2016年12月11日()シャティン競馬場 芝2400m

レース結果 ~香港ヴァーズ 2016~

  • 出走予定馬
  • 出馬表
  • レース結果



馬名 性齢 負担重量
(kg)
騎手 調教師 オッズ 人気
1 4 9    サトノクラウン 牡4 57.0 J.モレイラ 堀宣行 11.4 4
2 1 10    ハイランドリール 牡4 57.0 R.ムーア A.オブライエン 1.3 1
3 7 4    ワンフットインヘヴン 牡4 57.0 C.スミヨン A.ドゥロワイエデュプレ 10.7 3
4 13 12    ヌーヴォレコルト 牝5 55.5 岩田康誠 斎藤誠 11.9 5
5 14 13    スマートレイアー 牝6 55.5 武豊 大久保龍 21.0 6
6 10 11    ベンジニ セ7 57.0 R.マイヤーズ A.ブル 277.3 13
7 6 8    ガルリンガリ セ5 57.0 S.パスキエ C.バランドバルブ 170.8 12
8 8 14    ケシュア セ6 57.0 B.ヴォルスター P.ショー 366.9 14
9 9 5    フレイムヒーロー セ7 57.0 Z.パートン L.ホー 87.9 10
10 11 2    イースタンエクスプレス セ4 57.0 S.デソウサ J.サイズ 71.1 9
11 3 7    ビッグオレンジ セ5 57.0 D.レーン M.ベル 29.3 7
12 2 1    シルバーウェーヴ 牡4 57.0 M.ギュイヨン P.バリー 9.5 2
13 5 6    ヘレンハッピースター セ5 57.0 H.ボウマン J.ムーア 43.8 8
14 12 3    アンティシペーション セ5 57.0 N.カラン A.クルーズ 147.6 11

■払戻金

単勝4 1,140円
複勝4 200円
1 110円
7 170円
馬連1-4 940円
ワイド1-4 360円
4-7 1,110円
1-7 220円
馬単4-1 3,190円
3連複1-4-7 1,760円
3連単4-1-7 17,250円

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※レース結果・払戻金・オッズなどのデータは、必ず主催者(JRA)発行のものと照合してください。

最新出走予定馬情報 ~香港ヴァーズ 2016~

 【香港11日=藤沢三毅、川端亮平】第23回香港ヴァーズ(GI、3歳以上、芝・右2400メートル、定量、1着賞金940万5000香港ドル=約1億4108万円、14頭立て)香港国際競走のトップを切って行われた香港ヴァーズ(GI、芝2400メートル)では、日本のサトノクラウンが優勝。断然人気のハイランドリールを差し切る大金星で、初のGI制覇を果たした。堀調教師は日本人として初めて、海外GIを同日に2勝する快挙。また、国内での売り上げは38億円強となり、改めてファンの注目度の高さを印象付けた。

 世界のトップホースを破る大金星だ。日本の4歳馬サトノクラウンが、圧倒的人気のハイランドリールを差し切り、GI初制覇。殊勲のモレイラ騎手は誇らしげに、ファンの大声援に応えた。

 「追い切りの動きがすごく良かったので、自信を持って乗れた。ハイランドリールが余裕で走っていたが、捕まえられる手応えがあった」

 世界を代表する名手2人の壮絶な叩き合い。ムーア騎手を背にハイランドリールが逃げ込みを図るところに、ただ1頭、襲いかかったのがサトノクラウンだった。中団から一完歩ごとに接近。連覇目前だった相手を半馬身差で捕らえた。

 日本馬の香港ヴァーズVは2001年のステイゴールド以来、2頭目。そのときのレースを思い起こさせるように、欧州の強豪をゴール手前で劇的に差し切った。

 「夢がかなった。世界トップクラスのレースを勝ててうれしい」。華麗な“マジック”で、このレースを初めて制した名手は笑みを浮かべた。

 堀調教師は香港カップモーリスでV。同日に海外GI2勝は日本の調教師として初めてで、香港国際競走を同日に2勝した国外調教師も史上初の快挙だ。「馬が頑張ってくれたし、ジョッキーも上手に乗ってくれた結果なのでたまたま」と謙遜したが、改めてその存在を世界へ知らしめた。

 偉大な先輩がターフを去り、“世界の”サトノクラウンにかかる期待は大きい。来年以降は日本の看板馬として、中長距離路線をリードしていく。 (藤沢三毅)

 ◆ムーア騎手(ハイランドリール2着) 「よく走ってくれた。負けたことには落胆しているが、勝ち馬はいい馬だ」

【香港ヴァーズ】外枠に泣く…ヌーヴォ4着、レイアー5着12月12日(月) 05:08

 第23回香港ヴァーズ(GI、3歳以上、芝・右2400メートル、定量、1着賞金940万5000香港ドル=約1億4108万円、14頭立て)ヴァーズでは2頭の大和なでしこも奮闘した。米国から転戦したヌーヴォレコルトは最後方から猛然と伸びて4着。岩田騎手は「外枠でなかなか内に潜り込めませんでした。直線は盛り返してくれただけに悔しいです」と12番枠を嘆いたが、斎藤誠調教師は「けがなく戻ってきましたし、いいレースだったと思います」と愛馬をたたえた。

 2400メートルが未経験だったスマートレイアーもやはり外枠(13番枠)だったが、しぶとく粘って5着。武豊騎手は「ベストの距離ではありませんでしたが、頑張りました。シャティンの馬場は合いますね」と低評価を覆す健闘を評価した。

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香港国際競走売り上げ合計38億円!カップが19億円12月12日(月) 05:07

 JRAの海外馬券発売第4弾となった香港国際競走の売り上げ総額は、38億2070万6800円だった。内訳はヴァーズ4億8756万900円、スプリント5億5326万200円、マイル8億9661万8800円、カップ18億8326万6900円。

 第1弾として注目された10月2日の仏GI凱旋門賞の売り上げは41億8599万5100円で、これにはおよばなかったが、改めて海外競馬に対するファンの注目度が明らかになった形だ。

 今後の海外馬券発売は来年3月25日のドバイ国際諸競走か、近年日本馬が遠征している3~4月豪州のGI開催になるとみられる。

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【香港国際競走】モーリス、ラストラン!4レースのゴール写真12月11日() 19:30

香港カップ
モーリス(日本)


香港マイル
ビューティーオンリー(香港)


香港スプリント
エアロヴェロシティ(香港)


香港ヴァーズ
サトノクラウン(日本)


撮影者:酒井章子 Ayako Sakai

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【香港ヴァーズ】サトノクラウン大金星!GI初制覇12月11日() 15:12

 11日に香港シャティン競馬場で行われた第23回香港ヴァーズ(GI、3歳以上、芝・右2400メートル、定量、1着賞金940万5000香港ドル=約1億4108万円、14頭立て)は、J.モレイラ騎手騎乗のサトノクラウン(牡4歳、美浦・堀宣行厩舎)が後方10番手追走から、馬群を割って追い上げ、逃げ込みを図るハイランドリールをゴール寸前で差し切って初のGIタイトルを手にした。タイムは2分26秒22(良)。

 2着には半馬身差でハイランドリール、さらに6馬身3/4遅れた3着に追い込んだワンフットインヘヴン。ほかの日本馬2頭の着順は、ヌーヴォレコルトが4着、スマートレイアーが5着。

 香港ヴァーズを勝ったサトノクラウンは、父マルジュ、母ジョコンダII、母の父ロッシーニという血統。通算成績は11戦5勝。2015年の2冠馬ドゥラメンテのステーブルメイトで、日本ダービーの3着馬。重賞勝ちは2014年東スポ杯2歳S・GIII、2015年弥生賞・GII、2016年京都記念・GIIに次ぐ4勝目。

 香港ヴァーズの日本馬による優勝は、2001年のステイゴールドに次ぐ2頭目。

〈日本馬のレース後コメント〉

◆1着 サトノクラウン J.モレイラ騎手「レースの前は大きなチャンスがあると思っていて、その通りうまくいきました。序盤はシルバーウェーヴを追いかけたことでうまく進路があき、走り抜けることができました。直線入り口では多くの馬が前にいましたが、先頭に立てる自信は常にありました」

◆4着 ヌーヴォレコルト 岩田康誠騎手「状態は良かったのですが、外枠でなかなか内にもぐり込めませんでした。最後の直線は最後方から盛り返してくれただけに悔しいです」

◆5着 スマートレイアー 武豊騎手「2400メートルはベストの距離ではありませんでしたが、頑張りました。馬の状態は非常に良かったです。シャティン競馬場の馬場は合いますね。またこの場に戻って来たいです」

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【香港ヴァーズ】最新ナマ情報(日本馬)12月11日() 07:39

 (4)サトノクラウンは、AWコースを気持ちよさそうに駆け抜けた。堀調教師は「走りたい気持ちになっていると思う。追い切り後も状態はいい」と前走からの巻き返しに期待している。

 昨年は香港Cで2着だった(13)ヌーヴォレコルトは、AWコースを1周した。「気持ちは前向きになっているし、抑え切れないくらいの手応えだった。ゴール前でも自分でハミを取っていたし、とてもいい状態」と斎藤誠調教師に不安の色はない。

 (14)スマートレイアーは、AWコースで軽くしまいを伸ばした。「気合が乗りつつ、リラックスもできている。順調にここまできたので、いいレースができると思う」と加藤助手。

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【香港ヴァーズ】世界の壁ハイランドリール12月10日() 13:29

 連覇を狙うハイランドリールは、R・ムーア騎手&A・オブライエン調教師の世界最強タッグだ。今年は英GI“キングジョージ”、米GIブリーダーズCターフを快勝し、仏GI凱旋門賞でも僚馬ファウンドの2着とさらに力をつけている。「遠征には慣れているし、シャティンに着いたときも、すぐにどこにいるのか分かったようだ。状態は良く何も心配していない」と、キーティング厩舎長は自信を見せている。

 地元・香港の代表格はフレイムヒーロー。前走・Jクラブカップはシークレットウェポン(カップに出走)の2着で、鞍上には腕達者のパートンを据えてきた。「今の調子は最高だね。カップだと相手が強すぎるのでこちらへ。GI初勝利も夢ではない」とホー調教師は強気だ。

 日本からは3頭がチャレンジする。ヌーヴォレコルトは米GI・BCフィリー&メアターフで完敗したが、すぐさまGIIIレッドカーペットHで威厳を取り戻した。昨年の香港カップエイシンヒカリの2着になっており、シャティンの適性は折り紙つきだ。「追い切りは予定どおりにできたし、落ち着きもある。カイバをしっかり食べていてピークの状態です」と、小原助手は好調を伝える。

 スマートレイアーは初の2400メートルが焦点になりそうだが、「舌を縛った効果か、追い切りでは折り合いがスムーズで、反応も良かった。引き続き状態はフレッシュ」と、加藤助手は前向きだ。

 サトノクラウンは今春のクイーンエリザベスIICに続く香港。重馬場の京都記念を勝ったように力を要する馬場はいい。「香港は2度目で、落ち着いて調教できている。予定どおり順調です」と堀調教師。(夕刊フジ)

