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チリより深いピリ

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◇桜田門外の変ーという暗殺事件とはな

んの関わりもないことだが、10日の毎日

王冠を現場で観戦し、キツネかタヌキに化

かされたような気分になった。

 ◇キツネはペルーサ(単勝2・4倍)の

出遅れ。ゲート練習を十分に積んで万全と

いう触れ込みはどこへやら「飛ぶように出

る馬だから2、3歩めが遅くダッシュがき

かない」(安藤勝巳騎手)という悪癖は矯

正されてはいなかった。三つ子の魂百まで

もで、こういう天性の癖(気質)が簡単に

治せないことは、多くの癖馬を見てきてわ

かっている。それが今後もこの馬の弱点、

アキレス腱になる(安定感がなく人気を裏

切る)であろうという予測も立てていた。

ペルーサというのはそういう馬なのだから

仕方ない、と。

 ◇タヌキはショウワモダン(2番人気=

単勝4・9倍)。これには唖然、呆然、あ

いた口がふさがらない。「休み明けとして

はパーフェクト。4コーナーを回ってくる

ときの手応えと気迫は、安田記念(1分3

1秒7で快勝)を思い出した」とまで、追

い切り後に絶賛した後藤浩輝騎手も杉浦調

教師も、見せ場もなくブービーに大敗した

理由について確たる説明ができなかった。

スプリンターズSローレルゲレイロのよ

うに「苦しがっていた」わけでも、落鉄や

脚部不安を発症していたわけでもない。な

のになぜ負けたのか、あそこまでだらしな

く。誰だって真相を知りたくなる。調教師

や騎手の発信した情報を信じて馬券を買っ

た人はとくに。

 ◇昔は重賞の合間にノンタイトルのオー

プン戦がいくつもあり、本番への調整、叩

き台として有力馬、実力馬が重い斤量を背

負ってよく負けた。そういうプロセスはフ

ァンも承知していて、人気馬を蹴飛ばして

好配当を楽しむこともできた。負けても納

得という暗黙の了解があった。今はそうは

いかない。GⅠが増え重賞レースが林立

し、調教(追い切り)代わりに重賞を叩く

なんて悠長なことは言ってはいられないか

らだ。天皇賞・秋の前に毎日王冠を叩くに

しても、その時点で見せ場もなく大敗する

ような馬のつくりかたで通用するようなレ

ベルではなくなっている。多少ゆとりのあ

る仕上げではあっても、それなりの魅せ場

がないようでは話にもならない。つまりシ

ョウワモダンにそんな巧緻な計算(オープ

ンを叩くのと同様の)があったとは常識的

にも考えられない。ではなぜ? 桜田門い

ショウワモダンのヘン、でしょう?

 ◇関係者もわからない(明かせない?)

