最新競馬コラム

コーセイ競馬

 731

 
 「内柵からの馬1頭分の安全域」をキープしていれば、ノボプロジェクトは尻を嘗めるほどに外から肉薄接近してきた馬(フォルメン)を蹴らなかったのか?
 成人式の日の中山競馬4R新馬戦で起きた9頭というJRA史上最多落馬事故を、採決委員は加害馬(ノボプロジェクト=3番人気)と被害馬(フォルメン=10番人気)の因果関係によるものと断定した。その採決は加害馬失格、三浦皇成騎手を開催4日間(24日まで)の騎乗停止に処すというものだった。 
 不運にも縁者に不幸があって、当日は中山競馬場(ウマニティの新年会にも招待されていた)に行けず、事故については携帯のレース結果速報で知った。翌朝、サンスポ1面でその凄さ(よくぞ撮ったり連続写真)を見て驚き、競馬面で詳しい記事を読み進むうちにムカついてきた。
 黒田記者も「記者の目」にリポートしているが、走路妨害(?)を引き起こしたという「内ラチから1頭分(馬が1頭走れるスペース=いわゆる車間距離とは違う)」を開けて走らなければならないという内規があることさえ知らなかったし、それがなぜ走路妨害(後ろから肉薄してきた馬の前肢に蹴り上げた蹄が当たって躓いたこと?)の原因になるのか。もし、ノボがラチから1頭分開けて走っていたら、フォルメンは蹴られずにすんだとでもいうのか。その確たる根拠(少なくとも物理的な)がはたしてあるのか。
 逆に言えば、そういう内規を十分に承知しているなら、規則違反して内ラチすれすれを回っている「危険馬」の尻を嘗させるほどに肉薄し、外から圧迫した馬(騎手)自体の過失(不注意)も問われなければならない(これが車間距離)。早い話が、勝浦騎手が危険防止(内規)のために馬1頭くらいのスペースを保って進出していれば、ノボの回し蹴りは空転していた。あるいは蹴らなかったかもしれない。
 騎手の名を伏せて公平に見ても、終始先頭に立って内ラチにそって走っていたノボに「外斜行」はなかった。「動きは小さかったが、加害馬と被害馬の因果関係が特定できた。馬の癖とは認められず、騎手としての結果責任が運用された」と裁決委員は発表したが、JRAホームページのパトロールフィルムを何度見ても、「小さな動き」は誰の目にも確認できるようなものではない。「あっ、やった! これじゃあ仕方ねえか」といった、ファンの目にも一目瞭然の本物の(?)進路妨害では断じてなかった。
 ノボは初めから内ラチ沿いに逃げ、3~4コーナーにかけて後続馬が接近してきたときに内を絞めて邪魔したわけではない。斜行というのは内とか外に進路を急に変更することであり、「斜行、斜飛、押圧、衝突、高声、鞭の不当使用」と明記されている、走路妨害に対する騎手への制裁の項目には、どう考えても当てはまらない。
 そもそも「馬1頭分の余裕」は厳密な規則(罰則)ではなく、危険防止のための注意事項(指導)の範囲にとどまっているのではないか。でなければ、内ラチとの馬1頭ぎりぎりの間隙を縫って突っ込んで来るバクチ馬だって、処分(最低でも罰金、戒告)されてしかるべきだろう。重~不良馬場の開催で、誰も通っていない内ラチの馬1頭分ほどの〝良馬場〟(グリーンベルト)を突いて、まんまと逃げ切ってしまう馬だっている。それも違法行為として罰せられなければならない。それとも「1頭分」は勝負どころの3~4コーナーに限定されるとでもいうのだろうか。
 そうした諸々が、いままでに明確に説明、表記された記憶がない。一般ファンどころかメディアや、ひょっとするとオーナー厩舎関係者さえ知らない、使い勝手のいい内規が拡大解釈されて責任転嫁(オトシマエ)の手段とされたように感じてならないのだ。
 いまさら憤っても仕方ないが、こうしたJRAの親方日の丸、役人体質は昔から一向に変わらない。競馬で起きた不本意な事象(事故など)はすべて運転手つまり騎手の責任にしてしまう。欠陥車(馬)を作り、心身ともに爆弾を抱えたクルマを整備し、慣らしてテストしてレースに送り込む調教師やスタッフ、その危ないクルマのリスクを見抜けず(知ってしても知らぬふり)出走を許可する主催者。厳密に言えば、それらすべてに責任の一端(あるいはほとんど)があるはずなのに、実戦での事故原因を最終ドライバー(騎手)に押しつける。おまえの御法(乗り方)が悪いんだ!
 三冠馬ミスターシービーのダービーがそうだった。もともとがかなりの悍馬(気性が激しい)で、口向きの悪さを矯正するためのハミ吊りによってハミを固定していた。そのハミ吊りの片方がダービーのパドックで暴れて切れてしまい、時間が無くて交換させてもらえずに仕方なくハミ吊りなしで出走した(させられた)。が、案の定、騎手の制御及ばす2度、3度斜行し、4コーナではキクノフラッシュ(わが◎)をはじき飛ばすほどに体当たりしてしまった。採決委員の下した審判は騎手失格(騎乗停止)、馬はおとがめなし(優勝)。吉永正人騎手が返還(する必要はなかったのに)した優勝カップが美浦トレセン事務所に安置されていたが、その哀しげなカップが物言えぬ騎手の無言の抗議に思えてならなかった。今ならもちろん、悍馬・CBも失格になっている。
 この一大事件(?)を機に、馬の癖(へき)による不可避の事象に対する騎手制裁も緩和(情状酌量)されたが、それでも今回のような理不尽な牽強付会(こじつけ)による見せしめ的な制裁がまかり通っている。立場を替えれば、大惨事を引き起こして窮地に立たされた施行者の取り繕いもわからないではないが、それが公正競馬だと言い張るのなら、煌星の競馬は何なのだ。
 彼は自分の御法に不注意があったことを認め、関係者に謝罪して回ったというが、もしノボプロジェクト自身に蹴癖があっての不可抗力の事故だったらどうなのか。初出走の若駒を、きついコーナーのぎりぎりを最速でブレることなく走らせる騎手の傑出した技術、才能をどう評価すればよいのか。馬が若く、未経験ゆえに起きた事故であることは誰の目にも間違いない。採決の目には騎手も若く未熟であり、うぬぼれてて天狗になりかけているのが気にくわずに、ひとつお灸でも据えてやれくらいの気持ちがあったのかもしれない。たとえそうだとしても、いやそれならなおのこと、傲慢このうえない公正競馬より煌星競馬をサポートしたくなる。事故に巻き込まれた人馬たちの不運を、今の自分の境遇に重ね合わせつつ、釈然としないムカつきを抑えることができずに寝酒の瓶をたぐりよせた。明日天気にな~れっと。