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【香港ヴァーズ】短評12月10日() 10:38

(1)ハイランドリール 昨年の覇者。今年は一段と力をつけているが、昨年と違って3月のドバイから休みなくきている点が鍵

(2)シルバーウェーヴ 実績からは好勝負が可能だが、大敗後で…

(3)ビッグオレンジ 二四の英GII2勝馬だが、本質的には三千以上向き

(4)サトノクラウン 能力は高いが、アテにならないタイプ。距離も少し長い

(5)ヘレンハッピースター 昨年、同じ舞台でのローカルGIIIを逃げ切っているが、国際GIでは力不足

(6)ガルリンガリ GIは善戦止まり。久々の不利も

(7)ワンフットインヘヴン 出遅れての凱旋門賞6着は評価できる。初の外国遠征がポイント

(8)ケシュア 4歳限定のローカルGIシンガポールダービー(二千)馬だが、国際GIでは力量不足

(9)フレイムヒーロー 二四は1戦して9着。勝利も千八まで

(10)ベンジニ GIで2着が1度あるが、昨年10月のレース。年齢的に上がり目は期待薄

(11)イースタンエクスプレス Gレース未勝利。二千超のレースも初出走

(12)アンティシペーション 距離適性はありそうだが、Gレース未勝利

(13)ヌーヴォレコルト 昨年の香港C2着。二四も問題ないが、米国経由という日本馬としては異例の出走パターンがどう出るか…

(14)スマートレイアー 折り合いが難しいタイプ。距離経験も二二までで、流れに乗れるか不安

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【香港国際競走】堀師、リアリズムとモーリスでダブルV自信12月10日() 05:03

 【香港9日=川端亮平】香港国際競走(11日、GI、シャティン)に出走する日本馬で、唯一の金曜追いとなった香港マイル(芝1600メートル)のネオリアリズムが、芝コースで軽快な動きを見せた。また、今夏に短期免許を取得して日本で騎乗したカリス・ティータン騎手(26)=モーリシャス出身、香港拠点=の直撃取材に成功。昨年の香港リーディング3位の勝負師に、地元勢の見立てを聞いた。

 モーリスだけに主役を任せてはいられない。大挙13頭が参戦する日本馬の“大トリ”で、モーリスと同厩舎、同世代のネオリアリズムが追い切りを行った。

 実戦でもコンビを組むムーア騎手を背に、シャティン競馬場の芝コースで単走追い。馬なりで軽くしまいを伸ばし、4ハロン55秒1-ラスト2ハロン24秒2を計時した。鞍上はいつものクールな表情のまま「『調整は日本で済んでいるから、感触を確かめてもらえればいい』という指示だったので、無理せずに軽めに調教しました。状態は良さそうです」と振り返った。

 ヴァーズのサトノクラウンも含めて3頭を香港に送り込む堀調教師は、「チークピーシズを着けて追い切った。香港は初めてで最初はテンションが高く、環境に慣れるのに時間はかかったが、いい感じにきています」と手応えを口にする。

 札幌記念では現実にモーリスを打ち負かし、GI初挑戦だったマイルCSでも0秒1差の3着と地力強化をアピール。昨年の豪GIジョージライダーSを勝った半兄リアルインパクトに続く、兄弟での海外GI制覇を狙う。

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【香港国際競走】地元の名手ティータン直撃12月10日() 05:02

 これまでの取材では、ヴァーズ&カップの中距離戦が外国馬中心、マイル&スプリントの短距離戦が地元勢有利、という声が多かった。馬券的妙味は、混戦必至の短距離戦の方がありそうだ。

 早朝からシャティンに張り込んでいると、ティータン騎手を発見。昨年の香港リーディング3位の実力者に突撃し、まずはスーパージョッキーで参戦するスプリントの見立てを聞いた。

 「エアロヴェロシティは8歳で上積みがないと思う。ペニアフォビアも去年の状態にはないようだ。ノットリスニントゥーミーは前回、いろいろ恵まれた感じ」と、過去2年&前哨戦の勝ち馬をバッサリ斬り、「ラッキーバブルズが強いだろう。日本馬がいて流れが速くなりそうなのも、差し馬には追い風だね」とジャッジした。

 マイルについてはエイブルフレンドを「ムーア調教師がメイチに仕上げて、状態が上がっているみたい」と評価。7日に指揮官を直撃取材した時点では「まだ100%ではない」としていたが、見解は違うようだ。

 ナイスガイの勝負師から得た貴重な情報を加味しながら、しっかりともうけて帰りたい。

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厳選コラム ~香港ヴァーズ 2016~

ラストは香港カップ

(1)エイシンヒカリ
言わずと知れた、昨年の優勝馬。1年前の香港カップ(GⅠ)では単勝38倍の9番人気という低い評価も味方にして、楽々と逃げ切りを決めた。今年5月にフランスのイスパーン賞(GⅠ、芝1800m)で2着ダリヤンに10馬身差をつけて圧勝したことにより、今年の香港カップ出走メンバーでは最高レーディングの129を得ている。レースの中心的存在と見られているモーリスに他馬のマークが集まるようなら、昨年の再現も望めるだろう。

(2)モーリス
昨年の年度代表馬が、今年は5月に香港でのチャンピオンズマイル(GⅠ)、前走の天皇賞・秋(GⅠ)に優勝。目下のところ国内はもとより、アジア地域のマイルと芝2000m路線のトップに君臨していると言っても過言ではない。鞍上R.ムーアとのコンビは2歳時に京王杯2歳S(GⅡ)での着外があるものの、同馬が本格化した昨年以降ではGⅠで3戦3勝と抜群の成績を収めている。

(3)デザインズオンローム
13/14年シーズンの香港年度代表馬で、香港ローカルを含めてGⅠで6勝を挙げている。2014年の香港カップ(GⅠ)では、ほぼ最後方の位置からラスト400mを22.19秒の豪脚で差し切ったように、鋭い末脚が最大の武器。9月からの今シーズンは初戦シャティントロフィー(GⅡ)をトップハンデ133ポンド(約60.5キロ)で勝利したが、前走のジョッキークラブC(GⅡ)ではまったくいいところなく最下位の9着に大敗した。

(4)ブレイジングスピード
ステファノスを破った昨年のクイーンエリザベス2世C(GⅠ)などGⅠは4勝(香港ローカルを含む)。9月からの今シーズンは初戦シャティントロフィー(GⅡ)がデザインズオンロームと同じトップハンデで2着、前走のジョッキークラブC(GⅡ)は直線でいったんは2番手まで上がったものの、差し馬に交わされて5着に終わった。ただし、ジョッキークラブCの斤量もブレイジングスピードとデザインズオンロームの2頭だけが、1年以内にGⅠを勝っている馬に課せられる5ポンド(約2.5キロ)を、他馬より余計に背負わされていたことは無視できない。

(5)ステファノス
前走の天皇賞・秋(GⅠ)では昨年の2着に続いて3着と好走した。香港には昨年2度遠征し、12月の香港カップ(GⅠ)では10着に大敗したが、4月のクイーンエリザベス2世C(GⅠ)では2着に入っている。国内外を含めて芝2000mは勝ち鞍こそないが、ベストの距離と言えるだろう。キャロットクラブの勝負服でエピファネイアをジャパンC優勝に導いたC.スミヨンが鞍上なら、プラスアルファの部分を引き出す可能性も十分にある。

(6)ラブリーデイ
昨年のこの時期は重賞4連勝で天皇賞・秋(GⅠ)に優勝し、ジャパンC(GⅠ)でも3着と、まさに充実期にあったが、その反動からなのか、今年はここまで5戦して10月の京都大賞典(GⅡ)での3着が唯一の馬券圏内と低迷している。香港に遠征した4月のクイーンエリザベス2世C(GⅠ)では、渋った馬場が影響したこともあり4着に敗退した。

(7)ガンピット
昨年のチャンピオンC(GⅠ)で来日したように、香港ではオールウェザーを得意とし(7戦7勝)、ダートではドバイでも今年3月にドバイワールドC(GⅠ)の前哨戦マクトゥームチャレンジラウンド3(GⅠ)で2着の実績を残している。ただし、芝の重賞では今年6月の香港ローカル重賞プレミアプレート(香GⅢ)での4着が最高着順。芝のトップクラスに入ると一枚落ちる感は否めない。

(7)シークレットウェポン
香港カップの前哨戦にあたる11月20日のジョッキークラブC(GⅡ)の優勝馬。今年2月のセンテナリーヴァーズ(香GⅢ、芝1800m)以来の重賞2勝目で、重賞勝ちはどちらも道中7番手から直線で末脚を爆発させての勝利だった。今シーズンの馬体重は1160ポンド(約525キロ)台と、昨シーズンよりひと回り増えた印象で、好調をうかがわせる。

(9)エリプティク
フランスの名門A.ファーブル厩舎の所属馬で、2歳時にコンデ賞(GⅢ、芝1800m)、4歳時にヴィシー大賞(GⅢ、芝2000m)を制している。今年7月にドイツのダルマイヤー大賞(芝2000)でGⅠ初制覇。同レースにはジャパンC出走のイキートスも出走しており、4着だった。その後は9月11日のフォワ賞(GⅡ)がシルバーウェーヴの3着、11月6日にイタリアのローマ賞(GⅠ)で3着。今年は5戦して2勝、2着1回、3着2回とすべて3着以内に入っている。

(10)ホースオブフォーチュン
香港移籍前は南アフリカで走り、ポリティシャンS(GⅢ、芝1800m)2着の実績を残している。香港での初めての重賞出走となった今年4月のクイーンエリザベス2世C(GⅠ)は11着。さすがにトップクラスの壁にはね返されたが、今シーズンに入って前走ササレディースパース(GⅢ)に勝利し、香港での3度目の重賞挑戦で初タイトルをつかんでいる。

(11)ヘレンスーパースター
ラインズオブバトルの名前でアイルランドのA.オブライエン厩舎からデビューした、2013年のUAEダービー(GⅡ)の勝ち馬。その後に香港へ移籍して現在の名前に改名された。香港では昨年5月の香港チャンピオンズ&チャターC(GⅠ、芝2400m)に勝っており、昨年と同じく香港ヴァーズ(GⅠ)に出走してくるとみられていたが、一昨年5着だった香港カップ(GⅠ)に挑戦してきた。

(12)クイーンズリング
今年春までは芝1400mの重賞で2勝。秋初戦の府中牝馬S(GⅡ)を快勝し、前走のエリザベス女王杯(GⅠ)で悲願のGⅠ制覇を果たした。その後に香港カップに追加登録。エリザベス女王杯からのローテーションは同じ社台ファームの生産馬で、昨年の香港カップ2着ヌーヴォレコルトと共通する。

★香港国際競走 出走馬全頭の短評コラム一覧
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香港ヴァーズ~出走馬全頭の短評
香港スプリント~出走馬全頭の短評
香港マイル~出走馬全頭の短評
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藤田将大プロの香港国際競走予想一覧はこちらから。
※予想は12/11(日)午前中公開の予定です。

【香港国際競走】香港マイル~出走馬全頭の短評

今度は香港マイル

(1)エイブルフレンド
2014年の香港マイル(GⅠ)の優勝馬で、当時は翌年5月のチャンピオンズマイル(GⅠ)まで4つのGⅠを含む重賞6連勝と、香港で無敵を誇っていた。その後に英国のクイーンアンS(GⅠ)でソロウの6着に敗れたあと、昨シーズンはプレミアボウル(香GⅡ)に勝利したが、ジョッキークラブマイル(GⅡ)で3着、昨年の香港マイルモーリスの3着に連敗し、右前脚の屈腱炎により休養。11カ月ぶりとなった前走は香港スプリントの前哨戦にあたるジョッキークラブスプリント(GⅡ)で4着だった。休み明けをひと叩きされて、どこまで復調してくるか。

