2017年12月10日()シャティン競馬場 芝2400m

レース結果 ~香港ヴァーズ 2017~

  • 出走予定馬
  • 出馬表
  • レース結果



馬名 性齢 負担重量
(kg)
騎手 調教師 オッズ 人気
1 1 8    ハイランドリール 牡5 57.0 R.ムーア A.オブライエン 2.5 1
2 2 1    タリスマニック 牡4 57.0 M.ギュイヨン A.ファーブル 4.9 3
3 8 7    トーセンバジル 牡5 57.0 J.モレイラ 藤原英昭 6.4 4
4 4 4    ケミカルチャージ 牡5 57.0 O.マーフィー R.ベケット 173.2 10
5 9 12    ゴールドマウント セ4 57.0 Z.パートン A.クルーズ 23.4 6
6 7 2    マックスダイナマイト セ7 57.0 G.スコフィールド W.マリンズ 74.4 8
7 11 11    スマートコール 牝6 55.5 J.クローリー M.スタウト 347.4 12
8 6 5    イーグルウェイ セ5 57.0 T.ベリー J.ムーア 30.9 7
9 12 3    キセキ 牡3 55.0 M.デムーロ 角居勝彦 2.9 2
10 5 10    デインヒルコディアック 牡4 57.0 S.レヴィー R.ハノン 182.5 11
11 3 9    ティベリアン 牡5 57.0 O.ペリエ A.クエティル 19.1 5
12 10 6    ヘレンカリズマ 牡4 57.0 S.クリッパートン J.ムーア 141.5 9

■払戻金

単勝1 250円
複勝1 110円
2 140円
8 150円
馬連1-2 420円
ワイド1-2 210円
1-8 320円
2-8 440円
馬単1-2 810円
3連複1-2-8 970円
3連単1-2-8 3,710円

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※レース結果・払戻金・オッズなどのデータは、必ず主催者(JRA)発行のものと照合してください。

最新出走予定馬情報 ~香港ヴァーズ 2017~

 香港国際競走を主催する香港ジョッキークラブは、レース後のできごとについて情報を更新。これによると、香港ヴァーズに出走したキセキ(栗・角居、牡3)は「右前脚の跛行」、香港マイルサトノアラジン(栗・池江、牡6)には「気管からの出血」があったと発表した。ともに程度は軽いものとみられる。



キセキの競走成績はこちら★サトノアラジンの競走成績はこちら

【香港国際諸競走】日本馬全滅…アラジン、有終飾れず11着12月11日(月) 05:02

 【香港10日=山口大輝】香港国際競走がシャティン競馬場で行われ、4レースに日本馬8頭が出走したが、勝てずに終わった。カップに出走したネオリアリズムは3着。春のクイーンエリザベス2世Cに続く、香港GI連勝は叶わなかった。優勝は地元のタイムワープ。マイルがラストランだったサトノアラジンは11着に敗れた。

★香港マイル

 異国でのラストランを飾れなかった。今年の安田記念勝ち馬サトノアラジンは、最後方から早めに押し上げたが、直線は伸び切れず11着。ボウマン騎手は「ポジションをもう少し前にしたかった。最後の脚にかけたけどちょっと伸びなかった」と振り返った。池江調教師は「気持ちの問題かな。(今後は)種牡馬として、香港にこられるような子供を出してほしい」とねぎらった。

★香港カップ

 春のクイーンエリザベス2世Cに続く香港GI連覇を狙ったネオリアリズムは3着。多くの日本人ファンも詰めかけた大舞台だったが、地元馬の前に屈した。

 春に続いて騎乗したモレイラ騎手は「最初は行きたがりましたが、最後はよく3着にきてくれました」とねぎらった。

 最内枠から好発を決めたが、頭を上げ、引っ掛かった。春は、そこから一気にハナを奪いペースを握ったが、今回は勝ったタイムワープの後ろに。直線も進路の狭まったところをこじ開け、勝ち馬に迫ったが、最後は力尽きた。

 堀調教師は「4月の時よりいいスタートを切ることができました。レースのペースが向かず、力を100%出すことができなくて残念でした」と肩を落とした。

 ◆ボウマン騎手(ステファノス4着) 「最後の脚は素晴らしかった。よく頑張ってくれた」

 ◆藤原英師(同) 「予想していた展開と少し違いました。枠ももう少し内で、展開も流れてくれればよかった」

 ◆武豊騎手(スマートレイアー5着) 「完敗です。状態は良かったので、前で思い切って競馬をしようと思いました。理想のレース運びでしたが、相手が強かった」

 ◆大久保師(同) 「道中、直線ともいい内容でしたが、結果を出したかった」

★香港ヴァーズ

 ◆モレイラ騎手(トーセンバジル3着) 「4コーナーでもう少しチャレンジしたかったが1、2着馬が強かった。素晴らしい走りだった」

 ◆藤原英師(同) 「完璧に乗ってくれたし、前の馬を思えば自信がもてます。精神面もクリアできた」

 ◆M・デムーロ騎手(キセキ9着) 「もう少し前へ行きたかった。直線ではファイトがなく止まってしまった」

 ◆角居師(同) 「はっきりした敗因はわからないが、目に見えない疲れがあったのかも」

★香港スプリント

 ◆岩田騎手(レッツゴードンキ6着) 「落ち着いていたが、ゲートが悪く後方から。もう少し上の着順を狙っていたが…」

 ◆梅田師(同) 「外から追い込んだが、出遅れたので流れに乗れませんでした」

 ◆パートン騎手(ワンスインナムーン12着) 「他の馬に進路をじゃまされてしまった」

 ◆斎藤誠師(同) 「スタートは決まっていい位置だったが、競りかけられて苦しくなった。残念です」

★売り上げ大幅ダウン

 香港国際招待競走のJRAの総売り上げは28億3570万700円で、前年比74・2%と大幅にダウンした。内訳はヴァーズが4億6765万2900円、スプリントが4億2264万2300円、マイルが7億5920万5300円、カップが11億8620万200円。日本からの出走馬が昨年より5頭少ない8頭だったことなどが、売り上げ減の原因とみられる。

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【香港ヴァーズ】ハイランドリールがV~キセキは9着12月10日() 15:13

 12月10日に香港シャティン競馬場で行われた第24回香港ヴァーズ(GI、3歳以上、芝・右2400メートル、定量、1着賞金1026万香港ドル=約1億5390万円、12頭立て)は、R.ムーア騎手騎乗の1番人気ハイランドリール(牡5歳、アイルランド・A.オブライエン厩舎)が2番手追走から直線入り口で先頭に立ち、3番手からノシ上げてきたタリスマニック(3番人気、フランス)を突き放して優勝。タイムは2分26秒23(良)。2着のタリスマニック(フランス)との着差は1馬身3/4、勝ち馬から2馬身半差遅れた3着には中団から伸びたJ.モレイラ騎乗のトーセンバジル(4番人気、栗東・藤原英昭厩舎)。今年の菊花賞キセキ(2番人気、栗東・角居勝彦厩舎)は後方からレースを進めたが、伸びを欠き9着に敗れた。

 ハイランドリールは通算成績27戦10勝。香港ヴァーズは3年連続の出走で、一昨年続く2勝目(昨年はサトノクラウンの2着)。GIは通算7勝で、ここが引退レースの予定。

 ※注…文中の人気は日本でのもの。

 〈日本馬の関係者のコメント〉

3着 トーセンバジル

 ◆藤原英昭調教師「モレイラ騎手は完璧に乗ってくれました。前の2頭は世界で1、2位と言われる馬なので、この結果には自信が持てます。初めての輸送で精神面を心配していましたが、クリアできてよかったですし、馬に感謝したいと思います。また、このレースに使うことを決断したオーナーにも感謝したいと思います」

 ◆J.モレイラ騎手「よく走ってくれました。パーフェクトなレースです。4コーナーでもう少しチャレンジしたかったですが、1、2着馬が強かったです。それでも、今日はすばらしい走りを見せてくれました」

9着 キセキ

 ◆角居勝彦調教師「レース後、まだデムーロ騎手と話ができていないので、はっきりした敗因は分かりませんが、見えない疲れがあったのかもしれません」

 ◆M.デムーロ騎手「スタートが速くなく、ペースが遅かったので、もう少し前に行きたかったです。3、4コーナーでいい位置につけたと思いましたが、直線ではファイトがなくて、自分で止まってしまいました」

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【香港国際諸競走】天気&馬場情報12月10日() 11:43

 12月10日(日)のシャティン競馬場周辺は、終日晴れの予報。馬場発表は8段階で上から3番目に良いGOOD(JRAの発表は良)。先週まで最内から12.2メートル地点に設けられていた柵が外され、約1カ月半ぶりに一番内側に柵を設置するコースを使用する。晴天続きでもあり、絶好のコンディションでレースを迎えられそうだ。

 カリス・ティータン騎手(香港所属)「今年、一番クッションが利いている。1200メートルは先行争いが激しくなるので、スタートのいい馬は内枠がいいけど、そうでなければ外の方がいい。2000メートルは1コーナーまでが短いので枠が大事になる」

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【香港ヴァーズ】日本馬直前情報12月10日() 05:05

 白癬(はくせん)とみられる皮膚病のため、馬房は隔離されている(12)キセキだが、調教は他馬とともにオールウエザーコースで行われた。ラストは軽く伸ばして、3ハロン45秒2-14秒0。角居調教師は「状態は良さそうです」と不安を打ち消した。

 (8)トーセンバジルも意欲的にオールウエザーコースで末脚を伸ばして、4ハロン58秒4-12秒8をマーク。「闘志を秘めた走りで、すごく良く見えました。明日が楽しみです」と藤原英調教師は強豪相手の一発に期待を寄せた。

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【香港国際競走】タイムワープ逃げ宣言!12月09日() 05:05

 【香港8日=山口大輝】香港国際競走(10日、シャティン)を2日後に控え、日本馬はいずれも順調に調整された。今年のキーマンは、4鞍いずれも勝機のある馬に騎乗するザカリー・パートン騎手(34)=豪州出身、香港拠点=だ。日本でもGI勝ちのある名手を直撃。GI4レースの見立てを取材することに成功した。

 パートン騎手といえば、2015年に香港馬エアロヴェロシティで高松宮記念を制した名手だ。昨シーズン(16/17年)は107勝で香港リーディング2位。6日の香港国際騎手招待競走を優勝した勢いもある。まずは、メインの香港カップで騎乗するタイムワープの手応えを聞いた。

 「前走がいいレース。素直な馬だから安定している。逃げることになると思う。イーブン(平均)ペースにしたい」

 早速、展開を左右する重要な情報をゲット。相手関係についても「レーティング上位4頭が強敵になりそう」と、ネオリアリズム、ワーザー、ポエッツワード、ドーヴィルをライバル視する。

 続いて、地元馬の牙城が強固なスプリント。コンビを組む日本馬ワンスインナムーンの追い切りでは「スピードがあると感じた。枠(2番)もよかった。香港の馬も速いけど、できれば逃げたいね」とイメージを描く。ライバルにはミスタースタニング、ディービーピン、そして前2走で騎乗したラッキーバブルズの3頭を挙げた。

 マイルのビューティーオンリーは「状態が上がっているし、フォームが良くなっているよ。今シーズンでは一番のデキだね」と状態に太鼓判。ヴァーズのゴールドマウントも「もっと走れる能力はあるはず」と穴ムードが漂う。

