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【香港国際競走】Road to HKIR⑤~ビューティーオンリー、遂に主役に!HKIRトライアル振り返り(2)

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【香港国際競走】Road to HKIR⑤~ビューティーオンリー、遂に主役に!HKIRトライアル振り返り(2) | コラム | ウマニティ

ビューティーオンリー、遂に主役に! 春の2冠馬、サンジュエリーも好発進
ジョッキークラブ・マイル
 世界最強のレベルと層を誇った香港マイル陣も今年は混戦模様です。というのも総大将、エイブルフレンドが引退危機もささやかれた脚部故障に見舞われ、オーストラリアへ放牧。開幕を前に奇跡的な復帰を遂げたものの、順調さを欠いて今季使い始めはここではなく、ジョッキークラブ・スプリントに回ったからです。

 既にご紹介しましたが、香港の調教師は長期休養明け初戦に本来の距離適性よりも短いレースを使って、馬を覚醒させる戦術をとることがままあります。エイブルフレンドも昨季の初戦は1200m戦を人気薄で快勝しましたが、今年もその手法となりました。しかし、昨季と異って休み明け初戦を香港国際競走(HKIR)トライアルまで待たなくてはならなかったのが大きな誤算です。
 順調さを大幅に欠いたとはいえ奇跡の復活を遂げたエイブルフレンドは現在の香港競馬ではワーザーと並ぶ東西の正横綱。今年の香港国際競走の中でその動向に最も注目の集まる一頭です。エイブルフレンドに関しては次回のジョッキークラブ・スプリントの回顧で詳しくお伝えしますが、既に香港で1000勝以上の勝ち星をあげ、“千勝爺”との尊称をもつ名伯楽、Jムーア調教師がどこまで立て直してこられるのか、本番まで目を離すことはできません。

 エイブルフレンドなき香港マイル戦線は香港カップを目指す中距離路線がワーザーを欠いているのと同様、群雄割拠の混戦模様。これを証明するかのように単勝人気は香港マイルを目指して今季、セレブレーション・カップ(G3・10/1・シャティン芝1400m)2着、シャティン・トロフィー(G2・10/23・シャティン芝1600m)3着と重賞2戦を消化して着差を確実に詰めてきたビューティーオンリーと、前季の4歳三冠シリーズ香港クラシック・マイル(G1・1/24・シャティン芝1600m)と香港クラシック・カップ(G1・2/21・シャティン芝1800m)でワーザーを破って2冠を達成しているサンジュエリーが人気を分け合いましたが、いずれも単勝3倍以上。

 これに4歳の新星、ヘレンパラゴン、今季休み明けを一回叩いた昨季のスチュワーズ・カップ(G1・1/31・シャティン芝1600m)の勝馬、ジャイアントトレジャーまでが単勝一桁台。そして、セレブレーション・カップでビューティーオンリーらを破って重賞初制覇を果たした今季の上り馬、ジョイフルトリニティ、安田記念に今春挑戦したコンテントメントらが10倍台前半で続きました
 
 ビューティーオンリーのA.クルーズは例年、スロースターターなのですが、今季は開幕からダッシュをかけ、ビューティーオンリーは昨季のHKIRトライアル時(オンリーは昨季、2000mのジョッキークラブ・カップを使われています)よりも数段上の出来。一方のサンジュエリーは今季、シャティン・トロフィーから使い始め、休み明け2戦目のここは前走以上に仕上がって、単勝1、2番人気を分け合う両雄は甲乙つけがたし。ただ、あのワーザーを2度破っているサンが伸び代を考慮すれば上と判断しました。ジャイアントトレジャーはC.スミヨン騎手をわざわざフランスから呼び寄せえはいるもののあくまで本番狙いの馬体。そして、昨季マイル路線で飛躍を遂げ、エイブルに迫る大関格まで出世したコンテントメントは復調途上が明らかで狙いを下げました。