(2)コンテントメント
今年2月のクイーンズシルヴァージュビリーC(GⅠ、芝1400m)でGⅠ初制覇を果たし、5月のチャンピオンズマイル(GⅠ)では3番手から粘ってモーリスの2着に好走した。日本のファンには最下位12着に敗れた6月の安田記念(GⅠ)の印象が強いと思うが、マイナス21キロの馬体重が示すとおり、調子を崩していたのは明らかで参考外。今シーズンはここまで3戦して5、10、4着。好位でレースを運ぶこの馬らしい競馬はできている。

(3)ロゴタイプ
6月の安田記念(GⅠ)は田辺騎手の巧みなペース配分でまんまと逃げ切り、3年ぶりのGⅠ制覇。モーリス以下を完封しての鮮やかな復活劇だった。前走の天皇賞・秋(GⅠ)は差し、追い込み馬が上位を占めるなかで、好位追走から5着に頑張った。ちなみに、父のローエングリンも2003年に天皇賞・秋(10着)をステップに香港マイルに出走し、3着に好走している。

(4)ジャイアントトレジャー
ジョッキークラブスプリント(GⅡ)4着から向かった昨年の香港マイル(GⅠ)がモーリスの2着。3着エイブルフレンドに先着を果たしたという意味でも価値ある銀メダルだった。続く1月のスチュワーズC(GⅠ、芝1600m)でGⅠ初勝利を果たしたが、2月の香港ゴールドC(GⅠ、芝2000m)で9着、5月のチャンピオンズマイル(GⅠ)で8着に敗れるなど3連敗でシーズンを終え、今シーズンも9着だった前走のジョッキークラブマイル(GⅡ)まで2連敗と精彩を欠く競馬が続いている。

(5)ビューティーオンリー
今シーズンは10月1日のセレブレーションC(GⅢ、芝1400m)で2着、10月23日のシャティントロフィー(GⅡ)で3着のあと、前走のジョッキークラブマイル(GⅡ)に優勝。その前走は着差こそわずかだったが、鋭い決め手で図ったように差し切った。昨年1月の香港クラシックマイル(香GⅠ)などここまでの重賞3勝はすべて芝1600mで挙げたもの。今年5月のチャンピオンズマイル(GⅠ)では、上がり400mでモーリス(21.79秒)に次ぐ22.02秒の末脚で4着に入った。

(6)ヘレンパラゴン
フランスではサーアンドリューの名前で走り、7戦2勝。GⅠでもジャンプラ賞(GⅠ、芝1600m)の3着がある。昨シーズンから香港に移籍して、今年3月の香港ダービー(香GⅠ、芝2000m)で5着し、6月のプレミアプレート(香GⅢ、芝1800m)で初の重賞タイトルを獲得。今シーズンはここまで4戦し、3戦目のササレディースパース(GⅢ)がトップハンデ133ポンド(約60.5kg)で2着、前走のジョッキークラブマイル(GⅡ)で7着としている。

(7)ネオリアリズム
前走のマイルチャンピオンシップ(GⅠ)3着も然ることながら、今年のハイライトは何と言っても札幌記念(GⅡ)だろう。ルメール騎手の好判断で先手を取り、同厩舎のモーリスを完封した。この勝利で札幌競馬場での成績を3戦3勝としており、洋芝適性の高さは疑いようがなし。同じく洋芝のシャティン競馬場でも能力を十分に発揮できそうだ。

(8)パッキングピンズ
昨年のジョッキークラブマイル(GⅡ)で5着になり、今年1月1日のチャイニーズクラブチャレンジC(香GⅢ、芝1400m)で2着。その後も4月のスプリントC(香GⅡ、芝1200m)で3着、5月のチャンピオンズマイル(GⅠ)でも中団から差して3着と、重賞制覇までもう一歩のところまで来ている。今シーズンは後方に控える競馬を試みているが、前走のジョッキークラブマイル(GⅡ)まで4戦して5、9、5、10着と、まだ結果が伴っていない。

(9)ビューティーフレーム
昨年のジョッキークラブマイル(GⅡ)の優勝馬で、2番手から鮮やかに抜け出して重賞初制覇を飾った。その後の香港マイルではモーリスの6着。GⅠでは昨年1月のスチュワーズC(GⅠ)、今年2月のクイーンズシルヴァージュビリーC(GⅠ)での2着があり、どちらも逃げて粘りを発揮している。前走のジョッキークラブマイル(GⅡ)は先手を取ったものの、6着に敗れた。

(10)クーガーマウンテン
今年の香港マイルでただ1頭の欧州からの遠征馬。デビューした3歳時はスプリント路線を使われ、昨年からマイル路線を中心に活躍。8月のデズモンドS(GⅢ、芝8ハロン)を制したほか、6月のクイーンアンSでソロウの3着に好走している。今年はここまでに9戦し、9月のジョエルS(GⅡ、芝8ハロン)を制覇。前走は初めて欧州から外に出て、アメリカのBCマイル(GⅠ)で8着だった。

(11)ロマンチックタッチ
香港では重賞をまだ勝てていないが、2歳時には移籍前のオーストラリアでJ.J.アトキンズS(GⅠ、芝1600m)を制している。香港では昨年3月の香港ダービー(香GⅠ、芝2000m)で3着のほか、昨シーズンには今年2月のセンテナリーヴァーズ(香GⅢ)など芝1800mの香GⅢで2着を3度経験。今シーズンに入ってからも3走前のセレブレーションC(GⅢ)で4着、前走はジョッキークラブマイル(GⅡ)でビューティーオンリーの小差2着がある。

(12)サトノアラジン
昨年は香港カップ(GⅠ)に出走して11着に敗れているが、エイシンヒカリのペースになし崩しに脚を使わされた感があった。距離はマイルがベストだろう。ただし、今年はマイルGⅠ前哨戦の京王杯スプリングC(GⅡ)とスワンS(GⅡ)を制すも、その後の安田記念(GⅠ)で4着、前走のマイルチャンピオンシップ(GⅠ)は直線での不利もあったが5着と、GⅠではもうワンパンチ欲しい競馬が続いている。

(13)サンジュエリー
昨シーズンの香港クラシックマイル(香GⅠ、芝1600m)と香港クラシックC(香GⅠ、芝1800m)をR.ムーア騎手とのコンビで連勝して4歳二冠を獲得。三冠がかかった香港ダービー(香GⅠ)は、前の2走で2着に下したワーザーに逆転されて7着に敗れた。好位または中位から競馬をするタイプで、今シーズン2戦目の前走ジョッキークラブマイル(GⅡ)は昨シーズンの好調期を彷彿させるような競馬で3着に入っている。

(14)ジョイフルトリニティ
フランスではバガデュールの名前で走り、昨年7月にフランスでポルトマヨ賞(GⅡ、芝1400m)を勝ったあとに香港へ移籍。香港での1年目となる昨シーズンに2勝を挙げ、クラス1(日本で言うオープン)入りを果たした。今シーズン2戦目のセレブレーションC(GⅢ)は115ポンド(約52キロ)の軽ハンデではあったものの、初の重賞挑戦で見事に勝利。その後はシャティントロフィー(GⅡ)で4着、前走ジョッキークラブマイル(GⅡ)は現状の力量を測るかのように、しんがりから追い込んで5着だった。

★香港国際競走 出走馬全頭の短評コラム一覧
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香港ヴァーズ~出走馬全頭の短評
香港スプリント~出走馬全頭の短評
香港カップ~出走馬全頭の短評
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【香港国際競走】香港スプリント~出走馬全頭の短評

続いて香港スプリント

(1)エアロヴェロシティ
2014年の香港スプリント(GⅠ)を優勝し、高松宮記念(GⅠ)を勝ったのが昨年の3月。そこから今までは、昨年10月のプレミアボウル(香GⅡ)でレース中に心房細動を起こし、連覇のため来日した今年3月の高松宮記念は疝痛で回避した。体調面の不安は気になるところだが、それでも心房細動発症後に今年1月のセンテナリースプリントC(GⅠ、芝1200m)に優勝。今シーズンも前哨戦のジョッキークラブスプリント(GⅡ)まで2戦連続3着と、まずまずのステップでここまで来ている。

(2)ラッキーバブルズ
今年4月のスプリントC(香GⅡ)で重賞初制覇を達成し、5月のチェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)が香港馬最先着の2着。今シーズンに入ってからもプレミアボウル(GⅡ)に優勝し、前走ジョッキークラブスプリント(GⅡ)でも2着と、香港のスプリント路線で今最も勢いに乗っている1頭だ。昨シーズンは好位でレースをすることもあったが、今シーズンは後方に控えてその末脚に磨きをかけている。

(3)ペニアフォビア
昨年の香港スプリント(GⅠ)の優勝馬。昨年のこのレースではスタートでハナを主張すると、直線を向いたところで2番手のミッキーアイル以下を突き放して勝負を決めた。だた、今シーズンはここまで3連敗。直線・芝1000mのナショナルデイC(GⅢ)3着後は、プレミアボウル(GⅡ)7着、前走のジョッキークラブスプリント(GⅡ)も7着と苦戦している。前2走が他馬より斤量を背負っていたことを考えれば、今回はゴール前の粘りが違ってくる可能性はある。

(4)ノットリスニントゥーミー
前走のジョッキークラブスプリント(GⅡ、芝1200m)の優勝馬。香港では直線・芝1000mを6戦して(3-0-2-1)、芝1200mが10戦で(2-0-2-6)となっており、芝1000mをより得意にしている。昨年もこの時期は調子が良かったようで、ジョッキークラブスプリント(GⅡ)3着から本番の香港スプリント(GⅠ)でもペニアフォビアの3着に入っている。前哨戦の勝ち馬は2010年以降2着に3頭来ているが、勝利には至っていない。

(5)アメージングキッズ
昨シーズンは重賞初挑戦だった4月のスプリントC(香GⅡ)と5月のシャティンヴァーズ(香GⅢ)での2着があり、今シーズン初戦のナショナルデイC(GⅢ)で重賞初勝利を挙げた。続くプレミアボウル(GⅡ)ではしんがり追走から上がり400mをメンバー最速の21.93秒で追い込んで2着。前走のジョッキークラブスプリント(GⅡ)は中位からのレースで5着に敗れた。

(6)ビッグアーサー
12着に惨敗したスプリンターズS(GⅠ)は鞍上の福永騎手自身も認める、いただけない騎乗がすべて。実力を十分発揮できれば、ここで香港馬を負かしてもおかしくない。高松宮記念(GⅠ)やスプリンターズSのように好位、もしくはその直後でレースをし、早めに抜け出す競馬が理想的だ。

(7)レベルデイン
前走のマニカトS(GⅠ)では好位から内をピッタリと回り、ムーニーヴァレー競馬場の短い直線を味方につけて勝利。2013年9月のサールパートクラークS(GⅠ)以来、2度目のGⅠ制覇だった。破った相手に今年ドバイでアルクォズスプリント(GⅠ)を勝ったバッファリング(6着)や、5月に香港のチェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)を勝ったシャトークア(7着)がおり、レースレベルは決して低くない。

(8)サインズオブブレッシング
今年からGⅠに参戦するようになり、初戦はイギリスに遠征してダイヤモンドジュビリーS(GⅠ、芝1200m)を逃げて3着。フランスに戻り8月のモーリスドゲスト賞(GⅠ、芝1300m)を逃げ切ってGⅠウイナーとなった。その後は再びイギリスに向かいブリティッシュチャンピオンズスプリントS(GⅠ、芝1200m)で逃げて4着に入っている。出走した3つのGⅠはすべて直線コースだったが、右回りは3戦して2勝を挙げている。