 親日家の名手は、どのレースも手応え十分の口ぶり。各国の名手を抑えて活躍した水曜のハッピーバレーだけでなく、日曜のシャティンでも主役を務めそうだ。

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【香港国際競走】バジル素晴らしい!モレイラが絶賛12月09日() 05:03

 シャティン競馬場ではこの日、香港国際競走の共同会見が行われ、モレイラ騎手が出席。初騎乗となるヴァーズのトーセンバジルについて「素晴らしい馬。チャンスはあると思う」と力強く語った。また、ヴァーズにトーセンバジル、カップにステファノスを送り出す藤原英調教師も出席。「バジルの方が魅力があるけど、堅実なのはステファノス。同じぐらい期待している」とGI連勝に意欲を見せた。

★トーセンバジルの競走成績はこちら★ステファノスの競走成績はこちら

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【香港国際競走】スマートレイアー、7歳の貫禄見せる12月09日() 05:03

 昨年、ヴァーズで5着だったスマートレイアーが今年はカップに挑む。この日はパドックのスクーリングやゲート練習に時間を費やした。「走りたくてうずうずしているような感じ。ゲートもスクーリングもおとなしかったので、問題ありません」と加藤助手。経験豊富な7歳牝馬は、2度目の香港遠征でその貫禄を見せている。

★スマートレイアーの競走成績はこちら

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【香港国際競走】キセキ、皮膚病の影響なし12月09日() 05:03

 菊花賞馬キセキは白癬(はくせん)とみられる皮膚病の影響を全く感じさせず、角馬場での運動とパドックのスクーリングを順調にこなした。角居調教師も「体調は良さそうです。あとはレースまで無事にいってほしいです」と無事にゲート入りすることを願っていた。

★キセキの競走成績はこちら

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【香港国際競走】絶好枠リアリズム、入念にゲート練習12月09日() 05:03

 香港GI2勝目を狙うネオリアリズムは、角馬場とゲート練習の調整を済ませた。「昨日追い切りをしたので、馬場入りはせずにゲート練習をしまして、順調です」と堀調教師。絶好の(1)番枠を手にして、天皇賞・秋惨敗からの巻き返しを図る。

★ネオリアリズムの競走成績はこちら

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厳選コラム ~香港ヴァーズ 2017~

香港スプリント
レースの数日前、一昨年のこのレースの覇者、ペニアフォビアを送り込むA.クルーズ調教師がこう尋ねてきました。
「日本の馬は速いのか?」
ペニアフォビアは一昨年のこのレースで大外枠を引きながら敢然とハナを主張、そのまま押し切ってスプリント王の座に上り詰めました。一昨年同様、逃げて栄冠を目指すという宣言です。その指示通りペニアフォビアはまずは先頭に立ったワンスインナムーンを最初のコーナーで交わすとレースを引っ張りました。トライアルまで重賞2連勝で単勝1.9倍に推されたミスタースタニングはこの2頭を前に見て大名マークの3番手。今年のジョッキー・オブ・ザ・イヤー、H.ボウマンを配した春のスプリント王、ラッキーバブルズはトライアルに続き最内枠を引いてしまい、埒沿い最内6番手からミスタースタニングへの雪辱を直線にかけました。

直線に入ると馬場2分どころからまずはミスタースタニングが仕掛け、ワンスインナムーンを交わしペニアフォビアに迫ります。一方のラッキーバブルズはペニアフォビアをワンスインナムーンの間の1頭分の狭いところに勝負をかけましたが、後退してくるワンスインナムーンを交わすのに手間取る間にミスタースタニングは悠々と先頭に。4コーナー大外を回った同厩のディービーピンの猛追をクビ差で退け、今年の香港スプリント王の座を射止めました。


リーディング・トレーナーに8度も輝きながら、香港スプリントとはこれまで縁がなかったことが香港競馬七不思議の一つに数えられていたJ.サイズ調教師は4頭出しの大攻勢をかけてきましたが、1、2着独占で7不思議を解消してみせました。
「今シーズン3走ともいい競馬をしてきて状態も上昇していた。そして今日、最高のレースを見せてくれた。枠もよかったし、ナッシュも最高の騎乗。ゴールに入る前に勝利を確信したよ。2着のディービーピンも負けたとはいえ恥じることはない。クビの差は枠によるものでしかない」と、J.サイズ調教師は満面の笑みを湛えました。

一方、最内から前の馬を交わすのに苦労し4着に敗れたラッキーバブルズのF.ロイ調教師は悔しさをにじませました。「トライアルと同じ最内枠を引いてしまい、直線で抜け出せなかった。力の差ではない。
春のチェアマンズ・スプリント・プライズの連覇に向けて馬を作り直していく」

3着にはスプリンターズステークス以来の競馬となったブリザードが健闘。既にお伝えしましたが、スプリンターズステークスからの帰国が1週間遅れてしまったことで調整が遅れ、レースの直前にもまだ70%程度の状態でした。その状態での好走はこの馬の力を十分示したもので、P.イウ調教師が愛馬の検討を讃えました。レース前にも来年3月の高松宮記念への挑戦を表明していましたが、レース後には正式に名乗りを上げました。理想的なレース運びができなかったスプリンターズステークスでも5着、状態万全ではなかったここでの3着はブリザードの力が世界一レベルが高く層の厚い香港スプリンター勢の中でもトップレベルにあることを示すもの。来年の高松宮記念ではこの馬から目を離すことができなくなりそうです。


香港マイル
新旧勢力の激突の構図となったこのレース、1番人気に推されたのはJ.モレイラ騎手騎乗、初の重賞勝ちを前走のトライアルで飾ったシーズンズブルームで単勝2.6倍。これに旧勢力のビューティーオンリー4.5倍、ヘレンパラゴン6.9倍と続き、トライアルは3着と敗れたものの、それまでに重賞2連勝と今季の上り馬、ビューティージェネレーションが8.4倍と単勝一桁台はこの4頭。人気でも新旧激突の構図が浮き彫りとなりました。
パドックでの出来はビューティーオンリーがまだ絞れていないように見えましたが、A.クルーズ調教師は「馬はファットよりもフィットの方が重要。馬体重は気にしないでくれ」との一言。フィットという点では前走以上の状態には見せていました。

ゲートが開くとコンテントメントがまずは先頭に。前走のトライアルで出入りの激しい競馬でハナを譲ったことが敗因となったと見ていたJ.ムーア調教師の指示でビューティージェネレーションが100m通過で早くもこれを交わします。
今年のHKIRは超良馬場とペースがキーワード。ビューティージェネレーションは最初の2ハロンを24秒38、続く2ハロンは23秒07とややペースを上げますが、逃げるビューティージェネレーションには絶好のペース。最後方に控えたサトノアラジンのH.ボウマン騎手、これには堪らんと3角から猛然と捲りをかけて4角では外から先行集団に並びかけますます。

しかし、ビューティージェネレーションはホースオブフォーチュンを半馬身差に従えて続く2ハロンを23秒56とややペースを落として一息入れると直線最後の2ハロンでは道中たっぷりと貯めた脚を伸ばします。サトノアラジンはこの時点で足をなくしてしまいました。後続の中から4、5番手を先行していた人気薄のウエスタンエクスプレスがビューティージェネレーションに流れ込むようにゴールを目指すと、スローペースを最後方から直線にかけたヘレンパラゴンが外から、さらにその外から1番人気のシーズンズブルームが襲い掛かりましたが、超良馬場では前の馬が止まることはなく先頭のビューティージェネレーションがウエスタンを1馬身ちぎって香港マイル王の座に駆け上がりました。後方強襲の2頭では先に仕掛けたヘレンパラゴンが先着し3着、シーズンズブルームは4着に沈みました。


ビューティージェネレーションをマイル王の座に導いたのは香港ジョッキークラブが養成したローカルジョッキーのデレクことK.リョン。今季、ビューティージェネレーションで初の重賞勝ちを果たしたばかりか、マシュー・チャドロウィックに続く2人目のローカルジョッキーG1制覇を見事な逃走劇で成し遂げました。
「本当に、本当に嬉しいです」。G1ジョッキーとなった喜びに当初は言葉も少なかったデレクでしたが、レースに関しては冷静に振り返りました。
「最低でも2番手以内での競馬という指示でしたが、逃げることができて理想的にレースを運ぶことができ、直線でも全く足色も衰えることはありませんでした」

レース前に密かに逃げ宣言を伝えてくれたJ.ムーア調教師はこの勝利には全く意外感はない、と自信満々。
「前走は道中で不利があったけれども今日は全く理想的なレースだった」
ビューティージェネレーションの成長と状態が良かったことは大きな勝因であることは間違いありませんが、この日の馬場にあった逃げがそれ以上にモノを言ったことは騎手、調教師の勝利インタビュー、コメントからも明らかです。J.ムーア調教師はトライアル前に、ビューティージェネレーションで久しぶりに日本に行ってみるか、と漏らしていましたが、レース後には来春のドバイも選択肢の一つだな、と方針変換も匂わせました。


香港カップ
さて、HKIRのメーンイベント、香港カップです。レース前に大きなニュースが飛び出していました。インタビュー篇でもお伝えしていたように、J.モレイラ騎手が前走のトライアルで2着したタイムワープを袖にして春のクイーンエリザベス2世カップで勝利に導いたネオリアリズムに騎乗することになったのです。レース前々日の金曜夜開かれたギャラ・ディナーでオーナーのマーティンこと蕭剣新さんを直撃すると、不開心(不愉快)と一言。そして、ニュースが流れた瞬間に他のジョッキーから騎乗させてくれ、との電話が殺到、その中からJ.モレイラ騎手に次ぐZ.パートンに騎乗を依頼したことを明らかにしてくれました。

タイムワープは重賞未勝利ながら今季3戦いずれも逃げてG3 3着、G2 2着、トライアルでも逃げて2着と重賞級の力があることを十分証明。このレースでも一昨季の香港馬王(年度代表馬)でトライアルで復活したワーザーの単勝2.2倍に次ぐ2番人気の4倍に支持されました。一方、モレイラ騎手が選択したネオリアリズムはタイムに続く3番人気の7.3倍。現実的で判官贔屓などには縁のない香港競馬ファンは圧倒的にタイムの実力を評価したことになります。

レースは予想通り、タイムワープが引っ張ることになります。絶好の最内枠を引き、いいスタート切ったネオリアリズムを内に見て中ほど5番枠からタイムワープは敢然とハナを主張。ゴール板、1角を悠然と先頭にたって最初の2ハロンを26秒27と絶好のスローペースに落とすと、鞍上のパートン騎手は最内のネオリアリズムをちらちらと見ながらペースを測ります。ネオリアリズムの外にはスローペースをしていたのかスマートレイアーネオリアリズムに被さるような形で2番手。ネオリアリズムは内側3番手でレースを進めましたが、向こう正面に入ってからの次の2ハロンも25秒12、24秒37とスローに流れる中、口を割るようなそぶりを何回か見せます。1番人気のワーザーはその後ろ、7番手に控え、ステファノスはさらにその後ろ10番手前後からともに末脚に勝負をかける構え。

