藤沢雄二さんの競馬日記

1998年のエリザベス女王杯に学ぶ今年のヴィクトリアマイル

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今度の日曜日には東京競馬場でヴィクトリアマイルが行われますが、ローテーションの谷間のようなGⅠに“絶対女王”アーモンドアイ参戦とあって、世間の関心は高くなってきたと思います。

ほぼアーモンドアイ一本被りが目に見えている状況ですが、これだけは宣言しておきます。
アーモンドアイに◎は打ちません!

いや、さすがに無印はやり過ぎだと思うけどかなりの確率で何かにやられるとは思うのよね。
でも単に「なんとなく」ではなく、過去の経験に基づいてのもの。

話は1998年の秋にさかのぼる。
私、エアグルーヴの大ファンでして、まあ22年前のことですから20代半ばの話です。
どうなんでしょうね、今は丸くなっているのかどうかは知りませんけど、当時は舌鋒鋭くトンガってナンボぐらいに思って生きていた頃なので、言葉の端々にトゲを立てておりまして。
今思えば、あの時代にツイッターがなくてよかったと思いますけどw

それはさておき、今でいう5歳の秋を迎えたエアグルーヴは連覇の懸かった天皇賞ではなくエリザベス女王杯に駒を進めてきました。そこから中1週でジャパンCに向かうという算段でした。
前年のような天皇賞→ジャパンCという王道路線ではなく、敢えてエリザベス女王杯から中1週を選択したのは武豊の兼ね合い以外の何物でもありません。天皇賞にはサイレンススズカがいたから。

要は武豊がバッティングする為の使い分けで、今だったらちょっとした炎上案件だったかもしれませんw
まあ宝塚記念で武豊を確保したのにサイレンススズカに負けてしまったので、エアグルーヴ陣営としては仕方ないところはあったでしょう。

そこで行き掛けの駄賃とばかりにエリザベス女王杯を使うことになったわけです。
大目標はジャパンCなので陣営も八分のデキということは公言してありました。
しかし、連覇を果たした札幌記念では58kg(=牡馬換算で60kg)で牡馬を負かしているのですから、能力的に衰えているなんて微塵も思いませんでした。
当時のグレード別定だと牝馬限定のGⅠを勝っていてもまともに2kg増が適用されていたので57kgで使ってくる牝馬はいましたけど、札幌記念は賞金別定だったので3kg増になって58kgでした。
今は当該競走から1年以内の牝馬限定のGⅠ勝ちなら1kg増で済みますし、賞金別定のGⅡが少なくなったこと、なにより前哨戦のGⅡを使わない馬が増えたことによって58kgで牝馬が牡馬に勝つのは(それも重賞で)もはや空前絶後の記録であると思います。

ところで1998年当時の自分はPATに入っていませんでした。というか電話投票の時代だから、馬券を買うのはだいたい後楽園のWINSか競馬場でした。
で、土日の度に実家の父から電話が入って父の馬券も買っていたのです。こっちとしては体のいい親孝行という口実ですw

ところがそのエリザベス女王杯の週は、当時勤務していた会社の研修で土日が動けなくて、自分の馬券を誰に託そうかという状況だったので
「ゴメン、来週は行けないよ」
という電話をあらかじめしておりました。
その話の中で、エアグルーヴ陣営の「八分のデキ」というコメントに対して、
大川慶次郎さんが「GIに八分のデキで出るなんて失礼」と言っていたと父が話をしてきた上で、
「さすが競馬の神様だ。いいことを言った」と、このウマニティでコラムを書いているTARO氏が聞いたら喜びそうなことを言ってきたワケです。

こっちはエアグルーヴが負けるなんて夢にも思っていない。対抗格のメジロドーベルとは勝負づけは済んでいると思っていたし、メジロドーベルでダメなら他の牝馬なんてもっとチャンスはないと踏んでいる。なにしろ関西のリーディングを争う伊藤雄二調教師が言うのだから頭から信じている。現場の人間が一番わかっているのだから評論家風情にあれこれ言われたくない、とカチンときたのですよ。
その結果、電話口で壮絶な親子ゲンカw

