2月いっぱいで、定年を迎える4人の調教師、引退する4人の騎手にとって今週末は最後の競馬。GI7勝など輝かしい実績を残した
鶴留明雄調教師(70)=栗東=は、ラストウイークに14頭をそろえた。重賞には
アーリントンCに
ローレルブレット、
阪急杯に
キョウワマグナムがスタンバイ。名トレーナーが、こん身の仕上げで最後の戦いに臨む。
数多くの活躍馬を手がけた
鶴留明雄調教師が今週末を最後に、約54年に及ぶ競馬人生に幕を下ろす。
「定年まで、スタッフともども元気に仕事ができたことは幸せでした。オーナーやさまざまな関係者の方々のおかげです」
感謝の言葉を口にする鶴留師は、鹿児島県出身の九州男児。たくましさを漂わせる一方で、頑固なイメージもあった。弟子の
池添謙一騎手も「今でも先生と話すときは背筋が伸びる」と言う。
馬を育てる手腕は卓越していた。1995年のダービー馬
タヤスツヨシは、その前々走の若葉Sでラチにぶつけられる大きな不利を受けて5着に敗退。肉体、精神面のダメージが心配されたが、慎重に調整を重ねて、
皐月賞2着から栄冠を射止めた。また、
スイープトウショウは馬場入りを嫌がる繊細な性格だったが、調教コースや時間帯を変更するなどの工夫で、最終的にはGI3勝の名牝へと導いた。
その名伯楽が、最終週に14頭の攻勢をかける。
アーリントンCの
ローレルブレットは「
朝日杯FS(9着)は包まれたので、
きさらぎ賞はスムーズな競馬を優先させて前に行った。先行しても5着にがんばったからね」。今度は2勝している芝1600メートルで、池添騎手も「得意の距離だし力も通用すると思う」と気合が入っている。
阪急杯の
キョウワマグナムは23日、栗東坂路で4ハロン55秒4、ラスト1ハロン12秒7。「動きはよかった。距離は少し長いが、展開が向けば」。そして、阪神日曜12R(ダート1400メートル)の
モエレジュンキンがラストラン。「いつもそこそこは来る(前走3着)し、持ち時計もあるから」と鶴留師。「最後なので、勝って少しでも恩返しできれば」と池添騎手も熱い思いを抱く。
「勝ったときより、負けたときのほうが印象に残っている」と悔しさをバネに勝負師としての磨きをかけてきた鶴留師。その集大成であるラストウイークで、有終の美を飾ってくれることだろう。 (下村静史)