(9)レッドファルクス
今年の前半まではダート、それも左回りに特化して良績を残していたが、7月のCBC賞(GⅡ)に続き、スプリンターズS(GⅠ)にも優勝した。馬自身の素質が開花しただけでなく、M.デムーロ騎手とも手が合っていると見る。香港馬が馬群の中団につけて末脚勝負に持ち込む展開が予想されるなかで、ダート1400mをこなすこの馬のスタミナが活きるような流れになれば、さらにチャンスが増すだろう。

(10)ストラスモア
重賞は未勝利だが、今年の元日に行われたボーヒニアスプリントトロフィー(香GⅢ、芝1000m)で2着し、5月のチェアマンズスプリントプライズ(GⅠ)ではまったくの人気薄ながら3着に飛び込んだ。今シーズンは前哨戦のジョッキークラブスプリント(GⅡ)から始動して6着。中位もしくは後方から末脚を活かす競馬を得意とする。

(11)グラウル
2歳時にミルリーフS(GⅡ、芝1200m)で2着になるなど早くから重賞で活躍。昨年4月のパヴィリオンS(GⅢ)の7着を最後にしばらく重賞戦線から遠ざかっていたが、今年10月のブリティッシュチャンピオンズスプリントS(GⅠ)に出てきて2着に好走した。続く前走の準重賞ウェントワースS(芝1200m)を勝って、香港に乗り込む。右回りのレースは今回が初めて。

(12)テイクダウン
オーストラリアからの参戦馬。2歳時、3歳時ともに重賞勝ちがあり、4歳になった今シーズンは9月のザショーツ(GⅡ、芝1100m)と10月のプレミエールS(GⅡ、芝1200m)を連勝する好スタートを切った。GⅢでの2着、5着を経て、前走のウィンターボトムS(GⅠ、芝1200m)でGⅠ初勝利を達成。その前走は2番手から逃げ馬をゴール前で際どく交わし、そこに追い込んできた馬も加わって4頭ほどが横に並ぶ大激戦だった。

(13)ピュアセンセーション
ダート競馬が本場のアメリカ馬だが、今年5戦はすべて芝のレースを使われて3勝。初戦こそ5着に敗れるも、6月のジャイパー招待S(GⅢ、芝1200m)と7月のパークスダッシュS(GⅢ、芝1000m)をどちらも逃げ切って重賞連勝。10月のベルモントターフスプリント招待S(芝1200m)にも勝って3連勝で迎えた前走BCターフスプリント(GⅠ)では、勝ったオブヴィアスリーを2番手から追いかけて3着に踏ん張った。右回りのレースは今回が初めてになる。

(14)スーパージョッキー
9月のコリアスプリント(韓GⅠ、ダ1200m)で日本のグレープブランデーミリオンヴォルツに完勝しているように、ダート適性の高いスプリンター。そのほかにも昨年3月にはドバイゴールデンシャヒーン(GⅠ、ダ1200m)で2着になった実績もある。香港での芝の実力はというと、昨年10月のナショナルデイC(香GⅢ)での2着など重賞勝ちにはもう一歩足りない程度。芝GⅠの壁は相当厚そうだ。

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香港ヴァーズ~出走馬全頭の短評
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【香港国際競走】香港ヴァーズ~出走馬全頭の短評

日本馬が大挙13頭出走する香港国際競走デーが目前に迫ってきた。海外馬券発売レース第四弾となる今回も、これまで同様に出走馬全頭の短評をお伝えしていく。発走時刻順に1レースずつ公開するので、ぜひ参考にしていただきたい。まずは香港ヴァーズだ。

(1)ハイランドリール
昨年同様、R.ムーア騎手とのコンビで連覇を狙う。今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(GⅠ、芝2400m)の優勝馬で、凱旋門賞(GⅠ)がファウンドの2着。その後にはアメリカでBCーフ(GⅠ、芝2400m)も制している。凱旋門賞のように好位でも競馬ができ、前走のBCターフのように逃げても強い馬。GⅠ・4勝の実績もここでは群を抜く。

(2)シルバーウェーヴ
マカヒキが勝ったニエル賞と同日に行われたフォワ賞(GⅡ、芝2400m)の優勝馬。凱旋門賞(GⅠ)にも出走(13着)していたので、ハイランドリールと同じく日本の競馬ファンの認知度も高いはず。フォワ賞の前には7月にサンクルー大賞(GⅠ、芝2400m)に優勝し、さらに遡ると、5月にはイスパーン賞(GⅠ、芝1800m)でエイシンヒカリの3着に入っている。末脚が切れるというよりは、持続して脚を使うタイプだ。

(3)ビッグオレンジ
7月にイギリスでプリンセスオブウェールズS(GⅡ、芝2400m)とグッドウッドC(GⅡ、芝3200m)でどちらも昨年に続いての連覇を達成し、オーストラリアのメルボルンC(GⅠ)に向かって10着に敗れている。その後もオーストラリアに残り、11月12日の前走ジッピングクラシック(GⅡ、芝2400m)は逃げて最後まで粘ったが、ゴール前で2頭に交わされて3着に敗れた。

(4)サトノクラウン
ドゥラメンテリアルスティールを抑えて1番人気になった昨年の皐月賞(GⅠ)はスタートでの出遅れが響いて6着に終わった。前走の天皇賞・秋(GⅠ)のレース映像を見返しても、その不安はまだ完全に払拭するまでには至っていない感がある。ダービー(GⅠ)での3着や重馬場で快勝した今年2月の京都記念(GⅡ)を見る限り、そのポテンシャルの高さは疑いようないところだが、敗因のハッキリとしない大敗もあるのが難点だ。

(5)ヘレンハッピースター
昨年5月にクイーンマザー記念C(香GⅢ、芝2400m)に優勝し、昨シーズンは12月に香港ヴァーズ(GⅠ)、5月にチャンピオンズ&チャターC(GⅠ)で芝2400mを使われてどちらも5着に敗れている。今シーズンの3戦のうち、1800m以下の2戦は後方でレースを終えている(9着と14着)が、前走のジョッキークラブC(GⅡ)は逃げて4着に頑張った。

(6)ガルリンガリ
フランスからの遠征馬で、5歳にしてすでに46戦をこなしたタフガイ。今年も香港ヴァーズ(GⅠ)がすでに12戦目になる。今年の4戦目と5戦目にあたる3月のエクスビュリ賞(GⅢ、芝2000m)と4月のアルクール賞(GⅡ、芝2000m)を制し、GⅠでは直後のガネー賞(GⅠ)で3着、7月のサンクルー大賞(GⅠ)で5着に入っている。

(7)ワンフットインヘヴン
6月のシャンティイ大賞(GⅡ、芝2400m)の勝ち馬。その後の7月のサンクルー大賞(GⅠ)6着から9月のフォワ賞(GⅡ)4着、10月の凱旋門賞(GⅠ)6着というローテーションはシルバーウェーヴと同じだが、同馬はその後に10月16日のコンセイユドパリ賞(GⅡ、芝2400m)で2つ目の重賞タイトルを獲得した。母のプライドは2006年の香港カップ(GⅠ)の優勝馬でもある。

(8)ケシュア
シンガポール移籍前にはアルゼンチンで走り、エンサヨ賞(GⅡ、芝1800m)に優勝している。シンガポールでは2014年のシンガポールゴールドC(星GⅠ、芝2200m)や2015年のシンガポールダービー(星GⅠ、芝2000m)を制し、2015年のシンガポール航空国際C(GⅠ)では3着に入り、マイネルフロストに先着を果たしている。今年はシンガポール国内の重賞を2勝し、前走のシンガポールゴールドCは好位の直後からジリ脚で5着に敗れた。

(9)フレイムヒーロー
昨シーズンは今年1月のジャニュアリーS(香GⅢ、芝1800m)が唯一の重賞での勝ち星。その他にも2月のセンテナリーヴァーズ(香GⅢ、芝1800m)で3着、6月のプレミアプレート(香GⅢ、芝1800m)での2着がある。今シーズンは後方からの競馬に徹して、初戦11着、2戦目10着と冴えなかったが、ジョッキークラブC(GⅡ)では2着に来て穴をあけた。芝2400mは今年4月のクイーンマザー記念C(香GⅢ)で1度経験しており、そのときは最下位に敗れている。

(10)ベンジニ
ニュージーランドの調教馬だが、重賞初勝利は今年6月にオーストラリアで挙げたブリスベンC(GⅡ、芝2400m)。後方から大外を回って押し上げ、直線で末脚を繰り出した。今シーズンはニュージーランドに戻り、リヴァモルクラシック(GⅠ、芝2040m)で6着。その後がOMFステークス(GⅢ、2000m)2着、イーグルテクノロジーS(GⅢ、1800m)5着というステップで香港国際競走に出走してきた。母のパリスパフュームは、日本で繁殖生活を送ったフレイムオブパリがクロフネの子供をお腹に宿したまま輸出され、オーストラリアで誕生した馬である。

(11)イースタンエクスプレス
昨シーズンの香港4歳シリーズで二冠目の香港クラシックC(香GⅠ、芝1800m)がサンジュエリー、ワーザーに続く3着(ブリザードとの同着)。三冠目の香港ダービー(香GⅠ、芝2000m)がワーザーの9着だった。今シーズンはクラス2で2着し、その後は中位からの競馬でササレディースパース(GⅢ)が3着、ジョッキークラブC(GⅡ)が6着。2000mを超える距離は初めてになる。

(12)アンティシペーション
A.オブライエン厩舎から香港に移籍した馬。アイルランドではテーブルロックの名前で走り、準重賞のサーヘンリーセシルS(芝1600m)での勝利を含む8戦4勝、2着3回の戦績を残した。香港では今シーズン初戦にクラス2を勝ち、移籍22戦目にしてようやく初勝利。今年4月のクイーンマザー記念C(香GⅢ)2着があり、ササレディースパース(GⅢ)とジョッキークラブC(GⅡ)では好位グループでレースして、それぞれ5着と7着に入っている。

(13)ヌーヴォレコルト
昨年の香港カップでR.ムーア騎手とのコンビでエイシンヒカリの2着。今年4月のクイーンエリザベス2世Cでは6着に敗れているが、その時は稍重の馬場に苦戦した。11月5日のBCフィリー&メアターフ(GⅠ)11着は正直負けすぎの感があったが、11月24のレッドカーペットH(GⅢ)に勝利して、すぐに巻き返した。その後にアメリカから直接香港に入っている。

(14)スマートレイアー
3歳時の秋華賞(GⅠ)2着、昨年のエリザベス女王杯(GⅠ)5着があるが、主だった実績は今年の重賞2勝を含めて1800mまで。各メディアで語られている通り、初めての2400mの距離が鍵になるだろう。牡馬混合戦は14年の大阪城S、昨年の米子S、今年の東京新聞杯(GⅢ)で勝利を挙げており、意外な相性の良さを見せている。

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【香港国際競走】レース展望対談~現地競馬記者”文傑(ぶん・けつ)”氏とHKIR4レースを斬る

◆プロフィール
文傑(ぶん・けつ)
香港最大の日刊紙『蘋果日報(アップルディリー)』首席競馬記者を務め、今秋より同じく大手日刊紙『星島日報』に移籍。競馬記者経験は20年以上。香港で最も経験と知識を有する競馬記者の一人。

甘粕代三(あまかす・だいぞう)
東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、同台北開設支局長などを務める。94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから香港の競馬にのめり込む。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問。


甘粕 さあ、いよいよHKIR(香港国際競走)だね。

文傑 一緒に香港で競馬を見るようになって10年?それじゃきかないね。ずいぶん長く一緒に競馬を見てきたもんだ。今年は日本から13頭の出走頭数レコード、びっくりだよ。よほど日本に使うレースがないんじゃないか?

