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GⅠメモリアル ~2001年 阪神ジュべナイルフィリーズ~
超がいくつも付くような予想下手でも、天性の馬券下手でも、長いこと競馬をやっていれば、美味しい思いをすることはある。自分だけでなく、周囲の負け組仲間を見渡しても、「一度も万馬券を獲ったことがない」とか、「1日を通してプラス収支を計上したことがない」とか、そこまで残念な輩はさすがにいない。誰もがウハウハの瞬間を何回かは経験している。
そして、どんなヘッポコでも人生で一度や二度は“神がかった的中劇”の主役になることがあるものだ。3連単1点。単勝万馬券。なんでもいい。自信の有無に関係なく、結果的にとんでもない的中―――そんな、まるで自分のこととは思えないようなミラクルヒットを飛ばした経験は皆さんにもあるだろう。まだないとしたら、この先きっとそんな瞬間が訪れるはず。
ともかく、ふだんは試練ばかりを与え続ける競馬の神様も、時には弱者にも微笑んでくれる。それが競馬の魅力であり、毎週馬券を買ってしまう決定的な要因であったりもする。
2001年12月2日の日曜日。この日はグリーンチャンネル+PATという態勢で、自宅で競馬を楽しんでいた。土曜日を終えた時点での口座残高は、確か2万円くらいだったと記憶している。
ホームランは狙わずに、堅実にヒットでつないでいこう。当たり外れを繰り返しながら、1日たっぷり競馬を楽しもう。
そんな気持ちで朝から本命サイドを中心に買っていたのだが、これがもう当たらない当たらない。午後に入るころには、すでに半分近くを溶かしてしまう状況だった。
このままではマズい。メインの前にパンクする……。
当時の自分はとにかく我慢がきかなかった。そのことは本人も十分に自覚していたので、午後イチの時点でメインの馬券を買っておくことにした。阪神3歳牝馬ステークスから装いを新たにした阪神ジュべナイルフィリーズ。狙いは珍しく人気薄。「馬券を買えなかったレースで穴予想が的中」ほど辛いことはない。その最悪の事態を回避するために、先手を打っておいたのである。これはある種の好判断だったのだが……。
タムロチェリーの単勝を4000円、アローキャリーの複勝を2500円。なぜそんな金額設定にしたのかはまったく覚えていないが、とにかく怪しいとみていた穴馬2頭の馬券を買った。自信があったわけではない。でも、大混戦だったので、ひとつ間違えば来てもおかしくないと思っていたのだ。ペリエにファロン。一流の外国人ジョッキーが跨るという点にもそそられた。
当たっているじゃないか! 万々歳じゃないか!!
そう思われる方もたくさんいらっしゃるだろう。確かにこの馬券は数時間後に見事的中する。タムロチェリーの単勝は1800円、アローキャリーの複勝は940円もついた。結果的に、かなりの利益を得ることができた。
しかし、このあと半泣き状態でタラレバを何度も口にする、まさかの事態が待ち受けていたのだ。わずかなボタンの掛け違いが、考えたくもないほどの大きな“(とらぬ狸の)損失”を生むことになろうとは……。
阪神JFは単複だけでなく、連勝馬券も買うつもりだった。お昼の時点で買わなかった理由はふたつある。ひとつは、馬体重が発表されてから最終的な相手候補の絞り込みを行おうとしていたから。もうひとつは、阪神9Rのエリカ賞に絶対的な自信を持っていたからである。
エリカ賞で手元の資金を増やし、馬体重を確認してからメインの連勝馬券を買おう。いま振り返っても、なんでこんな短絡的な思考に至ったかとあきれ返る。馬体重云々は関係なしに、タムロチェリーとアローキャリーの馬連・ワイドは買うと決めていたのに。