で、ボクが買いに行けないとわかった父は、サイレンススズカの散った天皇賞で万馬券を当てていたこともあって、実家の鹿児島からわざわざ小倉競馬場までエリザベス女王杯の為に遠征しに行きました。
九州新幹線なんてまだない時代です。夜中の在来線の特急に乗ってね。

果たせるかな、武豊の騎乗停止で横山典弘に乗り替わったエアグルーヴは3着確保が精一杯。
メジロドーベルが勝って、2着がランフォザドリームでしたが、父はこの馬連を本線で持っていて高笑い。
あれから22年。その父が亡くなって去年の暮れで丸10年が過ぎましたけど、あの時の父の笑い声は今でも悔しいもの。


というわけで、話は来週のヴィクトリアマイルに戻る。
簡単に言えば、アーモンドアイが牝馬限定を使う今さら感みたいなモノよね。

まあ今回のアーモンドアイは決して“八分のデキ”という心構えではないかもしれないけど、GIで牡馬相手に普通に勝ち負けになるレベルの馬が牝馬限定を使うという点においては当時のエアグルーヴも今回のアーモンドアイも同等だと思っている。
言っておくけど、1997年の秋の天皇賞でエアグルーヴが勝っていなければ、ウオッカもダイワスカーレットもブエナビスタもジェンティルドンナも、そしてアーモンドアイも有り得ないからね。

牝馬が牡馬相手にGIで通用するのはマイルまで、というのが1997年までの競馬の(というかトレセンの)常識。でも強い牝馬なら2000~2500mでも通用する、と新しい扉を開いたのは誰あろうエアグルーヴなので、その点だけは絶対に譲る気はない。

だから、連覇の懸かった天皇賞ではなく牝馬限定のエリザベス女王杯をエアグルーヴが選択した時点で「何かある」と思うべきだったのよね。もっとも当時の自分には何を言ってもムダだけどw
ただ経験は得たわけで。

ヴィクトリアマイルといえば、4歳時のウオッカはエイジアンウインズに負けているんですよ。前年のダービー馬にもかかわらず。
で、5歳時のブエナビスタも負けているんですよ。前年の秋の天皇賞を勝っているにもかかわらず。
まあ共に2着でしたけど、負けは負けなんですよ。

そう考えると、今回のアーモンドアイだって何かにやられるというのは結構、現実味があると思うのよ。

実際、去年の秋の天皇賞を勝った後のアーモンドアイは流れが悪いですよね。
香港遠征を予定も熱発で回避

有馬記念は9着で初めて掲示板を外す

ドバイ遠征もコロナでレース取り止め

そりゃあ、一つ勝って流れを変えたいと考えるのは自然なことだと思うし、手近なところに美味しそうな牝馬限定があれば手を伸ばすでしょうね。
でも、そうじゃないと思うのよね。

やっぱり牝馬限定には意味があるわけで。
そもそもの話で言えば、基本的に競走能力でいえば牡馬>牝馬という図式になるので、牝馬を保護する意味で牝馬限定というレースが組まれるのですよ。
だから普通に牡馬と勝ち負けになるレベルの馬には牝馬限定は不要なんですよ。賞金も若干安いし。

もちろん使っちゃいけないことはないですよ。
でも似たような図式というのは、重賞で惜敗続きの馬がオープン特別に使ってくるとか、GⅡで惜敗続きの馬がGⅢに使ってくるとかでも言えるわけで、いかにも勝ちグセをつけたいというような時にちゃんと勝ったことの方が少ないように思うのですよ。


なのでアーモンドアイの1着はないと思っている。
ヴィクトリアマイルの過去の例からは2着はなんとかなりそうだから◎を打つ馬との1、2着固定の3連単は買っておきたいですが、連は外すようなら馬連でも十分いい配当が望めそうですから、その辺はパラパラと。
土曜日もしくは日曜日の早いレースでいい配当が当たれば銃弾爆撃も辞さない、そんなイメージで考えております。

とりあえず◎には連勝中のあの馬を考えております。

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