甘粕 確かに。日本ではスプリンター、マイラー、2000mのビッグレースはもう終わっているからね。その後、香港を目標にする馬が年々増えてるってことさ。それじゃあ、ヴァーズ、スプリント、マイル、カップの順番で検討していこうか。

香港ヴァーズ 第4R 芝2400m 日本時間15:00発走予定
ハイランドリール連覇へ視界良好
相手はフランス馬、ヌーヴォレコルトに厳しいローテ


甘粕 香港はマイル以下のレースが80%以上。中長距離は手薄と認めざるを得ないね。過去10年でも香港馬は1頭しか勝っていない。

文傑 それは仕方ないよ。そういうレース体系なんだから。1シーズンで2400mのG1が2レース、G3が1レースしかないんだから。香港はこれまで長距離レースを重視してこなかったからね。今回は4頭が出走しているけど、気になるのはイースタンエクスプレス1頭だけかな。状態はいいし、2400向きでもある。ただ、格下感はどうしても否めない。プレース(複勝)がいいところだろう。どうしても、もう1頭というのなら、アンティシペーションかな。

甘粕 確かにそうだね。今年の外国馬をどう見る?

文傑 強すぎるよ。香港馬じゃあ全く相手にならないよ。最近10年間でヨーロッパ国が8勝してるだろ。今年のハイランドリールはこれまでのヨーロッパ遠征馬の中でも飛び抜けて強い。

甘粕 去年はこのレースであのフリントシャー負かしてるしね。

文傑 その後も、イギリス、アメリカで最高レベルの2400m戦を勝ってきてるだろ。去年の状態を維持できていれば、連覇の可能性はかなり高いよ。

甘粕 そうだね。これまで香港ヴァーズに出走してきたヨーロッパの馬の中でも飛び抜けている。その他に気になる馬は?

文傑 良績を残しているフランス馬が3頭出走するけれど、この中から2頭。シルバーウェーヴ、ワンフットインヘブンを押しておこうか。

甘粕:同感だね。

文傑 ところで日本勢はどうなの?

甘粕 3頭の中では去年の香港カップ2着馬、ヌーヴォレコルトが筆頭だろう。オークス馬で2400も問題ないし、香港も経験済み。力的にはハイランドリールに肩を並べることはできる。

文傑 確かに香港カップはいいレースだった。

甘粕 今年は日本勢が13頭とレコードを作った。ヌーヴォの中国語馬名は「新紀録」。新記録を作ってもらいたいものだけどね。


香港スプリント第5R 芝1200m 日本時間15:40発走予定
香港馬の独壇場!
ラッキーバブルズ、ペニアフォビア、エアロヴェロシティ


甘粕 香港スプリントは香港馬の独壇場。ロードカナロア連覇とジェイジェイザジェットプレーンの3年を除いて過去10年で7頭の香港馬が勝っている。今年も香港勢が優勢だね。

文傑 今年の香港勢は飛び抜けた馬はいないけれど、平均して高いレベルにある、と言える。よほどのことがなければ今年も香港馬で行けるだろう。

甘粕 その通りだ。サイレントウィットネス、セイクリッドキングダムといった大看板はいないが、一昨年の覇者エアロヴェロシティ、昨年の覇者、ペニアフォビアが揃った上に、新星も台頭している。

文傑 香港馬の中ではラッキーバブルズだろう。安定感抜群。1200では10戦して連を外していない。

甘粕 トライアルのジョッキークラブ・スプリントは明らかに本番を意識した仕上げとレースぶり。後方から自分の脚を確かめるようにきっちりと2着。F.ルイ調教師に話を聞いたが、中間も順調。枠順も内過ぎず外過ぎず絶好の5番枠。視界良好だね。まだ5歳と若いし、香港短距離界に新たなスターが生まれる予感がする。世代交代、新旧対決が香港スプリント、マイル界の現状ではないかと思うけれど、既成勢力はどうかね?

文傑 昨年の覇者、ペニアフォビアは昨季も本番まで勝ち星がなかったが、本番ではきっちりと結果を出した。今季も同じように3戦して負けているが、着差はそれほどでもない。どう仕上げてくるか注目だね。

甘粕 去年は大外枠から果敢にハナを奪って逃げきったが、今年は1枠を引いた。これは有利だね。最内から逃げたら相当しぶといはず。エアロは2枠を引いた。既に8歳馬だが、今季は2戦して3着2回。去年は香港スプリントを前に心房細動、そして、立て直して高松宮記念連覇に向けて日本に着いてレース直前に疝痛と散々なシーズンだったが、今季は順調だね。8歳とはいえセン馬だし、まだまだ老け込む歳ではない。ハナを切らなくてもレースができるしここは要注意だよ。

文傑 トライアル勝ちのノットリスニントゥーミーはいかにもハンディキャップホース。本番ではどこまではまるか。

甘粕 遠征馬をどう見る?

文傑 ヨーロッパ組は全く良績を残していないし、オーストラリア勢だってレベルデインが7歳、テイクダウンは4歳で、まだここでは家賃が高いだろう。それなら日本馬、ビッグアーサーに魅力を感じる。

甘粕 ビッグアーサーはライアン・ムーアに乗り替わったね。ただ、枠が外過ぎる。

文傑 世界のライアンが絶対的不利のシャティン1200mの外枠をどうさばくか、それも見どころだね。それと格下、オールウェザー馬と見られてるけど、香港馬スーパージョッキーには要注意だよ。とてつもない鉄砲馬だ。

甘粕 それはいい穴馬情報だね。ありがとう。


香港マイル第7R 芝1600m 日本時間16:50発走予定
ビューティーオンリーにヘレンパラゴン
サンジュエリーが世代交代実現?


甘粕 マイルも香港の独壇場だ。ここ10年で去年のモーリス以外は香港馬が9勝だよ。今年も香港勢で仕方ない。

文傑 これまでに比べると最強とは言えないが、十分勝負になるんじゃないか。

甘粕 本当にそうだね。まずは香港馬から行こう。期待の香港馬を上げてほしい。

文傑 まずはトライアル勝ちのビューティーオンリーとヘレンパラゴン。オンリーは今季さらに進歩、1600mなら上位3頭に入る可能性は高い。ヘレンパラゴンはトライアル後に状態急上昇。前走は直線で大きな不利があったが、今回はあんなことはないだろう。

甘粕 J.ムーア調教師の話だと、期待の3頭の中にヘレンパラゴンをあげていた。まだ4歳だし、香港には珍しくセン馬ではなく牡馬。この馬の種馬としての将来を考えているんじゃないか、と感じざるを得ない。

文傑 そうだろ。

甘粕 それはそれとして、問題はエイブルフレンドの扱いだよ。引退の危機までささやかれていたが、復活を遂げ前走のトライアルは1600ではなく1200を使って3着。

文傑 それは香港ではよくあることで、長期休養していた馬の眼を覚ますために敢えて短い距離を使うんだよね。4着は立ち直ってきた証拠ではあるけれども。

甘粕 2日のバリアトライアル(注:模擬レース)ではモレイラ騎手が持ったままの2着。相当戻ってきているように見えた。ただ、調教で実際に見た馬体は往年のような張りが感じられなかったのが気になる。

文傑 完全復活は難しいんじゃないか。エイブルは既に往年のエイブルにあらず、だよ。

甘粕 まだ争覇圏内にはいると思うんだけどねえ。香港勢ではサンジュエリーに無限の可能性を感じている。トライアルはスプリントのラッキーバブルズ同様、明らかに本番を意識した作りとレース。後方から自分の脚を測ってきっちりと3着。

文傑 要注意であることは間違いないね。

甘粕 J.サイズ調教師に話を聞いたんだが、1800までは昨季の香港馬王、ワーザーよりも強いというんだよ。確かに春の4歳三冠戦で2冠、1800まではワーザーを負かしているしね。

文傑 うん、ワーザーを負かしているのは確かだ。

甘粕 香港マイル界もスプリント界と同様、世代交代、新旧対決がキーワード。新興勢力の筆頭はサンジュエリーと見ている。頭まであってもおかしくない。

文傑 日本馬はどうなの? 今年は3頭も来たよね。ロゴタイプ以外は勝負になるとみてるんだけど。ネオリアリズム札幌記念モーリスを負かしているし、サトノアラジンだって前走のマイルCSは直線で不利があったんだろ。十分争覇圏内だ。

甘粕 ロゴタイプはシャティンの馬場を隅から隅まで知り尽くしたミルコ(・デムーロ)が騎乗する。ハナに立たなくてもいいタイプで、ビューティーフレームが引っ張る中、番手から早めに抜けだす競馬ができればひょっとするぜ。


香港カップ第8R 芝2000m 日本時間17:30発走予定
モーリス鉄板、相手も日本馬?
香港勢ではブレイジングスピード


甘粕 かつては遠征組に馬場を貸すだけの香港勢だったが、春の4歳クラシック三冠を整えたことをはじめ、距離体系を重視。この10年で4勝をあげている。

文傑 しかし、今年は近年でも最弱と言ってもいい。主力の高齢化とピークアウトは目を覆うばかりだ。

甘粕 デザインズオンロームのことだね。今季初戦は距離不向きの1600を勝って、トライアルも期待したんだけど、予想外の殿負け。一体どうしたんだろう? あのエピファネイアにあっさり勝った時の力には舌を巻いたもんだったが。

文傑 ドバイ遠征帰りの香港馬は大概、復調に失敗するんだ。この馬もその一頭。

甘粕 J.ムーア調教師は“ペースが全て。調整は万全。100%”と言っていたが。

文傑 100%は今の100%で、往年のデザインの100%であるはずがない。3着までに入れば上出来ってところだ。

甘粕 そうだね。おまけに今年はモーリスが秋の天皇賞で2000mを克服、ここはラストランなのでメイチの仕上げでくる。天皇賞の後、マイルかカップか直前まで明らかにしなかったのはライアン・ムーアが乗れるどうか、返事を待っていたんだ。

文傑 それは心強いね。ライアンが乗るんならモーリスは不動の軸馬だよ。相手も日本馬で仕方ないね、エイシンヒカリは去年の香港カップ勝馬だし、今回もハナを切って逃げればモーリスを負かせるんじゃないか?

甘粕 去年は人気薄だったから、あの芸当もできたけど、今回はモーリスにライアン。そうは問屋が卸さないだろう。ただ、この馬もラストランでメイチの仕上げ。日本の超高速馬場では時計が一つか一つ半足りない馬だが、同じオーナーのエイシンプレストンのようにここの馬場が抜群に合う。ただ、1着以外は馬券にならない馬だから、そこが要注意だよ。

文傑 単勝を買って見てればいいってことか。モーリス頭のヒモには考えにくいんだね。

甘粕 そう。日本勢の相手には既に香港で経験があるステファノスラブリーデイクイーンズリングは外枠を引いたのが痛いね。香港勢では何がおすすめ?

文傑 ブレイジングスピードだね。2000mでは11戦して3着以内が6回と安定感抜群。去年の香港カップだっていいレースをしている。香港勢で先着するのは間違いなくこの馬だ。

甘粕 T.クルーズ調教師も自信満々だったよ。トライアル勝ちのシークレットウェポン、ホースオブフォーチュンはどうだろう?

文傑 ハンディキャップホースというか、国際G1の定量戦で戦うにはまだ力が足りないんじゃないか?

