第59回
安田記念(7日、東京11R、アジアマイルチャレンジ最終4戦目、GI、3歳上オープン国際、定量、芝1600メートル、1着本賞金1億円=出走18頭)春のマイル王決定戦・
安田記念は、1番人気の
ウオッカが直線の激しい攻防を突き破って快勝。牝馬では最多のGI6勝目を挙げ、獲得賞金は10億円を突破した。タイム1分33秒5。次のレースは未定だが、GI最多タイの7勝、さらにどの馬も達成していない金字塔も見えてきた。日本中のファンをも魅了する
ウオッカ。キミは最強にして最高だ!!
悲鳴が歓声、絶叫に変わる。衝撃的な強さだ。
スムーズに進めた
ウオッカを突然襲った直線の“落とし穴”。ごちゃついて進路がない! 単勝180円の断然人気を背負った
武豊騎手も内心焦ったはずだ。しかし、ここからが彼女の真骨頂。ゴールまで100メートルを切ったあたり。早めに先頭に立った1歳年下のダービー馬
ディープスカイを瞬時にかわして
安田記念を連覇。着差は3/4馬身だったが、7馬身差あった前走
ヴィクトリアマイルより圧巻だった。どんな不利も跳ね返す、美しくも逞しい姿に8万超の観衆、日本中の競馬ファンがハートを熱くした。
「前の馬が見事に横一列で…。抜け出すスペースがなくてヒヤヒヤしました。4コーナーまでロスなく乗れて手応えがあったので、スペースができれば大丈夫と待っていました」
レース後の回顧とは裏腹に、
ウオッカと
武豊は勇猛果敢なアタックを何度も試みた。1頭分外へ、前が詰まってまた外へ。外の馬に接触して一旦は内に押しやられたが、反動をつけて馬群をこじ開けると視界が開けた。その状況をレース直後の会見で「女の子が満員の電車のオジさんたちに意地悪されて降りられないような感じ」と例えた。その後のレース回顧では「強引に降りようとする関西のオバちゃんのように-」と
リアルな表現を使って笑わせた。
天気にも恵まれて稍重でスタートした芝コースは良馬場まで回復。初夏の太陽よりまぶしいユタカの笑顔がこぼれた表彰式にスタンドのファンからは盛大な拍手。「皆さん、ドキドキさせる形ですみませんでした!」。地鳴りのような歓声だ。「
ウオッカは勝つことが義務。次もいいレースをしたい」
今回の勝利で
メジロドーベルを超えて牝馬最多のGI6勝目を挙げ、獲得賞金は牝馬初の10億円を突破した。ファン投票で断トツ人気の
宝塚記念(28日、阪神、芝2200メートル)への出否は未定だが、「ここ2走の彼女の走りを見れば、皆さんと同じように私も大きな期待を持って乗ることになるだろうと思います」とユタカはJRA最多タイとなるGI7勝目に期待をふくらませている。
「もっと良くなる可能性があります」。
ウオッカ&
武豊騎手が、ファンの限りない願望を次走以降も満たしてくれるに違いない。(阿部裕昭)
★
ウオッカの母、お腹に全弟妹
ウオッカの母
タニノシスター(16歳)は昨年は不受胎だったが、
ヴィクトリアMの際には確認できなかった
タニノギムレットとの間の子(
ウオッカの全弟妹)がお腹に息づいていることが判明した。北海道・静内にあるカントリー牧場の西山貴司場長(51)は「
ウオッカの偉業もあってもう最高です」と孝行娘の快挙を称賛していた。
★審議
安田記念は(2)
スマイルジャックが躓いたことについて審議となったが、自ら前の馬((11)
コンゴウリキシオー)に接触したものとして到達順位の通り確定した。なお、
スマイルの
岩田康誠騎手には最後の直線で内側に斜行して、(5)
ホッカイカンティの進路に影響を与えたとして過怠金1万円が科されたが、その件は審議内容とは関係ない。
★売り上げ前年比98.2%
安田記念の売り上げは190億7313万7000円で対前年比98.2%とダウン。対照的に東京競馬場の入場人員8万3135人は対前年比124.2%と大幅にアップ。久々の好天に加えて、
ウオッカと
ディープスカイのダービー馬対決で場内は大いに盛り上がった。今年の平地GI10戦を終えて、売り上げが前年比増は
フェブラリーSと
桜花賞の2レース。逆に入場人員は増加傾向で、前年比でマイナスだったのは、強風の中で行われた
ヴィクトリアマイルと大雨だったダービーと天候に恵まれなかった2レースだけだ。