第153回天皇賞・春(1日、京都11R、GI、4歳上オープン国際(指)、定量、芝・外3200メートル、1着本賞金1億5000万円 =出走18頭)2番人気
キタサンブラックが先手を取って押し切り、古馬の長距離王に輝いた。
武豊騎手が巧みなペース配分でスタミナを温存。未知の距離で最後に差し返す驚異の粘り腰を発揮して、4センチ差の激闘を制した。同騎手にとっては、70度目のJRA・GI制覇で初めての逃げ切り勝ち。競馬界のレジェンドにまたひとつ勲章が加わった。
新緑のターフで魅せたユタカマジックに、8万人近い大観衆が酔いしれた。昨年の
菊花賞馬
キタサンブラックが、天皇賞・春史上最も僅差となる約4センチ差の大接戦を制して、GI2勝目。
武豊騎手は前人未到のJRA・GI70勝を、GIでは自身初の逃げ切りで決めた。
「最後にもう一度差し返してくれた。強いですね。かわされても、もう一度伸びてくれると信じていました」
抜群のスタートを決めるとハナへ。長年の経験に基づく、瞬時の判断だった。「ゲートの駐立が得意じゃないので、逃げると決めたのはゲートを出てから。いいスタートを切れたので迷いはなかった」と振り返る。
マイペースに持ち込んで、前半1000メートル通過を1分1秒8のスロー。そのまま先頭で直線に向いた。ラスト1ハロンからは
カレンミロティックとの一騎打ち。一旦は完全にかわされたが、そこから二枚腰を発揮して差し返し、並外れた根性でハナ差勝ちを演じた。
「思い通りのペースでしたね。後ろとの距離はわかっていたし、前に出られたけど、まだ(余力が)残っている感じがした。多分勝っているとは思ったけど、際どいので写真判定まではドキドキしていた」
検量室前の馬上で首をひねりながら下馬。写真判定の末、スタンドからドッと歓声がわくと、ようやくユタカは満面の笑みを浮かべた。
今後は海外遠征を含めて未定。「馬の様子を見てから、具体的なことは考えます」と清水久調教師は明言を避けたが、改めて幅広い距離適性を示したことで、その選択が注目される。
けがを発端とした不振を脱して昨年は6年ぶりに年間100勝を超え、復調の兆しを見せていたユタカ。天皇賞・春7勝目で「平成の盾男」として存在感を見せつけ、完全復活を強くアピールした。前週は香港、この週は京都、そして今週末は米国(
ケンタッキーダービー=
ラニに騎乗)と世界を飛び回る天才が「さらに強くなりそうだし、才能豊かですからね。今後も楽しみです」と太鼓判を押す
キタサンブラック。騎手生活30年目を迎えたレジェンドとのコンビで、さらなる高みを目指していく。 (渡部陽之助)
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