グリーンセンスセラさんの競馬日記

2 『菊花賞の行方』Vol.5

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【夏季特別企画】史上最強世代・最後の一冠『菊花賞の行方を占う』Vol.5「名門トウショウ牧場『最後の大物』トウショウビクターが『狂気の血』を継承」─Gambling Journal ギャンブルジャーナル/2016.07.17
http://biz-journal.jp/gj/2016/07/post_861.html

 世代No.1を決める日本ダービー(G1)をマカヒキが制してから、1カ月あまりの月日が流れた先週9日。同世代の各馬が最後の一冠・菊花賞に向けて虎視眈々と英気を養っている頃、雨の中京競馬場で一頭の若駒がようやくのデビューを果たした。
 今年の宝塚記念(G1)は牝馬のマリアライトが勝利したが、それ以前に39年ぶりの偉業として牝馬による宝塚記念制覇を成し遂げたのが名牝スイープトウショウだ。そして、先週デビューを遂げたのが、その名牝の仔トウショウビクターだった。
 ダービーから1カ月以上遅れた7月9日のデビュー。本来であれば、トウショウビクターを「菊花賞の行方を占う企画」で紹介するのは筋違いなのかもしれない。
 しかし、2014年の菊花賞馬トーホウジャッカルの初勝利が7月12日だったことを踏まえれば、トウショウビクターは紙一重ながら「菊花賞へ続く道」に引っ掛かっていると述べても良いのではないだろうか。
 冒頭で触れた通り、トウショウビクターのデビュー戦は雨中の不良馬場で行われた。
 エリザベス女王杯(G1)を制したラキシスの全弟サトノケンシロウを筆頭に、いつ未勝利を勝ち上がってもおかしくない強力なメンバーが集った一戦。トウショウビクターはスイープトウショウの仔でありながら、単勝43.8倍の8番人気に甘んじた。
 追い切りの動きが冴えず、周囲からは「とりあえず叩いてからの馬」と見られていたのだ。
 実はトウショウビクターは昨年の夏に、腸ねん転の手術を行っている。馬は腸が非常に長いため腸ねん転になってしまう確率が高く、有名なところでは三冠馬ナリタブライアンが腸ねん転のために亡くなっているなど、決して軽くはない手術だ。
 そのため、今年の年明けにはゲート試験も合格しデビューが迫っていたが、とにかく体が弱く、体力を付けようにも負荷を掛けられない状態だった。
 そこで成長を促すために、再度放牧へ。当初はそれでも春にはデビューできるといわれていたが、結局7月まで掛かってしまい、今回もなんとかレースに漕ぎつけたといった感じだった。
 だからこその低評価。父ステイゴールドに母スイープトウショウ。これだけの血統だけに周囲の関係者も「じっくりやるしかない」と腹を括っていたのだが、その覚悟に反してトウショウビクターがデビュー戦で見せたのは、彼が持つ"血"が秘めたる力の片鱗だった。
 出遅れて中団からの競馬になったが、最後の直線で誰もが不良馬場に脚を取られる中、力強く馬場の真ん中を突き抜けたトウショウビクター。2着サトノケンシロウにつけた着差こそ1馬身1/2だったが、見た目以上の完勝だった。
 決して状態が優れていたわけではなかったことは、単勝43.8倍の評価が証明している。それでも能力だけで相手をねじ伏せてしまっただけに、ついにスイープトウショウから"本物"が出たのかもしれない。いずれにせよトウショウビクターの未来は、この勝利によって大きく開けた。
 だが、トウショウビクターが朗報を届けるべき"故郷"はもうない。

▶▶▶ 帰るべき場所はなくとも

 昨年10月、母スイープトウショウや天馬トウショウボーイを輩出した名門トウショウ牧場が成績不振のため閉鎖。1965年の開業以来、約半世紀の歴史に幕を下ろした。スイープトウショウを始めとした一部の繁殖牝馬はノーザンファームに引き取られ、「トウショウ」の冠名を持って走る馬も、おそらくはビクターの世代が最後となる。
 したがって、トウショウビクターの登場は、あらゆる意味で遅すぎたのかもしれない。だが、彼が活躍することの意義は、競馬の一時代を彩った「トウショウ」の存在感を示す意味でも決して小さくはないはず。
 そして何よりも、トウショウビクターには「最後の大物」となるに相応しい血が流れている。
 父ステイゴールドは、オルフェーヴルやゴールドシップといった類まれなる能力と気難しさを兼ねた名馬を輩出。そして母スイープトウショウも、調教で立ち止まるのが当たり前といった気難しい馬だった。
 しかし、その「狂気」といえる気性の激しさこそが彼らが名馬たる"力の源"であり、一度爆発すれば、常識外れの凄まじいポテンシャルを発揮する姿は競馬史の様々なシーンに残っている。トウショウビクターは、そんな"狂気の血"を引いているのだ。
 秘めたる能力の片鱗は見せた。あとは最後の一冠・菊花賞に向けての時間との戦いもある。トウショウビクターのデビューは本当に遅すぎたのか。その答えが秋には見えているかもしれない。

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