甘粕 ここはモーリスから大勝負かけてみたい。1着固定の3連単でもいいと考えている。ルーラーシップのクイーンエリザベスII世カップの時よりも自信あり、だな。


「当てるぞ~」シャティン競馬場で決意のガッツポーズを決める文傑氏(写真・右)と甘粕氏

★12/10(土)22:15より文傑、甘粕両氏が現地メディアracing.dimbo.tvに生出演!
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★今回登場した文傑(ぶん・けつ)氏が香港国際競走で海外プロとして電撃デビュー!
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【香港国際競走】香港有力調教師インタビュー④~J.ムーア 6頭出しのトップ調教師は3頭に自信!ノットリスニン、エイブルにヘレン

昨年の年度代表馬、モーリスを筆頭に史上最多であるばかりか、そのレベルも史上最高の日本勢を迎え撃つ地元、香港の筆頭は当地トップ・トレーナー、ジョン・ムーア調教師。これまでHKIR(香港国際競走)4レースを総なめ、その勝ち方を熟知している。今年は4レースに6頭を送り込み、日本勢の大望粉砕を図っている。出走各馬の最新の状態と日本勢に待ったをかける決意を直撃した。(インタビュー/文・甘粕代三)

――今年は4レースに6頭を出走させますね。

J.ムーア調教師(以下「ムーア」) ここが一年間で最大の目標だからね。6頭が選ばれて光栄なことです。

――そのうちの2頭、エイブルフレンドとデザインズオンロームはともに香港馬王(香港で「年度代表馬」を表す言葉)です。

ムーア 2頭とも色々あったけど、揃ってHKIRに出走させられることができた。とてもハッピーだよ。

――2頭の馬王のことは後で詳しく伺いますが、6頭の内でどの馬に期待されていますか?

ムーア 1頭に絞りこむことは難しいね。ノットリスニントゥーミー、エイブルフレンドとヘレンパラゴンの3頭ですね。

――早速、馬王のエイブルが出てきましたね。脚部不安から約1年間休養。それもオーストラリアへの放牧と復帰までの道のりは休み明けの前走はマイルではなく、1200mのジョッキークラブ・スプリントを使って4着でした。

ムーア 無事にレースができてまずはほっとしたよ。

――昨季は本番の香港マイルが休み明け3戦目。しかも初戦のプレミア・ボウルで1200m戦を勝っています。一走足りないような気もするんですが。

ムーア 確かに去年に比べると順調さに欠けることは否めないが、12月2日のバリアトライアル(注:模擬レース)を見たかい?

――香港ジョッキークラブのホームページで映像を拝見しました。J.モレイラ騎手が騎乗、中団から持ったままで2着。モレイラ騎手の手は全く動くことがない中、唸るような気合を見せてくれましたね。

ムーア そう、本番に十分間に合ったね。往年の力を本番で示してくれると信じているよ。

――香港マイルには僚馬のヘレンパラゴン、今季3戦2勝、ナショナルデー・カップで初重賞勝ちを収めたジョイフルトリニティと3頭出し。期待されている3頭の中にはヘレンも挙げられていました。上位独占を狙ってますね?

ムーア そんなことはないよ(笑)。ヘレンパラゴンはまだ4歳。これからまだまだ良くなる馬です。昨季、重賞(注:プレミア・プレート=G3 ・16/6/19・シャティン・芝1800m)を勝って、今季4戦で本番に臨むのは予定通り。前走のジョッキークラブ・マイルは直線で大きな不利があったが、7着という着順は気にしないほうがいい。引き続きオーストラリアの名手、H.ボーマンに手綱を取ってもらうし、上積みは小さくないよ。

――では、ご推薦の3頭のうち残りの1頭、ノットリスニントゥーミーです。前走のジョッキークラブ・スプリントは単勝43倍の人気薄ながら鮮やかな勝利でした。

ムーア 近走は成績が上がっていなかったから人気はなかったけれど、もともと力のある馬。見事に復活してくれました。本番では人気になるだろうけれど、十分期待に応えられる状態にあるよ。

――さて、もう1頭の香港馬王、デザインズオンロームです。今季初戦を見事に勝ちながら(シャティン・トロフィー=G3・10/23・シャティン・芝1600m)、得意の2000mに戻ったトライアルのジョッキークラブ・カップ(G2・11/20・シャティン・芝2000m)ではまさかの殿負けを喫しました。本番の香港マイル、大丈夫ですか?

ムーア ペースが合わなかったんですよ、あのレースは。状態が敗因ではありません。6歳ですがまだ衰える歳ではありません。トライアルの後も順調で100%の状態で本番に出せますよ。前走のようなことはありません。今回はあのモレイラが騎乗しますから、それだけでも大きな上積み。モレイラの騎乗に期待するところ大ですよ。

――香港カップは日本馬王、年度代表馬のモーリスと夢の日本と香港の馬王対決が実現します。モーリスは昨年の香港マイルでもう1頭の香港馬王、エイブルフレンドを負かしています。リベンジの一戦ですね。モーリスをどうご覧になりますか?

ムーア スーパーホースですよ。香港に到着した後の状態を見ていないから、コメントは差し控えさせてもらいませんかね(微笑)

――最後に日本のファンに一言お願いします。

ムーア 最近は日本に遠征することもなくなっているのですが、今でも私のことを覚えてくださっているファンの方がいらっしゃるそうで、本当にうれしくありがたいことです。今年からHKIRが日本でも発売されると聞いています。日本の競馬ファンの皆さんの期待にも応えるべく最後の調整に努めますよ。期待して下さい。さて、厩舎に戻って馬の状態を確かめなくては。

HKIR2016 J.ムーア厩舎出走馬
デザインズオンローム/セン6/J.モレイラ騎手/香港カップ
エイブルフレンド/セン7/J.モレイラ騎手/香港マイル
ヘレンパラゴン/牡4/H.ボウマン騎手/香港マイル
ジョイフルトリニティ/牡4/G.モッセ騎手/香港マイル
ノットリスニントゥーミー/セン6/H.ボウマン騎手/香港スプリント
ヘレンハッピースター/セン5/H.ボウマン騎手/香港ヴァーズ

ジョン・ムーア=約翰摩亞 調教師
1985年、父ジョージ・ムーアの下から独立し開業しこれまで7度リーディングに輝く。今季開幕前までの勝ち星は1503勝、香港最古参、最多勝、最多賞金獲得調教師で“千勝爺”の異名も。大レースに滅法強く香港国際競走4レースは全て制覇。オーストラリア人。66歳。



甘粕の眼
 短い時間の中で丁寧に答えてくれたJ.ムーア師には香港競馬を長年にわたって代表してきた調教師の風格を感じざるを得なかった。例年、シーズンインはスロースタート、大目標のHKIRに向けて着実に馬を仕上げてくる師だが、1年近い休養を余儀なくされ、一時は引退説も流れたエイブルフレンドを復帰させ、ぎりぎり本番に間に合わせた手腕は流石。7歳とはいえエイブルは本番香港マイルでも消せない1頭だ。4歳のヘレンパラゴンには無限の魅力を感じる。世界最高の質と層の厚さを誇る香港マイラー陣は健在だ。
 香港カップに出走するデザインズオンロームには一抹の不安を感じざるを得ない。師は仕上げは100%とは言いながら、自信の3頭に上げず、前走の殿負けの印象をどう払しょくしてくれるのか。当日のパドックの馬体に注目したい。
 ノットリスントゥーミーは本番で人気になってトライアルのような気楽な競馬ができるかどうかがカギになるだろう。スプリント界は古豪エアロヴェロシティとラッキーバブルズの間で世代交代の時期に差し掛かってきているが、その間の中間管理職世代が意地を見せるかどうか、世代間競争も馬券検討の上でいい意味で焦点となろう。
(12月5日午前、沙田競馬場にて)


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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【香港国際競走】香港有力調教師インタビュー③~T.クルーズ 香港最多の7頭出し!自信の1頭はマイルトライアル勝ちのビューティーオンリー

香港騎手学校の1期生からリーディングジョッキー、そして渡仏してトリプティクでジャパンカップに挑戦。調教師に転じてからもリーディングに輝いたT.クルーズ調教師は今年は4レースに香港勢最多の7頭出しの大攻勢をかけてきた。マイルにはトライアル勝ちのビューティーフレーム以下3頭、カップにはG1の常連、ブレージングスピード以下2頭、そしてスプリントには連覇のかかったペニアフォビア。ヴァーズには上がり馬、アンティシペ―ション。狙いがどこにあるのか、トニーに直撃した。(インタビュー/文・甘粕代三)

――7頭出しと今年のHKIR(香港国際競走)には例年に増して力が入っていますね。まず自信の1頭を紹介して下さい。

T.クルーズ調教師(以下、「クルーズ) ビューティーオンリーだね。トライアル(ジョッキークラブ・マイル、G2・11/20・シャティン・芝1600m)をきっちりと勝ってくれました。今季は使いだしから極めて順調で、ここまで予定通りに3戦を使って来られました。これからは湿度も下がって馬場が乾き、硬い馬場、早い時計が得意のオンリーにはさらに期待が高まります。

――そのトライアルは本番同様の3頭出し。ロマンチックタッチが人気薄ながら2着に突っ込んで昨年同様1、2着独占でした。ロマンチックがパドックで一番よく見えたのですが、格下と見てしまって買えませんでした。

クルーズ ロマンチックタッチはオンリーと違って柔らかい馬場が得意、それがトライアルの好走につながりました。本番はトライアルよりも馬場が硬くなりますが、状態は相変わらずいいですよ。

――もう一頭、ビューティーフレームがいます。今回もトライアル同様逃げますか?

クルーズ そう、フレームにはペースメーカーになってもらうよ。でもペースメーカーとはいえ馬鹿にしないでもらいたいですね。あのエイブルフレンドを負かしたことがあるんですから。楽に逃げられれば、そのままっていうことだって十分可能性はありますよ。

――エイブルフレンドの名前が出ました。エイブルが最大のライバルですか?

クルーズ それはそうだね。あれだけの馬ですから。前走、その後のバリアトライアル(注:模擬レース)を見ると相当復調してきています。しかし、あれだけの頓挫があった馬が100%元に戻ることは難しいでしょう。現時点ではオンリーの方が上であることは間違いない。ところで日本の3頭はどうなの?

――ロゴタイプは今年の安田記念であのモーリスを負かしているし、マイルチャンピオンシップからのネオリアリズムサトノアラジンとも侮れませんよ。香港到着後の状態を見ていないので、詳しいことはお話しできませんが。香港は日本よりも時計一つ以上かかりますから、ビューティーオンリー同様、馬場がカギですよね。さて、香港カップも2頭出しです。

クルーズ ブレージングスピードに期待しています。トライアル(ジョッキークラブ・カップ、G2・11/20・シャティン・芝2000m)は5着でしたが、斤量128ポンドを背負っていましたから、レース内容、着順とも悲観していません。定量戦になる本番ではトライアルのようなことはありません。モーリスの前走を見ましたが、確かに強い。しかし、ブレージングスピードも香港のG1馬ですからね。

――ブレージングの脚質は自在、本番ではどんな位置取りを考えていますか?