3角に差し掛かっても先行馬群の馬順に一向に変化はなく、タイムワープはここで後続に脚をなし崩しに使わせようとペースアップ。23秒79で4角を回ると道中貯めにためていた足をここで一気にスパートさせ、直線最後の2ハロンを22秒08の脚を繰り出せば、後続には全く打つ手なし。2馬身4分の1の差をつけて悠々とゴールイン!重賞初勝利が香港カップという偉業を達成しました。
2着には中団から4角で2番手まで進出したワーザー、ネオリアリズムは内で粘りこんで3着。さらに後方から直線勝負をかけたステファノスはワーザー以上の末脚を繰り出しましたが、1200m通過1分15秒76、1600m通過1分39秒55の超スローペースでは4着が精一杯でした。


「相手がよほど変わった競馬をしなければ、ペースは速くなることはないだろうとレース前に判断していた。今朝、調教師と電話で話をしたが、出来には絶対的な自信を示してくれたし、指示された通りに競馬をすることを確認し合ったんだ。実際その通り単騎スローでペースを運べた。これが最大の勝因だ」
この勝利でHKIR4レース全制覇を果たしたZ.パートン騎手が満面の笑みで勝因を語れば、A.クルーズ調教師もしてやったりの表情。
「最後の最後までスパートするな、と厳しく指示を出したんだけど、その通りの騎乗をしてくれたね」
そして、タイムワープの今後に関しては速い馬場、時計のかかる馬場ともが高い馬なので、と海外も示唆。レースに関しては今後、慎重に検討すると語りました。

一方、3着に敗れたネオリアリズムのJ.モレイラ騎手は「折り合いをつけるまでに時間がかかった、レベルの高いレースでの3着は立派な成績だ」と言葉少なくレースを振り返るだけでした。
彼の乗り代わりが最も大きなニュースとなったこのレースも明暗を分けたのは今年の超良馬場とペースであったことが証明された形となりました。日本勢の3、4、5着は決して恥ずかしいものとは言えません。しかし今年の馬場を踏まえた上での戦略策定ができていればさらに上位を狙えた可能性も十分あり、海外遠征競馬の難しさを改めて知らされた結果となりました。これは競馬そのもの、そして予想にも共通するものであることは言うまでもありません。
(写真提供:HKJC)


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR⑪~超良馬場とペースが明暗分ける。HKIR4レース回顧(前編)

3連覇の期待が高まっていた香港カップ菊花賞馬が勇躍挑戦した香港ヴァーズとも日本馬は連対すらできず、今年のLONGINES香港国際競走で日本勢はここ数年にない惨敗を喫しました。筆者の予想も最後の最後で詰めを欠く結果となってしまい、ウマニティ会員の皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいました。誠に申し訳なく深くお詫び申し上げる次第です。
さて、今年のシャティン競馬場は例年よりも芝の状態が良く、時計も1秒半程度早いものでした。この馬場と展開が香港スプリント香港マイル香港カップと香港勢が3勝と圧倒し、日本勢と明暗を分ける大きな分水嶺となりました。この観点から4レースを苦い思いで振り返ります。来年はこれまで翌週に分けて開催されていたチャンピオンズマイル、チェアマンズスプリントプライズの2つのG1もクイーンエリザベス2世カップと同日に開催、香港競馬春の祭典はHKIR同様の盛り上がりを見せます。そして、この春の祭典に向けた重賞戦線は年明け早々からスタートします。その勝利の美酒に向けて敗軍の将は敢えて兵を語ります。それは春の祭典での勝利の美酒につながると信じて。

【今年の馬場】
9月3日の今シーズン開幕からHKIRに向けた重賞があるたびにシャティン競馬場に足を運び、レースを観戦してきましたが、どうも今年の馬場は時計が早い、という印象を強くしてきました。


もちろん全てのレースが前年の勝ち時計を上回っているということではありませんが、1800mのG3、ササレディースパースではナッサが香港カップを勝ったタイムワープをゴール前、測ったようにアタマ差しきって1分45秒41のレコードタイムを記録しています。トライアル3レースは前年よりも遅いものでしたが、他の条件戦でも例年にはない破格の時計が記録されており、今年の馬場は前年とは訳が違う、これが本番での勝敗を分けるだろうと感じていました。

トライアル前には1週間、田中博康新調教師の香港厩舎研修に付き合って、朝から馬場周辺におりましたが、その際に馬場管理責任者と毎朝話をして、今年の馬場はいつもと違う、と話をしていました。彼が言うには、今年は冬用の芝の発育が遅く、芝丈が短いので恐らくそれが原因ではないか、とのことでした。馬場を歩いてみれば確かに例年よりも芝丈は短く感じられます。彼は本番までには芝も育って例年と同じような馬場になるだろうとも見通しも述べていました。トライアル3レースの勝ち時計は前年よりも遅いものでしたので、彼の見通しは正しいものでした。

しかし、本番の12月10日、1レースはクラス3の1800m戦。この時計に注目していたのですが、これは速いという時計が記録されました。


1400mのクラス3条件戦でも同様に昨年以上に速い時計が出ました。前週のシャティン開催は最大限の仮柵であるC+3で行われ、10レース中で芝のレースは3レースしか組まれていませんでした。仮柵のとれた内埒沿いは正にグリーンの絨毯のヴィクトリーロードとなり、早い時計が記録されていたのです。香港の馬場は日本よりも時計1つ以上遅いというのが常識ですから、よし!これは日本馬に有利となった、と香港ヴァーズの発走前には前日の予想にさらに自信を深めたのでした。


香港ヴァーズ
一昨年のこのレースの覇者で昨年はゴール直前、サトノクラウンに騎乗したモレイラ・マジックにやられて連覇を逃したアイルランドのハイランドリール。今年はあのA.オブライエン軍団が空前絶後、5頭の大攻勢をかけてきました。その大将にあのR.ムーア騎乗、このレースがラストラン、とあって単勝1番人気3.1倍の1番人気に推されました。続いてが日本の菊花賞馬、キセキ神戸新聞杯でダービー馬、レイデオロに肉薄し、そのレイデオロジャパンカップシュヴァルグランの2着と健闘したことから強い3歳馬の2番手としてここは十分勝負になる舞台と香港ファンも受け止めたようです。続いてフランスの名伯楽が早い馬場への高い適性を見て送り込んできたタリスマニックと続きました。

ゲートが開くと真っ先に飛び出したのは地元香港のヘレンカリズマ。香港は長距離戦が少なく、ステイヤー陣も手薄で長距離戦は得てしてスローペースになりがちです、案の定、ヘレンカリズマは800m通過49秒98、前半の1200m通過が1分15秒78と超スローペースでレースを先導。1番人気のハイランドリールが2番手に控え、タリスマニックはハイランドリールを前に見る3番手。我らがキセキはゲートで安目を売り、最後方から。もう1頭の日本馬、トーセンバジルは中団からレースを進めました。

超スローから勝機を探るヘレンカリズマにハイランドリールは向こう正面中ほどから外に馬体を合わせて差を詰めていきます。キセキもスローペースに堪らず、向こう正面から捲りをかけていきました。レース前日、角居勝彦著教師と懇談した際、猛烈な追い込み馬だけにスローペースだけが気がかりと質問したところ、「行かせれば行ける馬、スローなら2011年ヴィクトワールピサドバイワールドカップのような競馬もある」と答えてくれましたが、正にヴィクトワールピサを思わせる捲りを6年前同様にM.デムーロが見せてくれました。さてハイランドリールは4角手前でヘレンを交わし、先頭で直線に向かうとタリスマニックが音もなくハイランドリールに迫り、その外に馬場中央から昨年、サトノクラウンでハイランドをゴール直前交わしたJ.モレイラ騎乗のトーセンバジルが迫ります。最内、中、馬場中央と3頭雁行して火花の散るような叩き合いの中、ハイランドリールは足色を鈍らせることなく先頭でゴールイン!昨年の雪辱を果たして有終の美を飾りました。


ムーア騎手は「エンジンがかかれば最後まで必ずファイトをしてくれる馬。今日は得意の形に持ち込むことができて強い内容でした」と満面の笑みを湛えれば、A.オブライエン調教師は2歳から重賞で活躍して、南半球のオーストラリアも含めて世界中を飛び回り頑張ってくれました。ラストランを飾れてトレーナーとして感慨深いですし、彼はきっと素晴らしい種牡馬になると思います」と感慨を深めていました。

さて、日本勢ですが、トーセンバジル藤原英昭調教師は「モレイラ騎手は完璧に乗ってくれました」とまずはジョッキーを讃え、愛馬に関しては「前の2頭は世界で1・2位と言われる馬なので、この結果には自信が持てます」と愛馬の健闘に満足していました。2番人気に推されたキセキですが、角居調教師は「レース後まだデムーロ騎手と話ができていないのではっきりとした敗因は分かりませんが、見えない疲れがあったのかもしれません」とコメント。デムーロ騎手は「スタートが速くなく、ペースが遅かったので、もう少し前へ行きたかったです。3-4コーナーで良い位置に行けたと思いましたが、直線ではファイトがなくて、自分で止まってしまいました」と敗因を語りました。レース前に伝えられた皮膚病に関して角居調教師はその影響を否定していましたので、デムーロ騎手が語った「ペースが遅かった」が主たる敗因に挙げられるのではないでしょうか。後半の1200m、400m毎にハイランドリールは23秒74、23秒56、23秒15とペースを上げており、これを後方から追い込むのはいかな鬼足のキセキを以てしても奇跡を起こすことは不可能だったのです。
(写真提供:HKJC)

【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR⑫~超良馬場とペースが明暗分ける。HKIR4レース回顧(後編)へ続きます。



甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【LONGINES香港国際競走2017】恒例!レース展望デブ対談~現地競馬記者”文傑(ぶん・けつ)”氏と4レースを斬る(後編)

◆プロフィール
文傑(ぶん・けつ)
香港最大の日刊紙『蘋果日報(アップルディリー)』首席競馬記者を務め、今秋より同じく大手日刊紙『星島日報』に移籍。競馬記者経験は20年以上。香港で最も経験と知識を有する競馬記者の一人。

甘粕代三(あまかす・だいぞう)
東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にのめり込む。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問。

香港マイル
甘粕 香港マイル香港スプリント以上に香港馬の独壇場。この10年、香港馬以外で勝ったのは、あのモーリスだけだ。

文傑 モーリスに負かされれば、それは本望だ。

甘粕 さて、あのエイブルワンが引退して香港マイル陣は戦国時代になるかと思っていたら、ビューティーオンリー、ヘレンパラゴンとコンテントメントが天下三分、三国時代になった。と思っていたら、今度はこれに異を唱える馬が名乗りを上げた。

文傑 シーズンズブルームだろ。これが俺の一押しだ!

甘粕 モレイラも今年の香港国際競走ではシーズンズブルームがベストホースと言ってたよ。

文傑 俺もそれは聞いている。香港カップネオリアリズム以上の評価。相当惚れこんでるね。トライアルの勝ちっぷりを見ただろ?

甘粕 もちろんだ。あの日は来年開業するJRAの田中博康調教師にパドックで一頭々々馬の見方を教わっていた。彼は一瞥して香港馬らしくないと一言。

文傑 確かに一回り小さい。1028ポンド、日本風に言えば466キロだ。

甘粕 日本では適正サイズだけど香港ではねえ。それトモの恰好が今一つだったんで狙いをちょっと下げたんだよね。そうしたらあの激走だ。

文傑 ジョアン(モレイラ)が惚れこむだけのことはあるだろ。

甘粕 その通りだね。小さな大王の降臨を予感させる。

文傑 だからシーズンズブルームを中心に考える。

甘粕 それは同感。2番手は?

