グリーンセンスセラさんの競馬日記

武豊騎手をどう活かす

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武豊騎手「衰えゆく競馬の象徴」を競馬界はどう活かすのか。2016年はその「モデルケース」となった一年 ~2016年競馬界プレイバック2~━ Gambling Journal ギャンブルジャーナル/2016年12月12日 08時00分00秒
http://biz-journal.jp/gj/2016/12/post_2064.html

衰えゆく「競馬の象徴」をどう考えるべきなのか。そのモデルケースとなった一年

 武豊騎手が世間に「復活」を印象付けたのは2009年以来、6年ぶりに年間106勝を挙げ、全国リーディングでも5位に健闘した昨年である。本人は「まだまだ全然」と否定しているが、2010年の落馬事故の影響による低迷からの復活は競馬ファンを大いに沸かせ、やはり世間を競馬というローカルな世界に引き付けた。

 だからこそ、ここ数十年間における競馬界の最大の「至上命題」は、間違いなく武豊騎手の後継者を如何に作り上げるかに尽きるだろう。

 競馬を単なるオヤジのギャンブルから、昨今の華やかなイメージに変えたのは、胴元のJRAの運営努力も然ることながら、武豊騎手の存在はそれと同等といえるほど大きい(あくまでイメージの話だ)。

 一年中、ほぼ休みがない日本の競馬スケジュールで、競技の第一人者として積極的にメディアに出演し続けている武豊騎手の姿は「競馬の発展に最も大きな貢献を果たした」と述べても決して過言ではないはずだ。

 また、今の競馬界は武豊騎手が「話題の中心にいるのか」それとも「中心にいないのか」ということだけでも、世間からの注目度が大きく異なることが、ここ2年間ではっきりとわかったといえる。単純に、それらを取り巻く様々な数字が違うのだ。

 ただ、そんな武豊騎手も今年で47歳。常識的にアスリートとしての肉体的な全盛期は過ぎており、今後も成績が下り坂になる可能性は否めない。実際に、昨年こそ100勝を超えたものの、今年は現在71勝。残り2週で100勝を超える可能性は限りなく低い状況だ。

 仮にこのまま未勝利で1年を終えれば、落馬事故に遭った2010年の69勝とほぼ変わらない数字。つまりは「復活から逆戻り」と称されても仕方のない成績に終わるということだ。

 しかし、その一方で"それ"が今年現実になりつつあるにもかかわらず、武豊騎手の不振を嘆く声はまったくと述べて良いほど聞こえてこない。


何故なら、それは「今年の武豊騎手」が昔のように要所要所でしっかりと存在感を発揮しているからだ。

 そして、その象徴的なものが数々の積極的な海外遠征だろう。

 率直に述べて、年頭の武豊騎手の状況は決して華やかなものではなかった。武豊騎手と友好関係にあるノースヒルズマネジメントの代表・前田幸治オーナーが、年明け早々にワンアンドオンリーとベルカント、3歳馬のラニによるドバイ遠征の鞍上に武豊騎手を指名。本人も快諾したが、決して勝算のある馬ではなかった。「貧乏くじを引かされた」という声もあったほどだ。

 また、1月にAJCCをディサイファで制したものの、春までの重賞勝利はそれだけ。さらにはエアスピネルこそいたものの、他の3歳トップクラスは尽くC.ルメール騎手やM.デムーロ騎手といったライバルの手に渡り、クラシック制覇は現実的に難しい状況。勝ち星も伸ばせず、リーディング争いからも早々に脱落していた。

 だが、そんな流れをすべて変えたのが、ラニによるUAEダービーの勝利だ。

 G2であるものの日本馬がUAEダービーを勝ったのは史上初。それもラニの前評判が決して高くなかっただけに、鞍上・武豊騎手の勝負強さが大きくクローズアップされた。

 さらにラニの陣営は、このままダート競馬の本馬アメリカに遠征し、ケンタッキーダービーを始めとしたクラシック参戦という壮大な計画を発表。日本の競馬ファンや関係者を大きく沸かせた。

 一度好転した歯車は止まらない。ここでされに北村宏騎手が昨年12月に痛めた膝の故障を悪化させたために、昨年の菊花賞馬キタサンブラックの鞍上が空白化。その結果、北島三郎オーナーの要望もあって騎乗依頼が武豊騎手に回ってきたのだ。

