第69回
皐月賞(19日、中山11R、GI、3歳オープン、せん馬不可、定量、芝・内2000メートル、1着本賞金9700万円、1~4着馬にダービー(5月31日、東京、GI、芝2400メートル)の優先出走権=出走18頭)馬名にふさわしい圧勝だ! 単勝3番人気の
アンライバルドが直線で豪快に抜け出し、コースレコードにコンマ2秒差と迫る1分58秒7(良)で完勝した。
岩田康誠騎手(35)は中央移籍後、初のクラシック制覇。ダービーで父
ネオユニヴァースに続く2冠獲得を目指す。“3強”で断然人気に支持された
ロジユニヴァースは14着、
リーチザクラウンは13着と惨敗した。
初夏を思わせるポカポカ陽気に包まれた中山競馬場。3強対決を楽しみに来場した7万超の大観衆は、
アンライバルドの強さに度肝を抜かれた。
圧巻だったのが4コーナーから直線の攻防だ。好位からレースを運んだ
ロジユニヴァース、
リーチザクラウンのライバル“2強”が伸びあぐねるのとは対照的に、中団外めを追走していた
アンライバルドは
岩田康誠騎手の仕掛けに弾かれたように即座に反応した。グンと加速すると先行勢を置き去りにして先頭へ。岩田はチラッと後方を確認すると内に進路を取り、あとは1冠のゴールへ突き進んだ。
勝利の瞬間、岩田は歓喜の雄叫びを上げた。検量室前に引き上げてくると、左手に持っていたステッキを関係者に向かってヒョイと投げた。愛馬の首を2度両手で軽く叩くと、感謝と安堵の気持ちを伝えるように自分の顔を首に押しつけた。
持ち前の瞬発力を最大限に生かす-。岩田はこの一点を肝に銘じてレースに臨んだ。「道中もしっかり折り合えた。勝負所で2回ぐらい行きそびれて“うわーっ”と思ったけど、少し早いかなと思いながら4角手前でGO
サインを出すと、物凄い反応でまとめてかわしてくれた」。息を弾ませながらインタビューに答える姿は、1冠にかけた気迫と渾身の騎乗を感じさせた。「相手うんぬんよりも、この馬の競馬をするだけ。それだけを意識して乗った。この1週間緊張したけど、責任を果たせて良かった」。重圧から解放され、童顔に和やかな表情も浮かぶ。
岩田のクラシック制覇は地方騎手時代の04年
菊花賞(
デルタブルース)以来2度目で、06年に中央に移籍してからは初勝利。
皐月賞には2歳牡馬王者
セイウンワンダーというお手馬もいた。苦渋の選択だっただけに、この勝利は格別だ。
3強対決にケリをつけた
アンライバルドは、
ネオユニヴァースの初年度産駒で、父子での
皐月賞制覇。
日本ダービー(5月31日、東京、GI、芝2400メートル)では、父と半兄
フサイチコンコルド(96年)に続く親子&兄弟制覇に挑む。「父も兄もダービー馬だし、ダービーの方がよりチャンスがあると思う。きょうは先を見据えて余裕を持たせた仕上げだった。課題は何もない」と友道調教師は2冠へ自信を見せる。
「改めて能力の高さを確信できたし、随分お利口にもなった。距離も問題ないし、無事にダービーまで行ってくれればいい」と岩田も2冠奪取を意識する。
「無敵」「ライバル不在」を意味する
アンライバルド。1強をアピールしたネオ産駒は、コンビを組み4戦無敗の豪腕ジョッキーと競馬最高峰のダービーを獲りに行く。(片岡良典)