日()
ダービーCT G3

⇒今週の番組表へ

先週のレース結果

3月24日()
高松宮記念 G1
マーチS G3
3月23日()
日経賞 G2
毎日杯 G3

⇒先週の番組表へ

総賞金ランキング
JRA競走馬総賞金ランキング
4歳以上
1 ドウデュース 牡5
102,726万円
2 スターズオンアース 牝5
84,098万円
3 リバティアイランド 牝4
74,444万円
4 ディープボンド 牡7
67,569万円
5 ジャスティンパレス 牡5
65,388万円
6 シャフリヤール 牡6
59,685万円
7 タスティエーラ 牡4
57,005万円
8 ジャックドール 牡6
49,004万円
9 ソールオリエンス 牡4
48,668万円
10 ナムラクレア 牝5
47,685万円
» もっと見る

3歳
1 ジャンタルマンタル 牡3
13,291万円
2 アスコリピチェーノ 牝3
10,494万円
3 コラソンビート 牝3
9,942万円
4 シンエンペラー 牡3
9,128万円
5 レガレイラ 牝3
8,278万円
6 エトヴプレ 牝3
8,244万円
7 シックスペンス 牡3
7,287万円
8 スウィープフィート 牝3
7,286万円
9 コスモキュランダ 牡3
6,641万円
10 ノーブルロジャー 牡3
6,495万円
» もっと見る