今週の中京ではフェブラリーSの前哨戦となる東海Sが行われる。ベテルギウスSを鮮やかに逃げ切ったアイオライトが勢いに乗って重賞取りのチャンス。“華麗なる一族”出身の関東馬が、尾張のダ1800メートルを逃げ切って東京のGIに凱旋する。
“華麗なる一族”の末裔(まつえい)が距離の壁に続き、重賞の壁も乗り越える。
アイオライトは初めて1700メートルに挑んだ福島民友Cで2着に入ると、さらに100メートル延ばした前走・ベテルギウスSで鮮やかな2馬身半差の逃走Vを飾った。現役時にスプリントGI2勝を挙げた父ローレルゲレイロの産駒は、JRA27勝中21勝が1400メートル以下。1800メートルを勝ったのはわずか2頭目だった。なぜ、この馬は距離をこなせるのか-。担当の渡部厩務員は朗らかな笑みを浮かべながら母系のアシストを指摘した。
「ゲレイロの子供で1200メートル向きだと思っていたけど、イットーの血が入っているから距離がもつのかもしれないね」
アイオライトの曽祖母イットーは高松宮杯(芝2000メートル)、スワンS(芝1600メートル)と重賞2勝。その産駒もハギノトップレディ(桜花賞、エリザベス女王杯)、ハギノカムイオー(宝塚記念)と大レースで活躍したことから“華麗なる一族”と呼ばれた。それから40年近くの時が流れ、令和の時代に昭和の名血が蘇った。
前走後はひと息入れてマーチSに向かう予定だったが、デキの良さから続戦を決定。18日は美浦北馬場のCコースを軽く1周し、「状態は相変わらずいいよ。以前は俺の肩に乗りかかってきたこともあったけど、だいぶ扱いやすくなってきた」と渡部厩務員は気性面の成長に目を細める。
デビュー5戦目の交流GI全日本2歳優駿では逃げて頭差2着に惜敗。左前脚骨折などの影響で低迷した時期もあったが、再び重賞のステージに舞い戻ってきた。「前走はいい勝ち方だった。自分のリズムで行けた方がいいから理想はハナ。でも、同型もいるようだから共倒れを避けて運んでくれれば。あとは運があれば、だね」と渡部厩務員は結んだ。
馬名の由来となっているすみれ色の宝石は、古代にバイキングが羅針盤として用いていたと伝えられている。己の進路に迷いなし。距離延長で開花したアイオライトが、初タイトルに向けて突き進む。(漆山貴禎)
★華麗なる一族…アイオライトの3代母イットーからハギノトップレディが生まれ、その子に1991年の安田記念とスプリンターズSを制したダイイチルビーがいる。またイットーの子ハギノカムイオーは79年のセリで当時日本最高となる1億8500万円で落札され話題に。その評価どおりに宝塚記念を勝つなどの活躍をし、“華麗なる一族”の名声を高めた。この母系からはダート重賞5勝のマイネルセレクトが出ているが、久々に登場した活躍馬アイオライトで昭和の良血がふたたびスポットライトを浴びそうだ。
★東海Sの特別登録馬(想定騎手入り)はこちら 調教タイムも掲載