 さて、出走馬が最後の周回を迎えた時、携帯にショートメールが飛び込んできました。香港ジョッキークラブに勤める友人からでした。「チャドの馬が最高ですよ!」。チャドとは日本のワールド・スーパ―ジョッキー・シリーズにも香港代表として参加したマシュー・チャドウィック騎手。香港を代表する騎手、そして引退後は調教師としてもリーディングに輝いたA.クルーズ調教師の秘蔵っ子です。彼が騎乗するのはこのレースにビューティーオンリー、ビューティーフレーム(美麗之星)に続く第三の男として出走してきたロマンティックタッチです。重賞未勝利、単勝最低人気から検討段階で家賃が高いと消していた馬ですが、最後の周回をするロマンティックを見てみれば、ビューティーオンリー、サンジュエリーに劣らぬ気配。穴場へ向かう後ろ髪をひかれるような思いに襲われました。

 レースはA.クルーズ厩舎3頭出しの2番手格、ビューティーフレームが気持ちよくゲートを飛び出すと予定通りの先手、4ハロン47秒86とやや早めのペースで飛ばします。続いてコンテントメント、ジャイアントトレジャーと続き、人気のビューティーオンリー、サンジュエリーは後方2、3番手から牽制しあうように追走、仕掛けところを虎視眈々と狙います。
 ビューティーフレームはやや速い流れを気持ちよく逃げて残り400mまで引っ張りましたが、先行集団からロマンシングタッチ、コンテントメントがこれに襲い掛かり、馬体を合わせて叩き合いを演じているところを直線馬場中央からサンジュエリーがこれに肉薄。サンジュエリーよりも仕掛けを遅らせたビューティーオンリーが残り100m、大外から上がり最速の脚を繰り出し、ロマンシングタッチ、サンジュエリーをまとめて差しきりました。

 2着は友人が絶好の出来と伝えてきた単勝97倍のロマンシングタッチが僅かにサンジュエリーを抑え、A.クルーズ厩舎は昨季に続きこのレースの1、2着を独占。同厩のビューティーフレームが引っ張ったハイペースが見事奏功した形となりました。
 ビューティーオンリーはこの連載2回目で紹介した重賞、ササ・レディーズパースをスポンサーした化粧品小売りチェーンの総帥にして香港ジョッキークラブ一、二の大馬主、郭少明氏の持ち馬でアイルランド産の5歳セン馬。イタリアで2歳デビューしG3勝ちを含む4戦3勝の後に香港移籍。これまでに23戦6勝2着5回3着3回の好成績を収めています。
重賞は昨季のチェアマンズ・トロフィー(G2・4/3・シャティン芝1600m)以来の2勝目。エイブルフレンドが順調さを欠く中、12月11日の香港カップに向けて強豪日本勢を迎え撃つ香港勢一番槍の地位を得ました。

 振り返ってみればサンは本番を見据えたまだ余裕のある作り、更に上昇が見込めそうです。また、復調に手間取っていたコンテントメントも先行して4着に粘りこみ、本番へのめどをつけられました。マイル戦線で最大のカギを握るエイブルフレンドに関しては次回、ジョッキークラブ・スプリント回顧で詳しく触れます。ご期待下さい。


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■甘粕代三(あまかす・だいぞう)プロフィール
1960年、東京生まれ。高校時代から競馬にのめりこむ。
早稲田大学第一文学部卒。在学中に中国政府官費留学生。
卒業後、東京新聞記者、テレビ朝日記者、同ディレクター、
同台北開設支局長などを務める。中国留学中に香港競馬を初観戦、
94年ミッドナイトベット香港カップ制覇に立ち会ったことから
香港の競馬にものめりこみ、2010年、売文業に転じた後は軸足を
日本から香港に。香港の競馬新聞『新報馬簿』『新報馬経』に執筆、
テレビの競馬番組にも出演。現在、新報馬業(『新報馬簿』『新報馬経』)
駐日代表、北京市馬術運動協会高級顧問を務める。

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