エリカ賞を迎える時点で、PATの口座残高は3000円になっていた。本当はもっとあってほしかったけど、朝からさっぱり当たらないのだから仕方がない。このレースで増やせばいいや。絶対に当たるし。そう確信して、サンデーサイレンス産駒の良血2頭、ヤマニンセラフィムとモビーディックの馬連①⑪に3000円すべてをぶち込んだ。示すオッズは2倍ちょっと(最終オッズは2.2倍)。まぁ、倍の6000円になればいいだろう。メインの連勝馬券の資金としては十分だ。
ところが……。まさかまさかの1着3着。2頭の間に、ブライアンズタイム産駒の良血馬ビワワールドが、すっぽりと挟まってしまったのである。ヤマニンセラフィムは勝ってくれたが、モビーディックが予想外のクビ差3着。ヤバい。予定が狂った。
でもね、いざというときの対策はちゃんと考えてあったんだ。後輩の石川に頼めば問題なし。彼はいつも10万円近くのPAT残高を抱えていて、急な発注にも対応してくれる。そんな頼れる競馬仲間なのだ。数千円程度ならふだんから快く引き受けてくれるので、こっちは完全に安心しきっていた。
「大くん、申し訳ない。俺も今日はギリギリなんすよ」
受話器の向こうから、想像もしていなかった答えが返ってきた。
「マジで? 最悪1000円でもいいんだけど。買いたい2頭がいるから、それの馬連・ワイドを500円ずつ……」
「ゴメン、そんな余裕もないんですよ。俺がメイン買えなくなっちゃう。で、ちなみに何と何を買いたいんですか?」
「タムロチェリーとアローキャリーだけど」
「ワハハハ、ないない。そんなの来ないから絶対に大丈夫。無駄にお金を捨てずに済んだじゃないですか」
「たぶん無理なのはわかってるって。でも、ダメもとでいいから500円ずつでも買っておきたいんだよ。こういうのって万が一来たら、超後悔するじゃん」
「わかりました。中山と阪神の準メインのどっちかを獲ったらなんとかしますよ。また電話します」
祈るような気持ちで電話を待った。阪神10Rが終了。電話が鳴る。石川だ。
「すんません、ダメでした」
時計を見る。いまから最寄り(当時)の立川ウインズにクルマを走らせても間に合わない。こんなギリギリのタイミングで、気軽に馬券を頼めそうな友人はほかに見当たらない。
万事休す。この段階で、メインの連勝馬券を買うことを断念した。
阪神ジュべナイルフィリーズの最後の直線。タムロチェリーが馬場の真ん中を豪快に突き抜ける。
ウオッシャー! 単勝もらったー!!
そのまま1着でゴール板を通過。再度の雄叫び、といきたいところだったのだが、このときわずかな違和感を覚えた。あれ? 内のほうにいたのって、もしかして……。
VTRが流れる。先頭でタムロチェリーがゴールイン。ここまではいい。そして焦点は2着争いへ。やはり、逃げたアローキャリーが2着に残っているではないか。複勝もバッチリ的中で、本来なら絶叫してもおかしくない瞬間なのだが……。
なぜか、そこには頭を抱えてへたり込む自分がいた。予想は完璧。馬券も完璧。なのに、激しく落ち込まざるを得なかった。心境が複雑すぎて、しばらく、その態勢から動くことはできなかった。
電話が鳴る。たぶん石川だ。でも、出ない。出ることができない。話す言葉が何も見つからない。
馬連②⑧の配当は2万5350円。あとで調べたワイド②⑧の最終オッズは51.1~52.4倍。
お昼の時点でタムロチェリーとアローキャリーの馬連・ワイドを買っていレバ。
エリカ賞で全額勝負という無茶をしなかっタラ。
モビーディックがもうちょっと頑張ってくれていレバ。
石川のPAT口座残高がいつものように潤沢だっタラ。
石川に頼めないとわかった時点で立川ウインズに走っていレバ。
競馬の醍醐味であり禁句でもある「タラレバ」。2001年12月2日は、おそらくこれを最も多く口にした日である。
そして、ひとつのレースで9万円近い利益を得ながら落ち込んだのは、後にも先にもこの日しかない。
※写真は当時愛用していたモバイルメイト(PAT馬券購入端末)。
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