文傑 ビューティーオンリー。

甘粕 今季は明らかに重め残りだね。

文傑 トニー(クルーズ調教師)は安田記念から戻って、その疲労もあるから当初、今季はトライアルまで1戦とローテーションを組んだらしいんだけど調教で絞れないんで去年と同じローテーションにしたんだよ。

甘粕 トライアルも明らかに重かった。去年に比べると10ポンド以上重い。トニーも絞る絞る、と言ってたけど金曜の朝に確認したんだよ。

文傑 なんて言ってた?

甘粕 まだファットかって訊いたら、ファットよりもフィットの方が重要だ。フィットしてきてるって。

文傑 これをどう受け止めるか、微妙だなあ。パドックでしっかりと馬体確認しないといけないか?

甘粕 そうだね。予想の前に確認できないのがつらい。3番手は?

文傑 アッと驚く「川河寶駒」!

甘粕 シシュアンダール! 香港移籍して3戦、トライアルは5着とは言え2馬身差。上昇の余地は十分だ。お前さんと仲がいいT.ミラード調教師の馬か。人情馬券じゃないのか?

文傑 それを差し引いても買いたい1頭だ。あとはサトノアラジン。ボウマンだぜ。

甘粕 ボウマン騎乗は確かに魅力。だけど香港に着いてから、これがラストランと発表したね。それが嫌なんだ。秋すでに3戦、この2戦は競馬になっていない。おつりは残っていないんじゃないか? 俺は狙えないな。

文傑 じゃあ、なんなんだ?

甘粕 お前さんのあげた2頭よりはヘレンパラゴン、ビューティージェネレーションの方が上だと思う。

文傑 ヘレンパラゴンの2日のバリア・トライアル見たのか?

甘粕 殿負けしたけど、J.ムーア調教師は砂を被ったのでT.ベリーが止めた。エースには全く影響ない、と言ってたよ。トライアル2着の競馬を見てるし、ジョン(ムーア調教師)の言葉を信じたいね。

文傑 ビューティーはビューティーでもジェネレーションは今季、重賞連勝してきてトライアル3着。力をつけてきてることは認めるけど。

甘粕 トライアルは出入りの激しい競馬で何回か首を上げていたよね。それで3着というのは価値あり。ジョンは今回逃げられるものなら逃げてもいいと言ってた。単騎スローで逃げられればあっと言わせる場面もある、かと。

文傑 夢見てればいいよ(笑)


香港カップ
甘粕 最後はクライマックスの香港カップだ。春のクイーンエリザベス2世カップの勝ち馬、ネオリアリズムに、あのモレイラが騎乗すると聞いた時には本当にびっくりしたよ。

文傑 ジョアンにしてみれば当然の選択だよ。

甘粕 それはそうかもしれないけど、お手馬タイムワープがトライアルで2着、それを袖にしたんだぜ。

文傑 最も可能性のある馬を選ぶのが勝負の鉄則だろ。香港では珍しい事じゃないし、世界でもそうだよ。

甘粕 でもオーナーのシウさん一家と水曜のハッピーバレーで会ったら、やはりご機嫌は良くなかったよ。

文傑 それはあるだろうな。でもジョアンほどの騎手だから、それができる。シウさん一家のだってスプリントではザウィザードオブオズの手綱をジョアンに任せてるじゃないか?

甘粕 確かにね。お前さん言う通りトップジョッキーだからこそできることだ。でも、ネオリアリズムには若干の不安を感じているんだよね。

文傑 それは俺も同じだよ。

甘粕 QE2を勝って日本に凱旋してから予定していた札幌記念を回避。天皇賞(秋)をぶっつけで使った。あの不良馬場だから着順は気にしていないけど順調さを欠いたことが馬体増につながってやしないかと。

文傑 じゃあ、何から行くんだ?

甘粕 香港馬王!

文傑 ワーザーか。俺もワーザーから行きたい。去年は香港カップに間に合わず年明けから始動。G1も勝ってQE2に臨んだけど香港ダービーを勝った頃の状態にはなっていなかった。

甘粕 今季は休み明けこそ予定通りの凡走で調教代わりだったけど、2戦目のトライアルには仕上げてしっかりと勝ち上がって香港カップに王手をかけた。

文傑 トライアルは明らかに仕上げ途上、抜け出すまでに少々もたついたのはそのせい。

甘粕 ジョン(ムーア調教師)は90%ちょっとの仕上げだとトライアル直後に言っていた。

文傑 その後の調教は順調そのもの。準備完了って感じだ。

甘粕 ジョンもそう言ってたよ。日本語で言えば仕上げは上々、あとは細工を御覧じろって感じだね。

文傑 不動の軸に据えたい。

甘粕 大賛成! 2番手には何をとる?

文傑 ネオリアリズムよりはステファノスを上位に見ている。この馬にもボウマンだぜ!

甘粕 今年はボウマン・イヤーか? しかし、ボウマンとモレイラの競演が見られるなんて香港の競馬ファンは幸せだよ。ステファノス藤原英昭調教師と話したんだけど、1歳年取っちゃったからなあ、と一言。去年ボウマンが乗ってたら鬼に金棒だったって意味と受け止めた。

文傑 それでも十分勝負になるだろう。なんたってボウマンなんだから。

甘粕 モレイラ5馬身と言ってたことがあるけど、今のボウマンは一時のモレイラ以上かもしれない。5馬身半、いや6馬身。

文傑 大げさな(笑)。その次にはブロンドミー。

甘粕 流石UCLA卒、金髪美女と来たか(笑)

文傑 前走は仏シャンティでG1勝ち、今年はまだ3戦のみ。おつりはどっさりある。2010年のスノーフェアリーの匂いがするんだ。

甘粕 ブロンド美女の甘い香りか(笑)

文傑 冗談じゃないぜ、本気だぜ! 続いてポエッツワード。香港の馬場に合っている。

甘粕 香港には初のお目見えだぜ。合ってるかどうかは走ってみなきゃ分からない。スノーフェアリーは香港の前に日本でも走って硬い馬場への適性を示してたけど、さっきも言ったように香港の馬場は時計の速い方に進化してしまった。以前のように欧州勢が活躍できないんじゃないか、という気がしてるんだ。特に今年は時計が速そうだからね。だったら引退戦だけれどもスマートレイアーの方が上じゃないか?

文傑 7歳牝馬。おばあちゃんか。

甘粕 京都大賞典で負かした相手がジャパンカップシュヴァルグランだからね。まあ常識的には引退戦の7歳牝馬には手出せないけど、大川オーナーは香港でも馬主資格を取って馬走らせてるじゃない。それで香港を引退レースに選んだんだと思うけど。

文傑 さて、最大の問題はネオリアリズム。どうする?

甘粕 消す勇気はないな。ジョアンだし。ワーザー中心で相手の何番手に取るか。今の段階ではステファノスと同じ2番手、直前まで観察を続けたい。

文傑 最後に日本の皆さんにお知らせがあるんだ。

甘粕 土曜夜の番組のことね。香港時間土曜夜22時、日本では23時から以下のURLで香港国際競走4レースの直前情報をたっぷり1時間お届けします。広東語ですけど……。

http://racing.dimbo.tv(PCサイトへ移動します)

文傑 日本の若い女性の皆さん、ぜひご覧ください!


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★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロと、”競馬記者歴20年超!香港競馬界の博学多識”文傑(ぶん・けつ)プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。現地ならではの直前ナマ情報にご期待ください。
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【LONGINES香港国際競走2017】恒例!レース展望デブ対談~現地競馬記者”文傑(ぶん・けつ)”氏と4レースを斬る(前編)

待ち遠しかった香港国際競走がいよいよ明後日に迫りました。レース直前、日本のデブ記者と香港のデブ記者ががっぷり四つに組んでの勝ち馬の検討。恒例!の日本-香港デブ対談の始まりです。甘粕の相手は例によって香港競馬界一の巨漢記者、星島日報の文傑!ご存じのように香港では日本以上にヨーロッパ、オセアニアのレースがサイマルキャスト発売されていますので、日本記者以上の知識と痛みがあるはず。その痛みの一端から当たり馬券が飛び出すのか? それでは、見合って、見合って、手おろして待ったなし!

◆プロフィール
文傑(ぶん・けつ)
香港最大の日刊紙『蘋果日報(アップルディリー)』首席競馬記者を務め、今秋より同じく大手日刊紙『星島日報』に移籍。競馬記者経験は20年以上。香港で最も経験と知識を有する競馬記者の一人。

甘粕代三(あまかす・だいぞう)
東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にのめり込む。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問。

甘粕 春のクイーンエリザベス2世カップ以来の対談だね。

文傑 ドバイワールドカップでも対談してるんじゃない?

甘粕 そうだったっけ? それは失礼。その後、馬券で御殿は建ったかい?

文傑 シット! だったらお前と対談なんかするはずないじゃないか!(怒)

甘粕 それはお生憎様(笑)

文傑 でも、この対談のおかげで日本でも俺のファンが増えてるっていうじゃないか。それも若い女性のファンが!

甘粕 誰がそんなこと言った? そんなことある訳ないじゃないか! そんな与太飛ばしてる暇はないんだ。早速、レース順に検討して行こうじゃないか。

文傑 望むところだ!

香港ヴァーズ
甘粕 今年も遠征馬が多数を占めたけど、12頭中10頭と例年になく多い。香港は馬場を貸すだけかね。

文傑 そうだなあ。香港は長距離のビッグレースが少ないから致し方ない。馬券でしっかりと仇をとらせてもらうさ。

甘粕 日本は海外ビッグレースのサイマル発売が日本馬出走レースに限られている。香港は香港馬が出走しないレースも多く発売されていて羨ましい限りだよ。

文傑 その分、傷も深くなるってこともあるけどね。

甘粕 それもまた、お生憎様(笑)

文傑 ディウ・ネイ!(注:広東語最悪の罵り言葉)。それだけ日本人よりも海外に目が開かれてるってことさ。傷と痛みがあってこそ知識は広がるんだ。外国遠征馬のことは任せてくれ! これまでの借りを一気に取り戻してやるから。

甘粕 どの馬に注目している?

文傑 タリスマニック! ブリーダーズカップを見なかったのか!

甘粕 ほう?

文傑 4歳で今年は7戦だけのフレッシュさ。間違いなく勝てる!

甘粕 続いては?

文傑 ティべリアン。前走メルボルンカップは7着だったけれど敗因ははっきりとしている。3200mが長すぎただけだ。5月にはフランスで一番手に挙げたタリスマニックを負かしている。

甘粕 2頭ともフランス馬かい?