クルーズ 5番手から6番手、直線で勝負をかけさせたい。それがこの馬に一番合っているでしょう。

――ペニアフォビアには香港スプリント連覇がかかっています。

クルーズ 今季は3戦してまだいい結果を残せていなけれど、これは敗因がはっきりしています。斤量です。使い出しのナショナルデー・カップ(G3・10/1・シャティン・芝1000m)、プレミア・ボウル(G2・10/2・シャティン・芝1200m)ともハンデ戦で背負わされましたし、トライアルのジョッキークラブ・スプリント(G2・11/20・シャティン・芝1200m)も一頭だけ128ポンドと他馬よりも5ポンド重かったですからね。本番は定量戦ですから、これまでの3戦のようなことはありませんよ。

――昨年は大外枠からハナを奪って逃げ切り。その再現ですね。

クルーズ 大外から香港スプリントを逃げ切るのは至難の業。実力の証明ですよ。あれ以上の外枠はありませんから、どの枠を引いても去年よりは有利です。期待してますよ。

HKIR2016 T.クルーズ厩舎出走馬
ブレージングスピード/セン7/N.カレン騎手/香港カップ
ヘレンスーパースター/セン6/G.モッセ騎手/香港カップ
ビューティーオンリー/セン5/Z.パートン騎手/香港マイル
ビューティーフレーム/セン6/D.リョン騎手/香港マイル
ロマンティックタッチ/セン6/M.チャドウィック騎手/香港マイル
ペニアフォビア/セン5/S.デソーサ騎手/香港スプリント
アンチィシぺーション/セン5/N.カレン騎手/香港ヴァーズ

トニー・クルーズ=告東尼 調教師
騎手、調教師のいずれでも成功した香港競馬界の星。騎手時代はリーディング7回、仏でも騎乗しトリプティクでジャパンカップ挑戦。調教師としてもリーディング2回。スプリンターズステークス安田記念も制覇。大の日本好き、59歳。



甘粕代三の眼
 例年はスロースターターのT.クルーズ厩舎だが、今季はシーズンインから攻勢をかけ、現在リーディング6位。これはHKIRにかけてのもの、それが7頭出しにつながっている。自信の一頭にはビューティーオンリーを上げてくれたが、エイブルフレンドが復調途上にある中、香港マイラー陣の総大将として日本勢を迎え撃つには十分の実績と実力を兼ね備えている。ブレージングスピード、ペニアフォビアのG1馬2頭もそれぞれ2戦、3戦を消化、着順だけでの判断は禁物だ。
(12月6日、シャティン競馬場で)


※次回(12/9)は現地競馬記者とのレース展望対談をお送りします。お楽しみに。


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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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【香港国際競走】香港有力調教師インタビュー②~P.オサリバン『エアロヴェロシティ、8歳だが着実に上昇』世代交代の一戦に古豪の意地

香港スプリント界に君臨した絶対王者、エアロヴェロシティが復活をかけて香港スプリントに臨む。一昨季には香港、日本、シンガポールと3カ国・地域でスプリントG1を制覇するという快挙を成し遂げたが、その後は挫折を繰り返し、今季ようやく立て直しに成功。ここまで2戦を3着、3着とかつての力を示し、本番では王座奪還を虎視眈々と狙っている。直線での死闘でオグリキャップを下しジャパンカップを制覇した、あのホーリックスを手掛けたP.オサリバン調教師に古豪復活にかけた思いを直撃した(インタビュー/文・甘粕代三)

――一昨季はアジアのスプリント界に君臨した王者も昨季からアクシデント続きでしたね。

P.オサリバン調教師(以下「オサリバン」) 香港スプリント連覇を目指して始動したプレミア・ボウル(HKG2・15/10/15・シャティン・芝1200m)では直線で心房細動を発症、香港スプリントを断念したんだ。立て直しに成功して香港での壮行レース、センテナリー・スプリント・カップ(HKG1・16/1/31・シャティン・芝1200m)を勝って意気揚々と高松宮記念連覇を目指して日本に渡ったんだけど、直前に今度は疝痛。レースを使えずに香港に戻ったんだ。立て直して臨んだ大一番だっただけに残念でならなかった。

――5か月ぶりのプレミア・ボウルでは3着でした。

オサリバン 無事に走ってくれたことでまずは安心しました。

――そして、トライアルのジョッキークラブ・スプリントでも3着。パドックでは一番よく見えました。相当戻ってきているように見えました。

オサリバン 休み明けよりも状態は良くなっていました。4番手から直線真ん中を割って足を伸ばしての3着。レース感も徐々に戻ってきていますね。

――いよいよ本番です。

オサリバン 8歳という高齢だけにかつてのような急上昇ということはありませんが、着実によくなってきています。全盛期の8割までは来ている感じですね。この後、更にどれだけ戻るかは年齢との闘いですが、恥ずかしいレースはしないでしょう。オーナーの期待に応えるためにも最後の最後まで入念に仕上げます。

HKIR2016 P.オサリバン厩舎出走馬
エアロヴェロシティ/セン8/Z.パートン騎手/香港スプリント


ポール・オサリバン=蘇保羅 調教師
父と管理、実弟ランス騎乗のホーリックスジャパンカップ制覇。ニュージーランドで11回リーディングに輝いた後、04年香港で開業。一昨季にはエアロヴェロシティで香港、日本、シンガポールの3か国・地域でG1制覇の快挙。56歳。



甘粕代三の眼
 オサリバン師が言うように楊オーナーのエアロに対する愛情は格別のものがある。愛馬の小旗を作って友人らと競馬場に駆けつけ応援する姿は香港の競馬ファンの誰もが目にしているほどだ。師は8歳という高齢をしきりと気にしていたが、南半球産のエアロはこの夏に加齢したばかり。北半球産の8歳のよりは半年若い。また、セン馬は競走寿命が長く、前走のトライアルでの馬体はその年齢を全く感じさせることはなかった。ラッキーバブルズのF.ルイ調教師は地元馬ではエアロを最も警戒していたが、それも十分理解できる。新旧対決、世界交代の一戦との色彩が強い今年の香港スプリントだが、2度の挫折から復活したエアロには主役の座を譲らせない実力と経験が十分残っている、と見た。
(12月5日午前、シャティン競馬場にて)


※次回(12/7)はJ.ムーア、T.クルーズ両調教師がインタビューに登場します。お楽しみに。


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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
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【香港国際競走】香港有力調教師インタビュー①~F. ルイ『ラッキーバブルズ、状態は95%、これでちょうどいい』初のG1制覇へ静かな闘志

遠くはサイレントウィットネス、アブソリュートチャンピオン、セイクリッドキングダム、ラッキーナイン……。香港は世界に名だたるスプリンターを輩出してきた。そして、香港スプリントはこの10年間、香港勢が7勝と遠征馬を圧倒。今年も昨年の覇者、ペニアフォビア、一昨年の覇者で昨年は高松宮記念、最後のクリスフライヤー国際スプリントまで総なめにしたエアロヴェロシティが世界最強スプリンターの頂に再び登りつめるべく、ここに駒を進めてきた。今年は香港の新星、ラッキーバブルズが挑戦状を叩きつけてきた。人馬とも初のG1制覇を目指すF.ルイ調教師に自信のほどを聞いた。(インタビュー/文・甘粕代三)

――オーストラリアで2戦1勝の後香港に移籍し、一昨年4月19日にデビュー。1年後の昨年4月には重賞初制覇(スプリント・カップ=HKG2・2015/4/3・シャティン・芝1200m)と、とんとん拍子の出世ですね。

F.ルイ調教師(以下「ルイ」) 移籍時から期待の高い馬だったけれども、ここまで出世してくれるとは予想を超えていましたよ。

――シンガポール・ターフクラブがクリスフライヤー国際スプリントを廃止したことに伴って、昨季からG1に昇格したチェアマンズ・スプリント(5/1・シャティン・芝1200m)ではオーストラリアの怪物、シャタクワの2着、香港勢では最先着と急上昇を印象つけましたね。

 あれで一線級と十分戦える自信がつきました。あの後、休養に入りシーズンオフをしっかりと休養して更に地力がアップした感じがあります。

――前走のトライアル、ジョッキークラブ・スプリントではエアロ、ぺニアの香港スプリント覇者、年度代表馬のエイブルフレンドを向こうに回して堂々の1番人気に支持されました。

 今季使い始めのプレミア・ボウル(G2・10/23・シャティン・芝1200m)を快勝していましたし、他の馬に比べると順調に来ていましたから。

――レースは後方2番手から直線大外を回っての2着。本番に向けて足を測ったようにも見えました。仕上げもトライアル仕様と拝見しましたが?

 大目標は香港スプリントですから、85%程度の仕上げでした。直線での伸び脚は予想通りでした。

――トライアルから2週以上がたちました。現在は100%ですか?

 95%くらいでしょうか。

――あと5日で残りの5%を仕上げて、本番には100%で臨めるということですか?

 95%の仕上げで丁度いいのです。100%まで仕上げては、馬によくないのですよ。

――95%でも十分勝負になる?

 そう願っています。自在性のある馬ですので枠は問いませんが、レースがしやすい真ん中近くを引きたいですね。

――さて、どの馬が相手とお考えですか?

 日本の馬はどうなの? ロードカナロアのような馬が来たら敵わないよねえ。地元馬ではやはりエアロヴェロシティを最も警戒しているよ。トライアルでもラッキーと差のない3着だったし、2戦叩いて3着。今回は仕上げてくるだろうし。

――香港スプリンター陣は世代交代の時期に差し掛かっているように思えます。ラッキーバブルズがその主役にとってかわるのは確実ではないでしょうか?

 そうであってほしいですね。早晩そうなることを楽しみにしていますよ、その力は十分にあります。

HKIR2016 F.ルイ厩舎出走馬
ラッキーバブルズ/セン5 /B.プレブル騎手/香港スプリント


フランシス・ルイ=呂健威 調教師
香港見習騎手学校を卒業し1975年から82年まで騎手として36勝をあげる。96年に開業。成績は地味だが香港競馬界随一の誠実で温厚な性格で知られ、昨季ラッキーバブルズで06年以来2度目のG2勝ち。香港スプリントで悲願のG1制覇を狙う。57歳。



甘粕の眼
 F.ルイ調教師は騎手時代から目立たぬ存在だったが、温厚で誠実な人柄からオーナー、記者から「威哥(ワイゴー、ワイ兄さん)」と慕われている。その威哥に遂にG1制覇のチャンスが到来した。インタビューでは相変わらず言葉少なく、強気の発言を耳にすることはなかったが、落ち着いたやり取りの中から静かな闘志が確実に伝わってきた。世代交代を迎えている香港スプリント陣に新たな主役が現れる予感がしてならない。
(12月5日午前、シャティン競馬場にて)

※次回(12/7)はJ.ムーア、T.クルーズ両調教師インタビューになります。お楽しみに。


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1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
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【香港国際競走】Road to HKIR⑥~ノットリスンが大金星!新星、古豪とも本番へ好感触!HKIRトライアル振り返り(3)

ノットリスントゥーミーが大金星!新星ラッキー、古豪エアロとも好発進
【ジョッキークラブ・スプリント】
 さて、この日のトライアル3レースの掉尾を飾ったのがジョッキークラブ・スプリントです。香港スプリンターと言えばサイレントウィットネスの時代から世界最強のレベルと層を誇ってきました。ドバイミーティングでアンバースカイ、スターリングシティー、リッチタペストリーらがスプリント戦でその実力を世界に誇示し、今年も韓国馬事会初の国際競走、コリア・スプリントでスーパージョッキーが世界最強のレベルと層の厚さを証明しています。

 さて、その香港スプリンター陣はちょうど世代交代の時期に差し掛かっています。昨年の高松宮記念を快勝し、今年は連覇を目指して来日しながら疝痛のため直前で出走を回避したエアロヴェロシティも既に8歳。エアロを中心にした既存勢力に今季初めから短距離重賞で台頭してきたラッキーバブルら新興勢力が激突。どちらが本番に向かうのかが最大の焦点でした。また、引退の危機から復活をかけた世界のマイル王、エイブルフレンドが敢えて距離を詰めてここを使ってきたことで、更に興味深いレースとなりました。