 このコンビによる快進撃は語るまでもないだろう。今年、武豊騎手は「JRAの重賞」となると実は6勝しかしていないが、その半分はキタサンブラックによるもの。特に天皇賞・春とジャパンCというG1の中でも大きな価値を持つ2勝も含まれており、抜群のインパクトがあった。

 その一方で、かつての全盛期のように日本を代表して積極的に海外へ遠征する武豊騎手。

 ラニは日本初となる米3冠を完走し9着→5着→3着と、決して参加するだけに終わらない結果を残した。そんな日本の競馬ファンにとっては"夢のような時間"の中で、武豊騎手はさらに大きなことをやってのける。


 エイシンヒカリと共に参戦したフランスのイスパーン賞で10馬身差の圧勝。全世界に衝撃をもたらし、英レーシングポスト紙が「131」という世界一の評価を与えたのだ。

 結局、上半期で武豊騎手が勝ったJRAの重賞は先述したAJCCと、アウォーディーによるアンタレスS、キタサンブラックとの天皇賞・春だけだったが、そんなことをまったく感じさせない存在感。日本の競馬は、武豊騎手を中心に回る"本来の姿"を取り戻していた。

 さらに海外遠征もひと段落した夏辺りから注目され始めたのが、武豊騎手の交流重賞での活躍だ。

 海外と同じく地方競馬との交流重賞にも積極的に足を運ぶ武豊騎手は、そこで11月の兵庫ジュニアグランプリで6着に敗れるまで、すべて馬券圏内を確保。今年ここまで[9.2.1.1]と神懸った成績を収め、まさに"無双状態"だった。

 これにより5月の天皇賞・春以降、次に武豊騎手がJRAの重賞を勝つのは10月の京都大賞典になるのだが、地方で華々しく重賞を勝ちまくっていたおかげで、JRAの重賞を勝てていなかった印象はほぼなかったというわけだ。

 その後もヌーヴォレコルトと共に11月に開催されたアメリカのブリーダーズCに参戦、12月にも香港Cをエイシンヒカリで、香港ヴァーズをスマートレイアーでそれぞれ参戦するも目立った結果は残せず。

 ただし、その間にキタサンブラックでジャパンCを勝ち、ダート路線でもアウォーディーと新時代を築くなど、国内で存在感を発揮した武豊騎手。好転した歯車は噛み合い続け、有馬記念でキタサンブラック、東京大賞典でアウォーディーと、どちらも1番人気が濃厚な最高の形で年末を迎えようとしている。

 ただ、同時に言えることは"その形"ができている時点で「武豊効果」によって有馬記念も東京大賞典も世間から例年以上に大きく注目されることが半ば決まっており、売り上げを重視する競馬界としては、それこそが「従来の成功の形」といえるのだ。

 こうして2016年の競馬界は「大成功」のまま、幕を閉じようとしている。

 中央、地方ともに年間売上のアップは間違いないといった状況。世間全体の経済状況から鑑みても「躍進」といえるだけの成長を示すことだろう。その中での「武豊効果」は、決して小さなものではないことは明らかだ。

 何故なら、競馬人気や売り上げの中枢を担う多くのライト層は武豊騎手が今年大活躍したことを知っていても、その一方で昨年よりも30勝少ない年間70勝程度にとどまり、5位だったリーディングもようやくベスト10という状況(度重なる海外遠征による影響も当然ある)を知らないからだ。

 そういった点において「衰えゆく『競馬界の象徴』武豊騎手と今後どう向き合っていくのか」という将来の競馬界の売上や発展を占う意味で、今年の競馬は有効なモデルケースになったことは間違いないといえるだろう。

 無論、これは強引に武豊騎手をプッシュすれば良いという話ではない。競馬はその公正を保っているからこそ面白く、そこにファンがついてくるのだ。

 そういった中で先述したノースヒルズの前田オーナーや北島三郎オーナーのように「勝ち」を目指すことを大前提としながらも「競馬界を盛り上げたい」という心意気で武豊騎手に依頼するオーナーの存在......つまりはただ目先の利益を追うだけでなく、競馬界全体を意識して活動できる人々は、今後の競馬界の大きな支えになるのではないだろうか。

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