導師嵐山
第45回小倉記念(2日、小倉10R、GIII、3歳上オープン国際、ハンデ、芝2000メートル、1着本賞金4300万円=出走18頭)サマー2000シリーズ第3弾は、単勝16番人気の8歳馬ダンスアジョイがゴール前の大混戦から内をついて抜け出し、重賞初制覇を飾った。1分58秒3(良)。管理する松永幹夫調教師(42)=栗東=も開業3年目でうれしい初タイトル。ダンスは新潟記念に参戦し、シリーズ王者を目指す。1番人気のホッコーパドゥシャはハナ差2着に敗れた。 真夏の太陽が照りつける小倉にさわやかなスマイルが弾けた。大接戦のゴール前。16番人気のダンスアジョイがイン強襲で抜け出してくる。ハナ差でもぎとった歓喜は、馬だけでなく松永幹調教師にとっても重賞初制覇の瞬間だった。 「びっくりしたね。最後は勝ったと思って、バンザイしましたよ。重賞初制覇? うれしいの一言。人気もなく、気楽に臨めたのが良かったかもしれませんね」 42歳の青年トレーナーは、ジョッキー時代と変わらない笑顔で喜びを口にした。レースはいつも通りに後方待機。前半1000メートルが59秒2と速いペースで流れる中、角田晃一騎手が4角で距離ロスがない内をつき、勝負に出る。馬群をうまくさばいて大混戦を制した。 「不利なく、内もスムーズに開いてくれましたね。頭が高いので、最後は分が悪いかなと思ったんですが…。松永幹先生にはお世話になっているし、良かったです」。今夏の小倉初勝利を重賞Vで決めた角田も目尻を下げ、トレーナーとガッチリ握手した。 忘れられない1勝となった。騎手時代にJRA1400勝を挙げ、調教師に転身。開業3年目の今年はレッドディザイアで挑んだ桜花賞、オークスはともに2着。タイトルに一歩及ばなかった。「勝つときはうまくいくものですね。騎手で勝ったときとの違い? レースは毎週あるけど、(重賞に)出ることも難しいですからね」と、ひと味違う余韻に浸っていた。 その華やかなジョッキー時代に取り残した“ピース”を埋めることもできた。「小倉で重賞を勝ったことなかったんですよね。騎手時代はそれ以外の(9つの)競馬場で勝っているので、“完全制覇”になりました」と満面の笑みだ。 この後は新潟記念(30日、新潟、GIII、芝2000メートル)に向かい、サマー2000の王者を目指す。「今回より条件はいいはず。可能性はありますよね」。松永幹調教師が育てた8歳馬が、夏の主役に躍り出た。(土井高志)