小高さんの競馬日記

兵庫CSに

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コーポラティヴ・オフィスといえば聞こえは悪くないが、
築年数の古い雑居ビルをリノベーションした集合オフィスに過ぎない。
建物の裏側に備えつけられた、無数の室外機のプロペラが、日本橋川に向けて
弱々しく回転し、水面には輪郭が曖昧になったビルが映りこんでいる。
「そういえば、ここの事務所ってなんて読むわけ?」
はなぶさコンサルティングだと、小高は少し考えて、なれいに告げた。
<英コンサルティング>
登記上はもう20年来の休眠会社だったということになる。
通名はエイコンサルティング、<エイ>はあの人の名前だった。
平和島の倉庫群。1990年代後半。



窓を閉めると室外機の音が消え、モニタにはパドック映像。園田競馬。
どの競争馬も機嫌が良さそうには見えないけれど、
それ以上になれいは不機嫌そうだ。
昨日の、かきつばた記念の外し方がそうさせているのだろう。
さながら、今日のテーマはリプレーザの距離延長ということころか。
ソファからおもむろに立ち上がったなれいは、
ストライプのワイドパンツとグレーのトップス。
コロナの瓶を片手に、ライムを押し込む姿からは園田の白い砂が
どこか異国のものに感じられる。
実際、昨年の4月7日から西オーストラリア州アルバニーの海砂が用いられ
深さは11cmと中央よりも2cm程深いとされている。
JRAの逃げ馬は重いと感じるであろうし、
園田の騎乗に慣れない騎手は戸惑うかもしれない。
ランスオブアースは小倉での2勝はダートの重で軽く、
リプレーザもダートの不良では前目に付けられているが、良ではというところ。
3連単
5→10→7、9
調教の動きが今ひとつとはいえ、ブリンカーを着けて好走理由が明確な
ゴッドセレクションを外そうとは思えない。
なれいの結論により
機嫌が直ることを祈るだけだと小高は思った



日本橋川はWINS後楽園の目の前で神田川から分岐し、真南に下っていく。
特徴的なのは、5号池袋線から始まり、
ほぼ全流路が首都高の高架下を流れているということだ。
都心に流れる空を望めない河川であり、
ようやく上空が覗く地点から僅かな距離で、
分岐元の神田川と合流した隅田川に飲み込まれる。
その場所から逃れるように、少し以前、日本銀行を越えたあたりの江戸川橋JCTを南に進めば、
首都高速1号羽田線への接続があり、大井競馬場から平和島出口に繋がっていく。
これから書き連ねることは、たったこれだけの距離の中の出来事に過ぎない。
小高は結局、自身の思考回路のようでもあり、血流のようでもある、
張り巡らされたこの川と高架に戻ってきた。
終わりを前提に、僅かな上空を望むか、あるいはまた、大井と平和島方面に流れていくか。
俎橋から、身を乗り出してみる。水面にはくっきりと自身の輪郭が浮かんでいた。

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