第42回
エリザベス女王杯(12日、京都11R、GI、3歳上牝馬オープン国際(指)、定量、芝・外2200メートル、1着本賞金9300万円 =出走18頭)最強牝馬決定戦は5番人気の
モズカッチャンが、ゴール直前で差し切り勝ち。
オークス2着、
秋華賞3着の3歳世代の実力馬が、年長馬を相手に悲願のGI初制覇を飾った。ミルコ・デムーロ騎手(38)は、昨年の
クイーンズリングに続く連覇とともに今年のGI5勝目。年間最多GI勝利へあと1となった。タイム2分14秒3(良)。2着は
クロコスミア、3着は
ミッキークイーン。1番人気の
ヴィブロスは5着に敗れた。
重ねていた惜敗が糧となり、栄冠につながった。GI制覇まであと一歩だった
モズカッチャンがGI馬4頭を含む豪華メンバーを相手に悲願達成。秋晴れの淀のターフで今年のGI5勝目を決めたM・デムーロ騎手は馬上で「よしっ!!」と力強くガッツポーズ。下馬すると、即座に鮫島調教師と熱く抱き合い、喜びを分かち合った。
「すごい、とても、うれしいです。ゴール前は、『これは、勝てる』と思っていました。一生懸命に走ってくれる、真面目な馬です」
春はサンケイスポーツ賞
フローラSで重賞初Vを飾り、
オークスで2着。秋を迎えて初戦の
ローズS(7着)からはM・デムーロ騎手に手綱が託された。そしてこれが3戦目となった名手はスタートを決めると、5番手のインを確保。前半1000メートルが1分2秒0という超スローペースでも「(5)番枠は一番いいと思っていました。一番いいところに行くことができました」と冷静沈着に対処。終始、内々の“経済コース”を立ち回り、最後は先に抜け出していた
クロコスミアを図ったようにゴール直前で差し切った。
「直線はいい手応えでした。じりじりと伸びましたね。最後まで一生懸命に走ってくれました」
前走の悔しさを見事に晴らした。
秋華賞は1コーナーで落鉄する不運がありながら、“ド根性”で3着好走。その前走は早めの仕掛けで、差されただけに、反省をしっかり生かした“修正力”がJRA・GI9連続3着以内という驚異的な数字の源にもなっている。
鮫島調教師は2000年の厩舎開業から、延べ62頭目の挑戦で悲願のGI初制覇。「最近はよりGIを勝ちたい気持ちが強くなっていました。最高の気持ちです」と目を潤ませた。そして「僕に『GIをプレゼントしたい』と前から言ってくれていたので、『ありがとう』といいました」。M・デムーロ騎手はJRAへ移籍する前から親身になって面倒をみてくれた“恩師”へ最高の贈り物を届け、受け取ったトレーナーとの絆がさらに深まる勝利にもなった。
今後については「少しゆっくりしてもらって、また決めていきたい」と鮫島調教師。3歳で
エリザベス女王杯を制した馬には2003年の
アドマイヤグルーヴや、07年の
ダイワスカーレットなど名牝が
ズラリ。史上8頭目の快挙を達成し、追う立場から追われる立場となった“新女王”が、どこで2つ目のGIタイトルを奪取するか、牡馬もなぎ倒すのか、夢は広がっていく。 (山口大輝)