第50回
スプリンターズステークス(2日、中山11R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・外1200メートル、1着本賞金9800万円 =出走16頭)ミルコ・デムーロ(37)=栗・フリー=騎乗の3番人気
レッドファルクスが中団から力強く伸び、逃げた
ミッキーアイルをアタマ差とらえてV。GI初制覇を飾った。タイム1分7秒6(良)。今後はJBCスプリント(11月3日、川崎、交流GI、ダ1400メートル)、
香港スプリント(12月11日、シャティン、GI、芝1200メートル)、ブリーダーズCターフスプリント(11月5日、米サンタアニタ、GI、芝・約1300メートル)が視野に入っている。単勝1・8倍の断然人気
ビッグアーサーは12着に沈んだ。
日本ハムをリーグ優勝に導いた大谷翔平ばりの“二刀流”だ。今春までダート路線を中心に歩んできた
レッドファルクスが、芝に転戦してGIII、GIを連勝。地道に力を付けてきた5歳馬が短距離界の頂点にまで到達した。
「とても気持ちいい。早めに動いたけど、最後まで伸び続けた。この馬には3回乗って3回勝ったし、すごく大好き。性格がいいし、賢いし、併せたら負けない」
頬を紅潮させながら、M・デムーロ騎手はコンビ3戦3勝の相棒をたたえた。レースでは、五分のスタートを決めて中団の外めをキープ。経験の浅い右回りでもスムーズに4コーナーを回り、直線は鋭い伸び脚を発揮して
ミッキーアイルを測ったようにアタマ差とらえた。「未勝利戦を勝ったときはそんなにいい馬だと思わなかったけど、どんどん良くなっている」と鞍上もその成長力に脱帽だ。
管理する
尾関知人調教師(44)は、開業8年目でのGI初制覇。人馬を馬場へ送り出す際、デムーロ騎手からおもむろに「先生はGI勝ったことある?」と聞かれ「ないです」と答えると、「じゃあ頑張ってくる」と約束され、それが果たされた。GI挑戦は22度目。会見では涙を浮かべ、初めて味わう喜びに浸った。
ファルクスは、デビュー当時から左後肢に疲れが出やすい体質。キャリアの半分を占めるダート戦を含め、負担の少ない左回りを中心に使われてきた。昨秋あたりから「トモ(後肢)がしっかりしてきた」(尾関師)ものの、右回りに良績がないのは事実。指揮官も半信半疑だったが、そんな不安を力強く吹き飛ばした。
「芝もダートも走れる二刀流の馬。今後は
チャンピオンとして恥ずかしくない競馬をさせないといけない」と尾関師は気を引き締める。今後はJBCスプリント、
香港スプリント、さらにはこの優勝で出走権を得た米GI・ブリーダーズCターフスプリントが選択肢として浮上。短距離界の新王者に就いた異能の二刀流ホース・
レッドファルクスは、メジャー志向を持つといわれる大谷より早い海外挑戦も視野に入れて、大きく飛躍していく。 (板津雄志)
★2日中山11R「
スプリンターズステークス」の着順&払戻金はこちら
★入場&売り上げ
2日の中山競馬場の入場人員は3万7383人で前年比97・7%とダウンしたが、秋のGIシリーズ第1弾
スプリンターズSの売り上げは126億6409万3600円で同104・0%とアップした。今年の平地GIは12レース中、
桜花賞、
オークス、
安田記念以外の9レースの売り上げが前年比増となっている。
アラカルト ◆ミルコ・デムーロ騎手 昨年の
コパノリチャード(13着)に次ぐ2度目の挑戦で初勝利。JRA・GIは17勝目。重賞は53勝目。 ◆
尾関知人調教師 JRA・GIは22度目の挑戦で初V。
スプリンターズSは
サクラゴスペルでの2013年(11着)、昨年(2着)に次ぐ3度目の挑戦だった。重賞は9勝目。 ◆スウェプトオーヴァーボード産駒 JRA・GIは21度目の挑戦で初V。
スプリンターズSは4度目の挑戦だった。 ◆関東馬の勝利 GIになった1990年以降、14年
スノードラゴンに次ぐ8勝目。関西馬は16勝で、他に香港2勝、豪州1勝。
レッドファルクス父スウェプトオーヴァーボード、母ベルモット、母の父サンデーサイレンス。芦毛の牡5歳。美浦・
尾関知人厩舎所属。北海道千歳市・社台ファームの生産馬。馬主は(株)東京ホースレーシング。戦績18戦8勝。獲得賞金2億4571万8000円。重賞は2016年GIII
CBC賞に次いで2勝目。
スプリンターズSは
尾関知人調教師、ミルコ・デムーロ騎手ともに初勝利。馬名は、「冠名+ラテン語で『鎌』の意味を持つ両手剣」。