文傑 この10年間の成績を見てみろよ。フランス馬が半分、5勝を上げているんだぜ。このレースへの適性はフランス馬が一番だよ。

甘粕 確かにこの10年はそうだけど、香港の馬場がここ数年で速くなってきている。特に今シーズンは特に速い。ササ・レディーズパースでは1800mのレコードタイムを記録している。時計が速くなるとフランス馬には厳しいんじゃないかな。

文傑 だから日本馬にも注目している。トーセンバジルだ。

甘粕 トーセンバジルはまだ重賞勝ってないんだぜ。いくら何でもここでは家賃が高いよ。だったらキセキだ。この馬、相当な器だよ。

文傑 ヨーロッパの3歳はこのレース勝っているけど日本の3歳は良績がない。

甘粕 それは3歳のトップ・ステイヤーはこれまで香港に見向きもしなかったからさ。菊花賞の後に有馬記念があるからね。菊花賞馬で香港ヴァーズに出走したのは2006年のソングオブウインドだけ。

文傑 懐かしいねえ。2番人気で4着、レース中、脚部に故障を発生してラストランになったんだったね。

甘粕 そう。それ以来の菊花賞馬挑戦になる。

文傑 3000mの菊花賞馬には2400mは短いんじゃないのか?

甘粕 そんなことはないよ。菊花賞トライアル神戸新聞杯2400mでは、あのレイデオロの2着、最速の末脚だった。

文傑 なるほど。

甘粕 レイデオロ菊花賞に行かずジャパンカップで2着。3歳馬でジャパンカップ連対以上はここ10年ではあのジェンティルドンナローズキングダムディープスカイの3頭だけ。それに今年の3歳は古馬との混合戦になってから例年にない活躍を見せている。今年の3歳は近年にないレベルの高さだ。

文傑 ほう。

甘粕 ジャパンカップレイデオロを物差しにすればキセキの力は古馬級と言える。

文傑 去年ゴール前でサトノクラウンにやられたハイランドリール、どう見る?

甘粕 このレースがラストランだったねえ。ラストランを飾るのはなかなか難しいよなあ。あとに種牡馬入りというさらに重要な役割が待ってるわけで無理したら元も子もない。

文傑 とはいえ連下、複勝の注意は必要だろう。

甘粕 それは同感だ。フランス馬の情報は参考になった。予想に反映させてもらうけど、とにかく今年の時計、馬場が気になる。

文傑 香港ヴァーズの前に3レースある。この時計には注目しなくちゃいけないね。

甘粕 今週は仮柵が取れたし、どこまで速くなるか。最終的にはそれで馬券を考えざるを得ないな。


香港スプリント
甘粕 香港馬の独壇場、香港スプリントだ。日本でも知名度の高かったエアロヴェロシティは引退したけど今年も強いのが2頭いるね。

文傑 トライアル勝ちのミスタースタニングとラッキーバブルズ、確かに強いことは認める。ただ、2頭を負かせる馬を探したんだ。

甘粕 この2頭で大勝負するつもりだったんだけど、そんな馬いるのか?

文傑 いるんだよ。これが(笑)

甘粕 もちろん香港馬だよな?

文傑 オフコース! ザウィザードオブオズ! とにかく、この馬の末脚は天下一品だ。

甘粕 1番人気確実のミスタースタニングと同厩、J.サイス厩舎はアメージングキッズ、ディービーピンも加えて4頭出しの大攻勢。そのサイズ軍団の2番槍だね。

文傑 今季開幕から2戦、2強と戦って遜色なかった。9⇒5着、着差も確実に詰めている。鞍上がジョアン、あのモレイラだろ。ハイペースで末脚が生きる。同厩で多頭数出しの時は得てして人気の薄い方が来るジンクスもあるじゃないか?

甘粕 ジンクスと言えば香港競馬の七不思議。サイズは香港スプリント勝ったことがないんだよね。リーディングに9回も輝きながら。

文傑 もう一つジンクスがある。スプリント・トライアルと本番を連勝した馬はいない。

甘粕 それは心強い!

文傑 何がさ?

甘粕 ラッキーバブルズに魅力を感じてるんだ。

文傑 同じく。魅力を感じているけどザウィザードオブオズに続く2番手だな。

甘粕 こちらは1番手に評価したい。トライアルはZ.パートンに尽きる。1200mで4回も5回も不利を受けたらブラックキャビアだってウィンクスだって勝てやしない。あの温厚なF.ロイ調教師が顔色変えて怒りを露わにしていた。2度とパートンに手綱は戻さないってね。それで起用したのが、あのH.ボーマン。今年のジョッキー・オブ・ザ・イヤー。ジャパンカップの騎乗は完璧! 痺れたよ。

文傑 お前がオーナーと抱き合ってる映像、香港でも流れてたぜ。

甘粕 また最内枠引いたけどボウマンなら前走のようなことはない。

文傑 それ以外では?

甘粕 一昨年の覇者、ペニアフォビアが気になる。今季はハナを取れない競馬で2戦凡走、前走ではハナをきって4着。逃げられればしぶといところを見せつけた。やっぱり逃げてナンボの馬。トニー(A.クルーズ調教師)は日本馬がハナ切ることはないよな、と盛んに気にしていた。ワンスインナムーンはここ2戦逃げてるけど、速さで言えばペニアフォビア。ハナは切れるだろう。

文傑 アメージングキッズも忘れない方がいい。スプリンターズSに挑戦して5着のブリザードをどう見る?

甘粕 スプリンターズSは惜しい競馬だったよな。

文傑 乗り手がなかなか見つからなくてJ.モッセがドバイから駆け付けて騎乗。案の定スタートで安目売って後方から。スローペースの中、直線だけの競馬で5着。この馬は香港スプリント陣では決してA級ではないのに、あの競馬。香港スプリント陣のレベルの高さをしっかりと示してくれた。

甘粕 敵地であの競馬、それを物差しにすればアウェー香港で日本馬の居所は今年もない。ヨーロッパ勢、アメリカ勢も香港の馬場じゃあ話にもならんだろ。枯れ木も山のなんとやら、だ。

文傑 それはそうだ。ところが、だ。

甘粕 リッキー(リッキー・イウ調教師)から聞いたよ。レースの後、検疫なのか輸送の問題なのか、すぐに帰国の予定が1週間遅れたんだろ。ひどい話だ。

文傑 それで調整が遅れて本調子にはまだまだ。

甘粕 リッキーが来年の高松宮記念で雪辱と言ってたよ。

文傑 そこまでターゲットを絞りこんでいれば、調整過程のここで3強に太刀打ちするのは簡単なことではない。

甘粕 その通りだ。ブリザードには高松宮記念ではぜひとも雪辱して貰いたいね。いずれにしても香港馬同士の決着だよ。

文傑 全くもってその通りだ。

甘粕 3連単で絞り込んで勝負したいね。今年勝負できるのは香港スプリントと睨んでいる。

【香港国際競走】恒例!レース展望デブ対談~現地競馬記者”文傑(ぶん・けつ)”氏と4レースを斬る(後編)に続きます。


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★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロと、”競馬記者歴20年超!香港競馬界の博学多識”文傑(ぶん・けつ)プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。現地ならではの直前ナマ情報にご期待ください。
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【香港国際競走】4レースの展開予想

今年の海外馬券発売レースを締め括る香港国際競走が、10日に香港のシャティン競馬場で行われる。日本からは4レースに計8頭が出走。4つのレースの簡単な展開予想(各馬の位置取り想定)をまとめてみたので、予想するうえでの参考にしていただきたい。またレース当日には、厳選の穴馬を推奨した予想をアップするので、そちらもぜひお楽しみに!

香港ヴァーズ
香港ヴァーズでレース展開のカギを握るのは、一昨年優勝、昨年2着だったハイランドリールになるだろう。これまで7カ国でG1を6勝。その競馬ぶりは、逃げはもちろんのこと、先行グループから直線を待たずに先頭に躍り出て押し切ることも可能だ。当然のように中団以降の馬たちはこれが目標になる。ちなみに、一昨年は前半1200m=1分17秒54の流れを3番手で通過してV。昨年は1分14秒32のペースを先頭で通過してサトノクラウンの2着という数字が残っている。
そのハイランドリールをBCターフ(G1)で破っているタリスマニックは、そのときと同じくライバルの直後にピッタリとつけてBCの再現を狙う腹づもりだろう。騎手は騎乗停止中のM.バルザローナからM.ギュイヨンに乗り替わっている。カンバーランドロッジS(G3)を逃げ切っているデインヒルコディアックは自らペースをつくりたいクチ。この馬がハイランドリールのハナを叩く可能性が大きそうだ。ティベリアンはサンクルー大賞(G1)やルー賞(G3)では逃げていたが、ドーヴィル大賞(G2)では差しに転じていたように、何が何でもハナにこだわるタイプではない。好位から中団に収まるか。南アフリカ時代にG1を勝っているスマートコールグレイトジャーニー産駒のマックスダイナマイトも先行グループにつけそう。控える競馬ができるトーセンバジル京都大賞典のように先行することを考えておきたい。
キセキ菊花賞神戸新聞杯で結果を出している差しのスタイルを崩さないはず。中団から後方に待機しての末脚勝負に徹する。アイダホの勝ったハードウィックS(G2)で最後にいい脚を使って3着に入ったケミカルチャージのほか、イーグルウェイゴールドマウントヘレンカリズマの地元勢が後方グループから上位をうかがう。

香港スプリント
ハナを切りたいのは日本のワンスインナムーンペニアフォビアだが、ペニアフォビアは前走でもスタート後に気合を入れ続けてようやくハナに立ったように、テンのスピードならワンスインナムーンのほうが上。自分のかたちに持ち込める。サインズオブブレッシングは昨年の香港スプリントは大外枠だったこともあって後方からになったが、欧州では逃げるレースを見せている。今年の5枠ならばそれなりのポジションを取ることも可能だろう。ドバイでアルクオーツスプリント(G1)を勝ったザライトマン、BCターフスプリント(G1)を勝ってきたストーミーリベラル、それに香港のノットリスニントゥーミーディービーピンが好位につけたい組だが、アメリカのストーミーリベラルは右回りが初めてになる点に気をつけておきたい。
出走馬中レーディングトップのミスタースタニングは、昨シーズン後半は後方から追い込む競馬だったが、今シーズンは中団から伸びて重賞を連勝している。レッツゴードンキはミスタースタニングの前につけたい。ロードカナロアと同じキンカメ産駒で岩田騎手。果たしてどういう結果になるか。昨年、9番手から2着に追い込んだラッキーバブルズは、優勝したチェアマンズスプリントプライズ(G1)が4番手からの競馬。その時と同じH.ボウマン騎手の起用で、陣営には好位から中団でレースを進めたい意図がありそうだ。後方に控えそうなのが、ザウィザードオブオズアメージングキッズ、それにブリザードワンスインナムーンのつくるペース次第で追い込み馬がゴール前で強襲するシーンもあり得る。

香港マイル
レーティングトップ119のビューティーオンリーヘレンパラゴンローリーポーリー(牝馬のアローワンスを加えて119)から5ポンド差以内に11頭が入り、レーティングのうえでは大混戦が予想される。そこにA.オブライエン調教師が送り込むランカスターボンバーとローリーポーリーはどちらも先行するタイプ。ただし、ランカスターボンバーにR.ムーアが騎乗するからと言って、G1を3勝しているローリーポーリーがあからさまなペースメーカー役を務めるとはちょっと考えにくい。騎手の序列に関係なく、お互いのレースに徹するだろう。流れが速くならなければ、コンテントメントがハナを切ることも想定できる。パン賞を(G3)逃げて勝ったカラール、先行して今シーズンに重賞2勝のビューティージェネレーションを含めた5頭が先団を形成する。
セレブレーションマイル(G2)を連覇したライトニングスピアが先団の直後を追走し、ジョッキークラブマイル(G2)を勝ったシーズンズブルーム、同2着のヘレンパラゴンと同7着のホースオブフォーチュン、同8着のウエスタンエクスプレスも中団につける。
末脚にかける後方グループには、初ブリンカーで臨むサトノアラジン、ディフェンディングチャンピオンのビューティーオンリー、昨年3着のジョイフルトリニティ、初重賞の前走ジョッキークラブマイルで5着だったシシュアンダールの4頭。ペースはややスローになるのではないかと予想している。

