第57回
クイーンS(16日、札幌9R、GIII、3歳上牝馬オープン国際、別定、芝1800メートル、1着本賞金3900万円=出走14頭)“洋芝クイーン”の戴冠-。単勝11番人気の
ピエナビーナスが、内枠からロスなくレースを運び、直線で鋭く抜け出して重賞初V。札幌&函館で全ての勝ち星を挙げていた洋芝娘が、人気馬を一蹴し得意の舞台で舞った。1分48秒2(良)。
古川吉洋騎手(31)=栗・フリー=は11年8カ月ぶり2度目の重賞制覇。1番人気の
ザレマは1馬身差2着に敗れた。
古川吉洋騎手のイン強襲に導かれ、
ピエナビーナスが格上挑戦で重賞初制覇。鞍上は不屈の精神力で11年8カ月ぶりのタイトルをもぎ取った。
札幌と函館ですべての勝利を挙げていた“洋芝娘”は、スペシャルフロートが引っ張る流れをインで我慢。直線に向いても前が開くまで耐え、一瞬の隙を古川吉は見逃さなかった。追い出されると牝馬らしい一瞬の切れ味を発揮し、上がり3ハロン34秒9の最速タイで突き抜けた。
「内枠((3)番)だったので、内で(前が)開くまで辛抱しようと思っていました。いい感じで進められました。厩舎の方がいい感じで仕上げてくれましたからね」
97年GI阪神3歳牝馬S(現
阪神JF)の
アインブライド以来となる重賞2勝目を挙げた古川吉は、検量室に入る時に涙を浮かべていた。「ボクはマイペースなので、(重賞勝利は)深く考えていませんでした。でも、嬉しくないわけがないです」。
古川吉は7月19日の札幌12Rで落馬し、右腓骨骨折の重傷と診断された。しかし、2週間休んだだけで今月9日に復帰した。現在も治療中で、歩くときもぎこちなさが残っている。「自分の気持ちで戻ってきました。馬に乗っている方が楽ですからね」。自分の体にムチを打っての重賞制覇は、格別な味わいがあるに違いない。
「うまく折り合いがついていい感じのレースができた。次? 準オープンを使おうと思っていたくらいだから」。
南井克巳調教師は、11番人気で快勝した愛馬に笑みが浮かぶ。大好きな北海道で重賞ウイナーまで登り詰めた
ピエナビーナス。この秋は、北海道以外の競馬場でも重賞戦線を盛り上げてくれるはずだ。(高尾幸司)