不可解な敗因を自ら考察すること。これが

実は次なる一手につながる。調教師も騎手

も「わからない」ような負け方(時には勝

ち方)をする馬には、人気を裏切るような

サイクルで好走、凡退を繰り返す体質、気

質の〝変馬〟が多い。たとえばスプリンタ

ーズSでコケたワンカラット。函館スプリ

ントSをレコード勝ちしたときも、キーン

ランドSを勝ったときも、注意深く情報を

チェックしてれば、いろいろ泣きが入って

いた。が、スプリンターズSでは万全、今

回は絶好調! でコテンと負けた。言うな

らば「泣きのワンカラット、強気のノーカ

ラット」。

 ◇不安を抱えた状態で好走するのに、完

調になると期待を裏切る。こういう馬がい

ることも、その理由を考えよともしないフ

ァン(馬本意ではなく騎手で馬券を買うよ

うな)には理解しがたい話とは思うが、勝

つべき馬、勝てそうな馬が惜敗でなく大敗

するのには必ず理由がある。なければなら

ない。ショウワモダンの変。それは後藤騎

手が絶賛した追い切り朝の、杉浦調教師の

意味深なコメント(サンスポの記事)から

もうっすらと感じ取れた。

 【春はダービー卿CT→メイS→安田記

念と3連勝で一気にGⅠタイトルを獲得。

寒い時期、時計がかかる馬場などの条件が

揃わないと走らないと言われていた馬が、

一変の活躍ぶりだった。「夢のよう。何が

変わったかいまでもわからないよ」と杉浦

調教師は首を傾げる。それだけに「元気は

いいし、毛ヅヤ、カイ食いもいい。春があ

まりピリピリしていたから、当時と比較す

ると、これでいいのかという思いはある」

とトレーナーは正直な思いを口にする。し

かし、先週、今週とびっしり追い「気の抜

けたサイダーに炭酸を入れる」調教を行っ

たことで良化。この日の動きに後藤も自信

を得た。】(10月日サンスポ=松永昌

也記者)

 ◇完璧とか完調とか絶好調といった見出

しとは裏腹に、杉浦調教師はショウワモダ

ンという馬についてかなり深部、細部まで

打ち明けて話している。自分自身もあまり

の変化に驚き、なぜこうなっているのかわ

からないといったニュアンスさえ伝わって

くるほどに。実は、こうしたさりげないよ

うに思えるコメント、表現のなかに真相、

真実が隠されていることが多い。キーワー

ドを拾ってみよう。

 ★寒い時期、時計がかからる馬場でない

と走らない馬だった。

 ★何が変わったか今でもわからない。

 ★春はピリピリしていた。当時と比較し

てこれでいいのか?


 ★気の抜けたサイダー状態(覇気がな

い)

 ◇寒い時期にしか実績のない馬であるこ

とは4、5、6月のダ卿、メイS、安田と

3連勝する前の7勝が冬場に集中していた

ことでも一目瞭然。夏場は避けてきたよう

な経歴と同時に、月のラジオNIKKE

I賞(11着)、エプソムC(6着)、新

潟日報賞(13着)のように猛暑時には使

われても生彩がなかった。安田記念を勝っ

てしまったことで、こうしたキャリア(体

質)が払拭されたかのように錯覚された

が、実は、本質的には冬馬なのではない

か。だとするなら、ピリピリしていた春当

時と違ってボケ(気が抜け)ていたという

説明がつく。騎手を乗せてビシッと追い切

って炭酸(気)を入れたという調教師の意

図も、逆の意味でわかる。つまり、その時

点では半信半疑だったのだと。騎手は時計

の出る軽いポリトラックゆえに、「安田記

念のときの4コーナー」のような手応えを

感じたかもしれない。が、そもそもポリト

ラックというのがクセモノで、四肢に負荷

をかけずに楽に速いタイムの出る、脚部不

安を抱えた馬や病み上がりの馬に適したリ

ハビリトラック的なイージーな馬場なの

だ。これは私見だが、ポリ専門に追い切ら

れる馬はなにがしかの弱点を抱えている、

つまり信用できない。

 ◇わずか数行の追い切り原稿(リポー

ト)の中からも、GⅠ馬でありながらその

全貌が明らかになっていない「未知の馬」

の本質を探り出す(推察)ことができる。

知っているつもろりで、実は肝心なことに

ついたは何も知らない馬、あるいは知ろう

としない予想者、馬券ファンが多いからこ

そ、馬の個性を追究し続けることのメリッ

トは大きい。GⅠを勝った馬でさえそうな

のだから、普通のオープン馬や条件馬など

も突き詰めていけば、自分だけが分かる馬

の数は増え続ける。馬を知ること。それに

勝る王道、予想道は人知のおよぶ世界では

存在しない。調教師や騎手が「まさか勝つ

とは…」あるいは「なぜ負けたのか…」と

理解に苦しむような結果をも、馬がちゃん

と教えてくれる。

 ◇ショウワモダンが次ぎに走るときには

たぶん〝ピリピリ〟してくるだろうし、ロ

ーズSで馬券圏外に敗れ去ったアパパネ

アグネスワルツの巻き返しの是非だって、

馬が問わず語りに教えてくれている?

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