香港カップ
エイシンヒカリに続き昨年はモーリスが優勝と、日本馬の連勝中の香港カップ。一昨年と昨年の優勝タイムはここ10年で3回しかない2分0秒台で決着しているのだが、その要因はエイシンヒカリが速いペースで引っ張ったため。そんな強力な逃げ馬がいない今年はペースが落ち着きそうだ。先手を取りそうなのは、クイーンエリザベス二世Cでロングスパートを決めたネオリアリズム、イギリスのロビンオブナヴァン、香港のタイムワープあたり。3頭とも好位に控える競馬もできるので、ハナを主張する馬がいても深追いすることはないだろう。
ガルリンガリは前走のドラール賞(G2)がロビンオブナヴァンの2番手から抜け出てV。昨年の香港ヴァーズは後方からの競馬となっただけに、序盤でいい位置につけたい。ここ2戦が芝以外のレースだったウォーディクリーは仏ダービーで5着に追い込んでいるが、先行力もある。ドーヴィルは今年だけですでに5カ国でG1に挑戦。まだ勝利はないものの3着が2回ある。位置取りはドバイターフ(G1)のときのように先行グループになりそうだ。ステファノスは今年の国内重賞で2着しているときと同じように香港でも前目の位置につけられれば好走パターン。香港で3つのG1に勝っているワーザーは前走の勝利が鮮やか。そのときのように3~4番手につける。アイルランドとイギリスのチャンピオンSを連続2着したポエッツワード、カナダでイーピーテイラーS(G1)を勝ったブロンドミーは、欧州馬らしくスタートは出たなり。中団から後方でのレースを進める。昨年モーリスの2着に突っ込んだシークレットウェポンは後方から。スマートレイアーは2走前の京都大賞典が最近では珍しく追い込む競馬を見せて勝利。昨春は逃げ切って重賞を連勝している。逃げ、追い込みどちらにしても思い切った作戦をとったときが恐い。

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直近の海外馬券発売レース「凱旋門賞」は▲-◎で馬連・3連複をヒット!昨年の香港国際競走も4戦3的中!海外馬券のエキスパート藤田将大プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走の予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。
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藤田将大(ふじた・まさひろ)プロフィール
某大手商社に勤める現役の商社マン。仕事以外の時間はほぼ競馬に費やし、国内外の馬やレースの情報をくまなくチェックする日々を送る。
ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アジアの競馬主要国におけるビッグレース観戦歴は豊富で、その前後に行われる一般レースや平開催でも馬券勝負には余念がない。
「名勝負を見て得られる感動と、馬券を獲って得られる感動は別物」を理念に掲げ、国内外を問わず「いかにして馬券で勝つか」を常に研究している。
国内での海外レースの馬券発売開始を機に、雑誌『競馬最強の法則』で華々しくメディアデビュー。海外馬券発売レースの第一弾となった凱旋門賞で3連単38万馬券をいきなり的中させ、競馬ファン・関係者の度肝を抜いた。

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【LONGINES香港国際競走2017】J.ムーア調教師インタビュー「香港年度代表馬の誇りと意地でネオリアリズム負けられない」

J.モレイラ騎手に続きレース直前インタビューに登場いただくのは、香港馬王(年度代表馬)ワーザーを擁して打倒ネオリアリズムに闘志をたぎらせるJ.ムーア調教師です。ワーザーの他にも香港国際競走に5頭を送り込み大攻勢。その意気込みと各馬に対する期待を直撃しました。(取材・文/甘粕代三)

──ワーザーがトライアルを勝っていよいよ復活ですね。

ムーア おかげさまで(笑)。

──トライアルのレースぶり、どうご覧になりましたか?

ムーア 抜け出すまでにちょっともたついた感じはしたけれど、トライアルはあくまでトライアルだからね。あのくらいでちょうどいいんじゃないかな。

──トライアルの状態をパーセントにすると、どのくらいですか?

ムーア 90%ちょっと。95%までは仕上げていないよ。

──先ほど主戦のトム・ベリー騎手にワーザーの状態を伺ったんですが、『状態はとてもいいよ。トライアルは余裕残しの仕上げで本番まではさらに上積みもあるからね。上積みは10%は期待できる』と言っていました。先生はトライアルの仕上げ具合を90%以上95%までとおっしゃってますから、おふたりの数字を足し算すると100%を超えることになってしまう?

ムーア 本当だ。100%オーバーだ!(笑)

──その残りの5%以上10%未満の余裕、どのように仕上げますか?

ムーア 12月2日のギャロップを見てくれたかい?

──もちろん。

ムーア どうだった?

──1200m1分21秒3ですか。決して速い時計ではありませんでしたが、トライアル前の調教と比べると時計2つから3つ速めになってますね。

ムーア それが本番に向けての仕上げさ。でも日本に比べたら時計が遅いって言いたいんだろ。今年の夏、北海道の競馬場と牧場で日本の調教を見せて貰ったんだけど、2歳からビュンビュンやるんだね。クレイジーかと思ったよ。香港ではあそこまで速くはやらない。あの程度でいいんだ。でもトライアル前からギアを一段上げているのはご指摘の通り。

──2日のギャロップ、気合は明らかに良くなってきていると感じました。

ムーア あの後、厩舎で馬の状態を確認したんだけど、息の入り、馬体の張りとも明らかにトライアルとは違ってきている。この後、もう1本ギャロップすればパーフェクトに持っていける。

──ということは先ほどのトム・ベリー騎手との数字を足し算した100%オーバーですね?

ムーア そういうことになっちゃうかな(笑)。まあ、それくらい順調と受け止めてくれよ。ところで日本の馬、ネオリアリズムはどうなの?

──前走の天皇賞(秋)は不良馬場中の不良馬場、いつもの年に比べて勝ち時計が10秒も遅いんですよ。ですから、あのレース結果は度外視していいかと。

ムーア そうかい。春は負けてるからね。調子を取り戻してきている今こそ、香港馬王の意地にかけても雪辱を果たさないといけない。

──香港馬王の意地、雪辱に期待しています。香港カップ以外にも香港スプリントにノットリスニントゥーミー、香港マイルにヘレンパラゴン、ビューティージェネレーション、ジョイフルトリニティ、香港ヴァーズにはイーグルウェイと例年通りの大攻勢。期待のほどをお聞かせ下さい。

ムーア 香港スプリントは強いのが2頭いるからねえ。フィットしても3着ってところかな。香港マイルはヘレンパラゴン、ビューティージェネレーションとも期待している。ジョイフルトリニティは残念ながらトップフォームにはないね。ヘレンパラゴンはスチュワーズカップを勝った堂々たるマイルG1馬。バリア・トライアルではしんがりだったけど、あれは砂を目に被った影響、調子とは関係ない。順調そのものだ。ビューティージェネレーションは重賞連勝のあと、試金石のトライアルで道中で若いこところを見せたけど差のない3着だ。十分合格点と言える。若馬だけに使い込んでは来ているが元気は一杯。今回は前々走のようにハナ切らせてもこの馬もいいと思っている。自分の競馬に持ち込めればワン、ツー、スリーに入れる。イーグルウェイは相手が強いからなあ。プレース(複勝)の期待かな。

──今年もムーア・デイとなることを期待しています。ありがとうございました。


★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【LONGINES香港国際競走2017】J.モレイラ騎手インタビュー「自信があるからネオリアリズムをチョイス!」

香港国際競走の花、香港カップは日本馬が2連勝中。春のクイーンエリザベス2世カップを制したネオリアリズムが春と同じコンビ、香港の雷神ことJ.モレイラ騎手を配して日本馬3連勝を期します。地元のお手馬を袖にしてまでネオリアリズム騎乗を決めたモレイラ騎手の胸中に迫ります。(取材・文/甘粕代三)


香港カップネオリアリズム
──最も注目を集めている香港カップネオリアリズムに騎乗と発表された時にはびっくりしたよ。

モレイラ どうして?

──お手馬の香港馬、タイムワープはトライアルで2着してるじゃない。

モレイラ タイムワープは力のある馬だ。でも、最も可能性のある馬をチョイスするのはジョッキーの責任。当然のことだよ。

──ということは、ジョアンのチョイスの中ではネオリアリズムが最も勝利に近いということ?

モレイラ その通りだ。モースト・コンフィデント! 最も自信があるからこそ自分でチョイスしたんだ!

──それは何とも頼もしい。でも香港有力厩舎に有力オーナーでもあるタイムワープを袖にしたことは今後に影響しないの?

モレイラ 香港では多くの騎乗馬から最も可能性のある馬をチョイスするのはよくあること。今後に悪影響はないよ。

──さてネオリアリズムのクイーンエリザベス2世カップだけど、見事な騎乗。馬よりもジョアンの勝利という人も多くいるよ。

モレイラ それはネオリアリズムに失礼だよ。馬の力があってこその勝利だ。スタートは理想的とは言えなかったけど、スローペースの中、向こう正面からスパートして思い通りの競馬ができた。忘れられないレースだよ。そして指示通りに競馬をしてくれたネオリアリズムの力も忘れられない。

──同一年に春のクイーンエリザベス2世カップと香港カップを勝ったのは2014年デザインズオンローム、2005年ヴェンジェンスオブレイン、そして99年のフランス馬ジムアンドトニックの3頭だけ。偉業に挑戦することになる。

モレイラ その力は十分にある。

──デザインズオンロームの香港カップはジョアンの騎乗だった。ネオリアリズムと比べてどう?

モレイラ それはレースを見て分かってほしいな。

──さて、相手はどの馬が気になっている?

モレイラ まずはワーザーかな。トライアルもきっちりと勝って復調している。この馬には騎乗したことはないけれど年度代表馬に輝いたシーズンに近づいているじゃない?

──ワーザーに勝てる自信は?

モレイラ 自信があるからこそチョイスしたって言ったじゃないか(笑)!


香港ヴァーズトーセンバジル
──今年も4レースすべてに騎乗。香港カップ以外のことも聞かせてほしい。香港ヴァーズではもう1頭の日本馬トーセンバジルに騎乗する。

モレイラ 香港ヴァーズに出走する中では少なくとも4本の指には入る馬だよ。

──ネオリアリズムと同じで、最も可能性のある馬を選んだ、ということ?

モレイラ そう思ってもらって構わないよ。

── A.オブライエン厩舎のハイランドリールはじめヨーロッパ勢が7頭と大攻勢をかけてきたね。

モレイラ ヨーロッパ勢の力はもちろん認めるけど日本の長距離馬は世界に通用する。それに香港の芝への適性は日本馬の方が上じゃないかな。

──あのハイランドリールをゴール寸前差し切った去年の香港ヴァーズの再現はあり得る?

モレイラ それを目標に騎乗することを約束するよ!


