第61回
安田記念(5日、東京11R、GI、3歳上オープン国際、定量、芝1600メートル、1着本賞金1億円=出走18頭)波乱の主役は唯一の3歳馬が演じた。
戸崎圭太騎乗、9番人気の
リアルインパクトが3番手から抜け出して優勝。タイムは1分32秒0(良)。クビ差の2着に猛追した
ストロングリターンが入り、
スマイルジャックは追い込み届かず3着だった。1番人気の
アパパネは直線で伸びを欠いて6着に敗れた。大井競馬所属の戸崎騎手はJRA・GI初勝利。グレード制導入後3歳馬の
安田記念優勝は初めてで、
堀宣行調教師(43)は管理馬が1、2着を独占した。
その名の通り、衝撃の古馬撃破だった。ラスト100メートルで先頭に立った
リアルインパクトが、外から追い込んだ同じ堀厩舎の
ストロングリターンをクビ差振り切ってV。
ディープインパクト産駒が、3歳馬による初の
安田記念制覇という大仕事をやってのけた。
「最後は後ろから足音が聞こえたが、手応えがあったので辛抱してくれると思った」。大井所属の
戸崎圭太騎手はパートナーの踏ん張りを笑顔で称える。地方リーディングの名手は、過去に8度、JRAのGIに挑戦したが、09年のJC6着(
エイシンデピュティ)が最高だった。「中央競馬のウイニングランで、自分が背中にいられたことは本当に光栄です」。大観衆の前でガッツポーズとお辞儀を何度も繰り返し、喜びと感謝の気持ちを示した。
並み居る古馬の強豪が相手だったが、レースぶりは3歳とは思えぬほど堂々たるものだった。前走の
NHKマイルC(3着)は出遅れたが、ゲート練習の成果で、好スタートから逃げる
シルポートの直後を追走。道中で
ジョーカプチーノを行かせて3番手をキープすると、ラスト400メートルで追い出した鞍上の叱咤に応えて脚を伸ばした。
「54キロを生かして、前で競馬をするつもりだった。初めて乗ったが、素直ないい馬で、折り合いもつくと思ったので、積極的に前へ出して行った」。その作戦がズバリ。3歳馬で他馬より2~4キロ斤量が軽かったことも、直線の粘り強い脚につながった。
堀宣行(のりゆき)調教師は昨年から今年にかけて重賞10勝。これは全国を通じてトップ。GI4勝も国枝、松田博調教師に並んだ。さらに84年のグレード制導入後では6度目となる同厩舎のGIワンツーまで決めた。「古馬とは差があるかなと思っていたけど、今年は3走目でフレッシュな状態で使えたのが一番。
ディープインパクト産駒は素晴らしいですね」と偉大な父にも感謝した。
リアルインパクトは東日本大震災発生時、宮城県の山元トレセンに放牧中だった。多くの人に支えられ、アクシデントを乗り越えてつかんだ勲章。心身ともに逞しい
ディープインパクト産駒の前途は洋々だ。(下村静史)
★3歳はGIでは初V、通算では59年ぶり3勝目
1951(昭和26)年に創設された
安田記念は格式が高いレースとして知られ、一流馬が多く出走してきたが、83年まではハンデ戦だったため、
チャンピオン決定戦とはいえなかった。だが、グレード制が導入された84年に定量のGIとして上半期のチャンピオンマイラー決定戦になった。第1回にイツセイ、第2回にスウヰイスーと3歳馬が2勝しているが、GIになってから3歳は97年
スピードワールドの3着が最高の成績で、今回
リアルインパクトが初優勝となった。なお、84年から95年までは5月中旬の開催だったため、3歳馬は出走資格がなかった。