関連キーワード

 ナイス!(0

このコラムへのコメント

コメントはありません。

新着競馬コラム

人気競馬コラム

会員登録(無料)でできること

レース情報

今週の注目レース

4月21日()
フローラS G2
マイラーズC G2
4月20日()
福島牝馬S G3

⇒今週の番組表へ

先週のレース結果

4月14日()
皐月賞 G1
アンタレスS G3
4月13日()
中山GJ G1
アーリントン G3

⇒先週の番組表へ

総賞金ランキング
JRA競走馬総賞金ランキング
4歳以上
1 ドウデュース 牡5
102,726万円
2 スターズオンアース 牝5
84,098万円
3 リバティアイランド 牝4
74,444万円
4 ディープボンド 牡7
67,569万円
5 ジャスティンパレス 牡5
65,388万円
6 シャフリヤール 牡6
59,685万円
7 タスティエーラ 牡4
57,005万円
8 ジャックドール 牡6
49,004万円
9 ソールオリエンス 牡4
48,668万円
10 ナムラクレア 牝5
47,685万円
» もっと見る

3歳
1 ジャスティンミラノ 牡3
27,482万円
2 ステレンボッシュ 牝3
21,547万円
3 ジャンタルマンタル 牡3
18,666万円
4 アスコリピチェーノ 牝3
16,854万円
5 コスモキュランダ 牡3
15,392万円
6 シンエンペラー 牡3
11,128万円
7 コラソンビート 牝3
9,942万円
8 エトヴプレ 牝3
9,644万円
9 スウィープフィート 牝3
9,386万円
10 レガレイラ 牝3
8,278万円
» もっと見る