香港マイル】シーズンズブルーム
──次に地元勢の牙城、香港マイル。トライアルはシーズンズブルームで見事に勝利。重賞未勝利ながらあのビューティーオンリーと分け合う1番人気。ジョアン人気だと思ってレースを見ていたが。

モレイラ 実績は劣っていたことは認めざるを得ないけれど、それは明けて5歳(注:南半球馬は8月1日に加齢)になったばかりだから。でも今年春の4歳クラシック三冠では勝てなかったけれど実力は見せていた。だから決して僕だけが1番人気の理由じゃないよ。

──ジョアンが初めて騎乗した昨季閉幕間際、6月の条件戦勝ち。その後オフシーズンの休み明けから1着、2着ときて重賞初勝利がトライアルだからとんとん拍子の大出世だね。レースもジョアンの言う通り実力を見せつけたものだった。

モレイラ 道中の位置取りは決して理想的でなかったけれど、リラックスして走らせられた。残り200mで追い出したんだけど、最高の末脚を繰り出してくれた。

──出走馬中最速の2ハロン(香港は2ハロン=400m計時)22秒55を記録している。あのビューティーオンリーを上回ってるね。

モレイラ 前走2着の後にステップレースをスキップしたことで馬が成長した結果だと思う。本番では香港を代表して海外からの遠征強豪馬にも十分太刀打ちできる実力は備わっている。

──ということは香港マイル王戴冠に自信あり?

モレイラ ここだけの話だけど、今年の4頭の中ではこの馬がベストだ!


香港スプリント】ザウィザードオブオズ
──最後にこちらも地元勢の牙城、香港スプリントのことを聞かせてほしい。ザウィザードオブオズに騎乗するね。強い香港馬が2頭いるけど。

モレイラ ミスタースタニング、ラッキーバブルズのことだろ。2頭が抜けていることは確かに認める。

──ラッキーバブルズには今回、あのボウマンが起用されたしね。

モレイラ でも、こちらも開幕から3戦目が本番と予定通り。3強の一頭であることは忘れないでほしいな。

──秘策あり?

モレイラ 3強の一角であることをレースで示すよ。楽しみにしていてくれ。日本で今年も馬券発売されるんだろ。4レースとも全力で臨むからどうか期待して貰いたい。


★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【LONGINES香港国際競走2017】香港マイル~C.シャム、A.クルーズ調教師インタビュー

世界最強マイラーと謳われたエイブルワンが引退して香港マイル王、すなわち世界マイル王の座はビューティーオンリー、ヘレンパラゴンに譲られましたが、1年もたたぬうちに新星が登場しました。トライアルで重賞初勝利を飾ったシーズンズブルームです。香港馬らしからぬ華奢な馬体ながら末脚は抜群。新たなマイル王へ王手をかけました。ディフェンディング・チャンピオンのビューティーオンリーは今季3戦未勝利ながら、本番に向けて緩やかに上昇曲線を描いています。温厚で誠実な人柄、寡黙なハードワーカーとして知られるシーズンズブルームのC.シャム調教師も今回は強気のコメント。一方、騎手と調教師いずれでもリーディングに輝いた香港競馬のスーパースター、ビューティーオンリーを管理するA.クルーズ調教師は陽気な人柄そのままに本番への手応えを明るく語りました。(取材・文/甘粕代三)

C.シャム調教師(シーズンズブルーム)


──トライアルはゴール前50mで先団を測ったように差し切った。見事な勝利だったね。

シャム ありがとう。会心のレースをしてくれたよ。

──重賞初勝利がマイル・トライアル。香港マイラー陣に新星登場! それどころか本番でも堂々の大本命だよ。

シャム そうおだてないで欲しいな(笑)。

──本当にそうだよ。今季開幕時にはまだクラス1、とんとん拍子の出世じゃないか。

シャム 実は今春の4歳クラシック三冠でも期待していたんだよ。

──1600mのクラシック・マイルが2着、1800mのクラシック・カップが3着、2000mの香港ダービーが4着だった。

シャム 1頭強い馬がいたからねえ。

──香港競馬史上初の4歳クラシック三冠馬、ラッパードラゴン(注:三冠達成後のチャンピオンズマイルで故障発生し予後不良)だね。

シャム 運が悪かった。シーズンズは普段なら一つは勝ってもおかしくないだけの力を持った馬だよ。

──さて、今季の使い始めは開幕日のクラス1(注:オープン特別に相当)。この後にスプリンターズSで5着したブリザードを子供扱いした。

シャム 相手が背負い頭だったけれど、勝因はそれだけじゃなかったってことは、その後の成績が証明してくれただろ。

──そして、国慶節(中華人民共和国の建国記念日)開催のセレブレーションカップへ。ここではビューティージェネレーションに敗れる。

シャム ここで重賞をひとつスキップしてトライアルに直行したい、とオーナーに相談したんだ。馬格のない馬だけに使い詰めで本番に行くのが嫌だったんだ。しかし、トライアル直行だと勝ち負けしないと本番には出られない。危険な賭けではあった。だけどオーナーが快く理解を示してくれた。若馬だけに、ここで一息いれたことが成長を促してくれた。そして、きっちりと結果を出してくれた。ほっとしたよ。

──本番までは中2週となってしまうけど?

シャム トライアルの後も順調そのもの。状態は上昇中。本番にはトップフォームに持っていけるよ。

──あのモレイラ騎乗も頼もしいね。彼にも話を聞いたんだけど、実は国際競走の4頭の中でもシーズンズに最も期待してるって言ってたよ!

シャム そんなこと言ってたのかい。それはまた頼もしい。ところで、日本の馬はどうなの?

──安田記念の勝馬、サトノアラジンかな。日本馬が気になる?

シャム ビューティーオンリー、コンテントメントに勝ってるじゃないか。

──それはそうだけど、香港馬とは勝負付けがついたから気になるってこと?

シャム いやいや、そんなことは……。競馬は何が起こるか分からないものだけれども、自信をもって本番に臨めることは約束するよ。

A.クルーズ調教師(ビューティーオンリー)


──安田記念は残念だったね。

クルーズ 初めての左回りだったので直線で手前を変えられなかったものね。おまけに1分31秒台という香港では考えられない高速馬場で自分の時計を更新しての6着は褒めてあげたい。でも、もう日本に遠征することはないだろう。香港馬の中でも高速馬場向きのビューティーでもやっぱり合わない。

──それはさらに残念だね。さて、今シーズンは昨年と全く同じローテーションで3戦した。

クルーズ このローテーションを歩んで昨年は香港マイルを勝った。ヴィクトリー・ロードだよ。

──でも、去年は2⇒2⇒1着と来て香港マイルで戴冠したけれど、今年は5⇒9⇒4着と昨年の輝きが見られないよ。

クルーズ 安田記念に遠征した疲れもあるだろうから、当初はトライアルまでに1戦のローテーションを組んだんだよ。ところが、年齢的なものなのか馬体が絞り切れなくてね。

──去年が1149ポンドで使いだして1132⇒1137。今年は1156⇒1160⇒1155だね。

クルーズ 成長分もあるとは思うが、明らかに太いんだ。

──これまでの3走の内、2走のパドックを見ているけれど、腹回りが立派すぎると感じたよ。

クルーズ そうだろ。去年のトライアル勝ちが1137ポンド、今年が1155。18ポンド重いんだ。

──でもトライアルの末脚は光ってたね。

クルーズ 今季最低体重だったからだろう。

──そのトライアルの後はどう?

クルーズ ようやく絞れ始めたよ。今の状態は90%くらいと言っていいんじゃないか? 本番までに絞り切る時間は十分あるし、ビシビシ追って運動させて本番には100%に仕上げていくよ。

──自信あり?

クルーズ 去年のウィナーを馬鹿にしない方がいいぜ。

──分かった。それともう日本に来ないなんて言わないでくれよ。

クルーズ ビューティーはもう考えないけど、日本に合いそうな馬がいてね……。

──どの馬?

クルーズ パキスタンスターさ。

──今年春のクイーンエリザベス2世カップでネオリアリズムに迫ったあの馬だね。

クルーズ ゲートに問題があったりして国際競走には間に合わなかったけど、ビューティーよりも日本の馬場に合ってるとみてるんだ。

──それはまたいい話を聞いた。来年が楽しみになった。

クルーズ 来年のことよりも今週の日曜を楽しみにしてくれ。しっかりと仕上げて出走させるから。


★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【LONGINES香港国際競走2017】香港スプリント~J.サイズ、K. ルイ調教師インタビュー

日本勢8頭も勢ぞろいし、香港では国際競走の興奮と期待が一段と高まり、海外強豪を迎え撃つ地元、香港勢も調整を続ける海外馬を前に闘志を熱く燃えたぎらせています。今日から3回に分けて地元、香港有力馬の調教師、騎手のインタビューお届けします。そのトップバッターは世界一のレベルと層を誇る香港スプリント陣営から1、2番人気が予想されるミスタースタニングのJ.サイズ調教師とラッキーバブルズのK.ルイ調教師です。トライアルでは明暗を分けた両陣営。重賞連勝の勢いを駆って初の香港スプリントを狙うサイズ師が静かに語れば、普段は物静かなルイ師は雪辱を熱く語りました。(取材・文/甘粕代三)

J.サイズ調教師(ミスタースタニング)


──4頭出しの大攻勢だったトライアルは3着まで独占したばかりか、5着にザウィザードオブオズとあわや4連単まで独占という快挙でした。

サイズ 素晴らしい結果だった。大いに満足しているよ。

──サイズ厩舎は香港スプリントをこれまで勝っていません。香港競馬七不思議の一つに入るほど不思議なこと、今回はこの不思議を解消できますね?

サイズ そんな七不思議なんて聞いたことないね(笑)。たまたま巡り会わせでそうなってるだけだよ。不思議だか何だか知らないけれど、競馬をする以上勝つことが大目標。そうなることを願っている。

──間違いなく1番人気に推されるであろうトライアルの勝ち馬、ミスタースタニング。トライアルの後も順調に上昇ですか?

サイズ 上昇って?

──もちろん状態のことですよ。

サイズ キープだね。

──キープですか?

サイズ そう、キープだね。

──数字で言えば、どのくらいになりますか? 100%で本番?

サイズ 100%って何が?

──状態ですよ。

サイズ まだ何か言わせたいのか? 1日のバリア・トライアルを見ただろ。それが全てさ。ミスターの走りをどう見た?

──持ったままで5着。気合も十分のってキープどころか前走以上の出来と見ました。

サイズ そう。そう見えたかい(微笑)君たち、ジャーナリストの仕事は自分の眼で確かめた事実を大事にすることじゃないのかい? 君のその見立てをそのまま伝えて貰っていいんじゃないかな。

──トライアルに続いて上位独占もあり、ですね?

サイズ 本番でも再現したいものだね。

──その可能性は何%?