 このレースはエアロのオーナー、ダニエル楊毅さんのお供でパドックに降りて、間近で出走10頭の状態をチェックしました。注目のエイブルは相変わらず雄大な馬体でしたが、約1年の休養明けとあって日本の年度代表馬にしてマイル王のモーリスを迎え撃った全盛時に比べると、張り切った馬体も唸るような気合も見られず復調途上であることが明らかでした。これに対して、エアロは休み明けのプレミア・ボウル(G2・10/23・シャティン・芝1200m)を叩いて3着と順調。8歳とは思えないほどの馬体と気合に見惚れるばかりです。香港ではセン馬がほとんどですが、去勢された馬は性的興奮を覚えることが少ないせいか競走寿命が牡馬よりも長く、単に年齢だけで判断することは香港では禁物です。

 また、南半球生まれのサラブレッドは1月ではなく夏に加齢するので8歳の秋ではなく明け8歳。十分主役を張ることができる状態と見ました。また、昨年の香港スプリント覇者、ペニアフォビアは昨年と同様のステップでトライアルに臨み、内の4番枠を引いて一気にハナを奪う構え。こちらはA.クルーズ得意の叩いて仕上げる作戦なのか、まだ馬体に余裕が感じられました。

 新興勢力からは昨季、スプリントカップ(HKG2・4/3・シャティン・芝1200m)で初重賞勝ちを収め、今季も休み明けのプレミア・ボウルでエアロを破ったラッキーバブルに同じくエアロに先着したアメージングキッズが既成勢力に迫る構え。人気は新興勢力に集まり、ラッキーが単勝2.4倍、アメージングが3.9倍と人気を分け合い、エアロが5.1倍、エイブルが6.6倍とここまでが一桁。これにぺニアが12倍、それ以下は30倍以上と人気は上位5頭に集まりました。

 先手を取ったのは予想通りぺニア、好枠を利して先頭に立つと外から押してダッシングフェローが並びかけ2頭がレースを引っ張りました。2馬身ほど空いて3番手にはノットリスン、さらに2馬身ほどにエアロ、ここまでが先行集団。1番人気のバブルは復活をかけるエイブルを前において後方3番手、その前に2番人気のアメージング。最初の2ハロンは23秒46と平均よりも遅め、2頭が並走した次の2ハロンは21.97とペースを上げて直線! 2列縦隊だった馬群は内と外に大きく広がり、最内でペニアが懸命に粘りこみを図るところを残り200で馬場中央からノットリスンが先頭に、後方から競馬を進めていたバブルが大外から襲い掛かり半馬身まで迫ったところがゴールでした。4分ところから足を伸ばしたエアロが3着を確保、その内側にエイブルが4着。7着のペニアまでが2馬身半という大接戦でした。

 単勝43倍と軽視されながら大金星を上げたノットリスントゥーミーはオーストラリア産の6歳セン馬。2013年にオーストラリアでデビューし、1100~1300mの短距離戦を使われ、G3を1勝、G1で2着2回を含む9戦3勝2着3回と活躍した後、香港に移籍。15年4月7日、いきなりボウヒニア・スプリント・トロフィー(HKG3・シャティン・芝1000m)を使われ3着。2走後のシャティン・ヴァーズ(HKG3・5/31・シャティン・芝1200m)で香港初重賞制覇。その後もスプリント戦を中心に使われ、昨季はナショナルデー・カップ(HKG3・2015/10/1・シャティン・芝1000m)、ボウヒニア・スプリント・トロフィー(HKG3・3/5・シャティン・芝1000m)と直線芝1000mのHKG3を2勝。その勢いを昨季はドバイ・ワールドカップデーにも遠征しましたが、ご他聞に漏れずドバイ遠征後には調整に手間取って勝ち星をくわえられないまま昨季を終えました。

 今季もこの日のトライアルに向けて2戦叩いたものの5着、8着と復調を見せなかったため、注目を集めることはありませんでした。平均よりも遅めの流れを3番手追走から抜け出したレースは展開に恵まれた点も否定できませんが、本番に向けて見事復活を果たしましたといえそうです。大一番に強いJ.ムーア厩舎は3頭出しの大攻勢でしたが、トライアル勝を含む重賞4勝のノットリスンは厩舎だけではなく、香港勢総大将として香港スプリントに臨むことになります。
 
 1番人気のバブルは後方3番手から直線大外に勝負をかけ2着。調整もレースも本番を意識したもので、ここは十分合格点。新興勢力の筆頭としての力は十分示し、更に上積みも期待できます。直前までの調整を見た上で最終結論を出しますが、トライアルが終わった時点ではバブルが香港勢では1番手に推したいというのが、トライアルからの結論です。エアロも直線じりじりと伸びて内のエイブルを抑えて3着。昨季後半の不運から脱却したことを印象付け、本番へ視界は良好です。逃げたペニアは7着でしたが、ここまでの着差はコンマ4秒。展開次第ではどうにも転ぶ着差です。忘れられていた古豪が復活し既成、新興勢力ともその力をいかんなく発揮したトライアルは香港スプリント陣が世代交代の中にありながら依然として世界最高峰にあることを証明したといえます。さて、これに日本から遠征したビッグアーサーレッドファルクスがどこまで迫れるか?

 最後にスプリント・トライアルから本番ではマイルに回るエイブルフレンドのことを少し。後方からレースを進め僅差の4着は香港馬王の力を示したと言えそうですが、全盛期を思えばやはり物足りないものを感じざるを得ません。本番までの3週間でどこまで回復できるのか、早めに香港に入ってじっくりと観察した上で改めてお伝えしたいと思います。
 本番直前には地元記者との対談、有力馬調教師インタビューなどをお伝えする予定です。ぜひお楽しみに!

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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)

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過去10年の結果 ~香港ヴァーズ 2016~

開催日 勝ち馬 性齢 調教国 タイム 騎手 調教師
2015/12/13 ハイランドリール 牝3 アイルランド 2:28.43 R.ムーア A.オブライエン
2014/12/14 フリントシャー 牡4 フランス 2:29.83 M.ギュイヨン A.ファーブル
2013/12/08 ドミナント 牡5 香港 2:27.29 Z.パートン J.ムーア
2012/12/09 レッドカドー セン6 イギリス 2:28.73 G.モッセ E.ダンロップ
2011/12/11 ドゥーナデン 牡5 フランス 2:27.50 C.ウィリアムズ M.デルザングル
2010/12/12 マスタリー 牡4 UAE 2:27.69 L.デットーリ S.ビン・スルール
2009/12/13 ダリヤカナ 牝3 フランス 2:27.51 G.モッセ A.ド・ロワイエ=デュプレ
2008/12/14 ドクターディーノ 牡6 フランス 2:29.14 O.ペリ R.ギブソン
2007/12/09 ドクターディーノ 牡5 フランス 2:28.2 O.ペリ R.ギブソン
2006/12/10 コリアーヒル 牡8 イギリス 2:27.1 D.マッキューン G.A.スウィンバンク

歴史・概要 ~香港ヴァーズ 2016~

香港ヴァーズは香港競馬年度シーズンの最初の中長距離路線のGI競走。香港では2000m以上の競走があまり日程に組み込まれていないため、ヨーロッパなど他地区の競走馬が地元勢を圧倒する事が多く見られる。1994年に国際リステッドとして【香港国際ヴァーズ】の名称で創設され、2000年に【香港ヴァーズ】に改称された。
開催時期の影響もあり、一線級の日本調教馬は、ほとんど有馬記念香港カップへ向かう傾向にあり、賞金などの理由で有馬記念に出走できない馬の挑戦が多い。日本馬ではステイゴールド(2001年)、サトノクラウン(2016年)、グローリーヴェイズ(2019、2021年)、ウインマリリン(2022年)が優勝している。

挑戦した日本馬 ~香港ヴァーズ 2016~

ステイゴールド 1着/香港ヴァーズ(2001年)
>>全競走成績を見る
血統
父:サンデーサイレンス
母:ゴールデンサッシュ
成績
50戦7勝
7億6299万+120万USドル+800万香港ドル
主な勝ち鞍
香港ヴァーズ(GI)
ドバイシーマクラシック(GII)
目黒記念(GII)
日経新春杯(GII)
引退レースで掴んだ金メダル

 現在は3冠馬オルフェーヴルを輩出するなどトップサイアーとして活躍しているステイゴールド、その現役時代は決して平坦な道のりではなかった。2歳の12月にデビューし、5戦目で初勝利。その後2勝を条件戦で挙げるも京都新聞杯、菊花賞では見せ場なく敗退した。しかし、年が明けるとステイゴールドのその秘めた素質が徐々に花開く。天皇賞春(GI)で10番人気の低評価ながら2着に入ると宝塚記念(GI)2着、天皇賞秋(GI)2着、有馬記念(GI)3着、その翌年も宝塚記念(GI)3着、天皇賞秋(GI)3着と第一線で活躍。
 その実力は誰もが認めていたが、GIIでも勝ちきれない善戦マンという印象が強く、池江泰郎調教師は主戦の熊沢騎手から武豊騎手へ乗り代わりの決断を下し、目黒記念(GII)へ出走。2年9ヶ月ぶりの勝利を飾った。レース後、武豊騎手は「クラシック並の大拍手だった」と語るほど多くのファンが歓喜したレースであった。その翌年、日経新春杯(GII)で重賞2勝目を挙げたステイゴールドはドバイシーマクラシック(GII)に出走。12番人気の低評価であったが、前年のワールドシリーズ王者ファンタスティックライトを競り落とし、大金星を挙げた。
 その後も国内レースに出走するも勝ちきれず、迎えた引退戦、香港ヴァーズ。これまで49戦し、GI未勝利のステイゴールドがついに報われる。レースでは後方でじっと脚を溜め、直線勝負へ。残り200mの時点で先頭馬と5馬身以上あり、厳しい展開であったが、1完歩ごとに差を詰め、「まるで背中に羽が生えたようだった」と武豊が語る鬼脚で初GI制覇を引退戦で飾った。同レースは競馬史に残るドラマチックレースに数えられ、多くのファンの語り草になっている。

施行年馬名性齢騎手調教師着順
2022年ウインマリリン牝5D.レーン手塚貴久1着
グローリーヴェイズ牡7J.モレイラ尾関知人3着
2021年グローリーヴェイズ牡6J.モレイラ尾関知人1着
ステイフーリッシュ牡6C.ホー矢作芳人5着
2019年グローリーヴェイズ牡4J.モレイラ尾関知人1着
ラッキーライラック牝4C.スミヨン松永幹夫2着
ディアドラ牝5O.マーフィー橋田満4着
2018年リスグラシュー牝4J.モレイラ矢作芳人2着
クロコスミア牝5岩田康誠西浦勝一10着
2017年トーセンバジル牡5J.モレイラ藤原英昭3着
キセキ牡3M.デムーロ角居勝彦9着
2016年サトノクラウン牡4J.モレイラ堀宣行1着
ヌーヴォレコルト牝5岩田康誠斎藤誠4着
スマートレイアー牝6武豊大久保龍志5着
2014年カレンミロティックセン6池添謙一平田修5着
2013年アスカクリチャン牡6岩田康誠須貝尚介7着
2012年ジャガーメイル牡8D.ホワイト堀宣行2着