サイズ また、それかい。それを目標に細心の注意を払って4頭の調整を進めるよ。

K.ルイ調教師(ラッキーバブルズ)


──トライアルは実に残念なレースでした。

イ 本当にその通りだね。最内枠が災いしたという人もいるけれど、それだけじゃない。少なくても4回の不利をこうむっている。1200mのレースでは1回の不利だって取り返しのつかない致命傷になる。それが少なくても4回だ。あんな騎乗はあり得ない。

──本当に不利の連続でした。

イ ザック・パートンはジョアン・モレイラと並ぶ香港のトップジョッキーなんだろ。だとしたら、あれはトップジョッキーの騎乗ではない。

──それで今回はあのヒュー・ボウマンを起用したのですね。

イ そうだ。ジャパンカップのボウマンの騎乗を見ただろ。

──東京競馬場で見てましたよ。素晴らしい騎乗でした。

イ そう。素晴らしい騎乗だったよね。馬ももちろん強かったんだろうけど、あれこそパーフェクト。流石に今年のジョッキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるだけのことはある。彼ならトライアルのような競馬をすることは100%ない。金輪際、パートンにラッキーを預けることはない。今後はボウマンに騎乗してもらう。

──しかし、そうは言ってもボウマンは香港での騎乗経験は豊富ですが、オーストラリアがメーンですよ。

イ ジョッキークラブに申請すれば1日だけの騎乗だって可能だし、ラッキーバブルズにボウマンがそれだけの価値を認めてくれるよ。

──さて大きな不利をこうむった馬は足元を痛めることもありますし、往々にして精神的なダメージを受けることがあります。ラッキーバブルズは大丈夫ですか?

イ 馬体は全く心配ないし、精神的なダメージは全く受けていない。

──状態はいかがですか?

イ 前走は90%くらいの仕上げ。馬は100%仕上げてはいけない。今は90%以上の状態をキープしているという感じかな。本番までには上積みもある。

──雪辱は十分可能ですね?

イ こちらは春のスプリント王(チェアマンズ・スプリント・プライズ)。だからトライアルで(ミスターよりも)5ポンド余計に背負わされた。本番では同じ斤量だし、春のチェアマンズ・スプリント・プライズで悲願のG1制覇に導いてくれたボウマンに手綱が戻るんだ。馬の状態もそうだし、それ以外の周辺環境もよくなる。

──雪辱へ視界良好ですね。

イ 心配なのは枠順だけ。包まれやすい内枠は避けたい。内、外を見ながらレースを進められる真ん中の枠を引きたい。それだけだよ。


★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【LONGINES香港国際競走2017】Road to HKIR⑩~香港有力馬が続々最終追い切り!バリア・トライアルで状態チェック

暦も12月に変わり、香港国際競走(HKIR)がいよいよ6日後に迫りました。日本馬の内6頭は11月30日夕方、無事にシャティン競馬場に到着。1コーナー奥の検疫厩舎で調整が始まりました。また香港の街中にはHKIRの大きな看板が掛けられ、日に日に興奮が高まります。大舞台となるシャティン競馬場には先週日曜の開催後、芝コースに仮柵が置かれ、3日の競馬は10レース中2レースだけが芝、と本番に備えて芝を保護しています。そんな中の1日午前、HKIR香港の主役たちが続々と姿を現し、バリア・トライアルという実戦形式の最終追い切りに臨みました。このトライアルの動画は日本からも香港ジョッキークラブのホームページで閲覧できます。日本では香港馬の情報が乏しいことでしょうから、その方法と今朝の様子を今日はお伝えします。

バリア・トライアル(中国語:試閘)は地方競馬の能力検定のようなものですが、香港では騎手が勝負服を着て追い切ります。正に実戦形式の最終追い切りです。JRAでも最終追い切りには騎手が騎乗しますが、騎手が騎乗すると競走馬はレースが近いことを知る、とよく言われます。バリア・トライアルもそうした馬の生理に根差したものと言えます。長期休養明けにバリア・トライアルを重ねることもありますし、キャンター主体で調整を続けてきた馬が最後にバリア・トライアルで仕上げるケースもあります。基本的に毎週火曜と金曜の2回、その時のノミネート馬に応じて何組かに分かれて行われます。

さて1日は4組に分かれて39頭がバリア・トライアルを行いましたが、その中にはHKIR4レース中、香港スプリント香港マイル香港ヴァーズの3レースに選出された9頭がいて、スプリント・トライアル、マイル・トライアル2着のマイルG1ウィナー、ヘレンパラゴンなども含まれていたのです。本番まで10日となった1日のバリア・トライアルですので、これは正真正銘の最終追い切り。馬券検討には不可欠の情報です。スポーツ新聞など日本の競馬メディアは来週水曜(12/6)に香港到着がほとんどですから、来週のスポーツ新聞がこの重要な情報を報じることはまずなかろうと思います。ウマニティ会員の皆様だけにお知らせする決定的情報を以下の表にまとめましたので、まずはご覧下さい。


百聞は一見に如かず、とか。私は活字メディアと映像メディアの両方で禄を食んできましたが、映像の力は絶大なものがあることは身を以て知っています。上の表は居合抜きのようなもので、自分の意中の馬がどのような状態なのか全く窺い知ることはできません。しかし、香港ジョッキークラブ(HKJC)のホームページは大変な優れもので、このバリア・トライアルから通常の追い切りまで映像が見られるばかりか、追い切り時計などもデータとして閲覧できるのです。こんなホームページがあったら、どれだけ競馬との距離を縮め、当たり馬券に近づけることでしょうか?香港の競馬ファンが羨ましくてなりません。

<バリア・トライアルの動画視聴方法>
香港ジョッキークラブ(HKJC)のホームページ
http://www.hkjc.com/english/press/btrs.asp
※レース名選択(01~04)で、成績、動画リンクページが表示されます。

HIIR4レースはおおむね半分を地元香港馬が占めます。そして、スプリントとマイルは圧倒的に地元香港馬が優勢。特にこの2レースではホームページ情報が重要になるのは間違いありません。ウマニティ会員の皆さん、HKJCホームページを本番までの残り少ない時間、寸暇を惜しまず隅から隅まで、ず、ず、ずい~と御覧じろ!当たり馬券のヒントは必ず隠されています。


★3/26ドバイターフで3連単162,710円を見事的中させた”日本と香港を股にかけて活躍する”海外プロ甘粕代三プロが、海外馬券販売レースの香港国際競走(HKIR)4レースの予想提供をいたします。当日の予想にご期待ください。


甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。
中国留学中に香港競馬を初観戦、94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を日本から香港に。
香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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過去10年の結果 ~香港ヴァーズ 2017~

開催日 勝ち馬 性齢 調教国 タイム 騎手 調教師
2016/12/11 サトノクラウン 牡4 日本 2:26.2 J.モレイラ 堀宣行
2015/12/13 ハイランドリール 牝3 アイルランド 2:28.43 R.ムーア A.オブライエン
2014/12/14 フリントシャー 牡4 フランス 2:29.83 M.ギュイヨン A.ファーブル
2013/12/08 ドミナント 牡5 香港 2:27.29 Z.パートン J.ムーア
2012/12/09 レッドカドー セン6 イギリス 2:28.73 G.モッセ E.ダンロップ
2011/12/11 ドゥーナデン 牡5 フランス 2:27.50 C.ウィリアムズ M.デルザングル
2010/12/12 マスタリー 牡4 UAE 2:27.69 L.デットーリ S.ビン・スルール
2009/12/13 ダリヤカナ 牝3 フランス 2:27.51 G.モッセ A.ド・ロワイエ=デュプレ
2008/12/14 ドクターディーノ 牡6 フランス 2:29.14 O.ペリ R.ギブソン
2007/12/09 ドクターディーノ 牡5 フランス 2:28.2 O.ペリ R.ギブソン

歴史・概要 ~香港ヴァーズ 2017~

香港ヴァーズは香港競馬年度シーズンの最初の中長距離路線のGI競走。香港では2000m以上の競走があまり日程に組み込まれていないため、ヨーロッパなど他地区の競走馬が地元勢を圧倒する事が多く見られる。1994年に国際リステッドとして【香港国際ヴァーズ】の名称で創設され、2000年に【香港ヴァーズ】に改称された。
開催時期の影響もあり、一線級の日本調教馬は、ほとんど有馬記念香港カップへ向かう傾向にあり、賞金などの理由で有馬記念に出走できない馬の挑戦が多い。日本馬ではステイゴールド(2001年)、サトノクラウン(2016年)、グローリーヴェイズ(2019、2021年)、ウインマリリン(2022年)が優勝している。

挑戦した日本馬 ~香港ヴァーズ 2017~

ステイゴールド 1着/香港ヴァーズ(2001年)
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血統
父:サンデーサイレンス
母:ゴールデンサッシュ
成績
50戦7勝
7億6299万+120万USドル+800万香港ドル
主な勝ち鞍
香港ヴァーズ(GI)
ドバイシーマクラシック(GII)
目黒記念(GII)
日経新春杯(GII)
引退レースで掴んだ金メダル

 現在は3冠馬オルフェーヴルを輩出するなどトップサイアーとして活躍しているステイゴールド、その現役時代は決して平坦な道のりではなかった。2歳の12月にデビューし、5戦目で初勝利。その後2勝を条件戦で挙げるも京都新聞杯、菊花賞では見せ場なく敗退した。しかし、年が明けるとステイゴールドのその秘めた素質が徐々に花開く。天皇賞春(GI)で10番人気の低評価ながら2着に入ると宝塚記念(GI)2着、天皇賞秋(GI)2着、有馬記念(GI)3着、その翌年も宝塚記念(GI)3着、天皇賞秋(GI)3着と第一線で活躍。
 その実力は誰もが認めていたが、GIIでも勝ちきれない善戦マンという印象が強く、池江泰郎調教師は主戦の熊沢騎手から武豊騎手へ乗り代わりの決断を下し、目黒記念(GII)へ出走。2年9ヶ月ぶりの勝利を飾った。レース後、武豊騎手は「クラシック並の大拍手だった」と語るほど多くのファンが歓喜したレースであった。その翌年、日経新春杯(GII)で重賞2勝目を挙げたステイゴールドはドバイシーマクラシック(GII)に出走。12番人気の低評価であったが、前年のワールドシリーズ王者ファンタスティックライトを競り落とし、大金星を挙げた。
 その後も国内レースに出走するも勝ちきれず、迎えた引退戦、香港ヴァーズ。これまで49戦し、GI未勝利のステイゴールドがついに報われる。レースでは後方でじっと脚を溜め、直線勝負へ。残り200mの時点で先頭馬と5馬身以上あり、厳しい展開であったが、1完歩ごとに差を詰め、「まるで背中に羽が生えたようだった」と武豊が語る鬼脚で初GI制覇を引退戦で飾った。同レースは競馬史に残るドラマチックレースに数えられ、多くのファンの語り草になっている。

施行年馬名性齢騎手調教師着順
2022年ウインマリリン牝5D.レーン手塚貴久1着
グローリーヴェイズ牡7J.モレイラ尾関知人3着
2021年グローリーヴェイズ牡6J.モレイラ尾関知人1着
ステイフーリッシュ牡6C.ホー矢作芳人5着
2019年グローリーヴェイズ牡4J.モレイラ尾関知人1着
ラッキーライラック牝4C.スミヨン松永幹夫2着
ディアドラ牝5O.マーフィー橋田満4着
2018年リスグラシュー牝4J.モレイラ矢作芳人2着
クロコスミア牝5岩田康誠西浦勝一10着
2017年トーセンバジル牡5J.モレイラ藤原英昭3着
キセキ牡3M.デムーロ角居勝彦9着
2016年サトノクラウン牡4J.モレイラ堀宣行1着
ヌーヴォレコルト牝5岩田康誠斎藤誠4着
スマートレイアー牝6武豊大久保龍志5着
2014年カレンミロティックセン6池添謙一平田修5着
2013年アスカクリチャン牡6岩田康誠須貝尚介7着
2012年ジャガーメイル牡8D.ホワイト堀宣行2着