グリーンセンスセラさんの競馬日記

【徹底考察】モーリス マイル王が挑む距離の限界。

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【徹底考察】天皇賞・秋(G1) モーリス「札幌記念でまさかの敗戦を喫したマイル王が挑む距離の限界。しかし、最大の『不安材料』は距離よりもむしろ......」━ Gambling Journal ギャンブルジャーナル// 2016年10月25日 8時30分 http://biz-journal.jp/gj/2016/10/post_1620.html

『考察』

 昨年の最優秀短距離馬で、年度代表馬のモーリスが秋の天皇賞(G1)に挑むこととなった。

 前走の札幌記念(G2)は2014年5月の京都新聞杯(G2)以来の2000m以上の挑戦。その時は7着に敗れているが、馬自体がまだまだ成長途上だったことは確かだ。

 そういったこともあって、単勝1.6倍と安田記念以上の支持を集めたモーリスだったが、同じ堀宣行厩舎のネオリアリズムの逃げの前にまさかの敗戦を喫した。

 折り合いを重視した中団の追走から、勝負どころで外を回して追い上げたが逃げ馬に2馬身の差をつけられた敗戦。

 鞍上を務めたJ.モレイラ騎手はサンスポの取材に「向正面の馬場が重たくて、後ろからでは厳しかったね。ただ、折り合いはスムーズだったし、距離も問題なかったよ」と相棒を擁護した。

 ただ、それまで重賞勝ちがなかったネオリアリズムに完敗を喫したレース内容は、今後に不安を残すものだった。

 実際にレースを見守ったノーザンファーム代表の吉田勝己氏は「正直、悩んでいる。これで分からなくなりました」と、一時は天皇賞・秋への参戦自体が躊躇われる状況にもなっていた。しかし、その一方で「引っ掛からなかったことは良かった。距離はこなせると思う」とも発言しており、それが最終的な判断につながったのだろう。

 モーリスが2000mに一抹の不安を抱えていることは確かだが、その上で今回R.ムーア騎手を確保できたことは大きい。ムーア騎手とは昨年のマイルチャンピオンシップ(G1)と香港マイル(G1)を連勝した相性の良いコンビだからだ。

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 美浦のウッドチップコースで行われた1週前の追い切りでは、同じく天皇賞・秋に出走予定のサトノクラウンと併せ馬を行ない先着。陣営はスポーツ報知の取材に対して「至って順調。この日も長めからしっかり追った。馬体は少し増えているけど、このひと追いで締まってくると思う」と順調な調整を強調している。
【血統診断】http://biz-journal.jp/images/morisukettou.jpg


結論から述べると、血統的に中距離はむしろ歓迎なはずだ。血統構成だけを見れば、父スクリーンヒーローのもう一頭の代表産駒ゴールドアクター(有馬記念)よりも長い距離をこなしてもおかしくないほどスタミナに優れた配合だ。

 母メジロフランシスこそ未勝利だが、祖母メジロモントレーは牝馬ながら2500mのアルゼンチン共和国杯を制すなど、豊富なスタミナとパワーを持つ。母父のカーネギーにしてもスタミナやパワーに寄った典型的な欧州馬だ。従って、本来とてもモーリスのようなスピード溢れるマイラーが生まれる配合ではない。

 ただ祖父のグラスワンダーは、1400mから2500mまでの重賞勝利がある日本競馬史に残るオールラウンダー。隔世遺伝によって、マイルで高いパフォーマンスを誇るモーリスが長い距離をこなせる可能性は十分にある。

 ただし、競走馬の距離適性は血統だけで判断できるものではない。菊花賞と天皇賞・春を制したキタサンブラックがその典型で、気性や操縦性によって競走馬の距離適性は大きく左右される。

 例えば、菊花賞馬エピファネイアやダイヤモンドSをレコード勝ちしたモンテクリスエスを輩出したシンボリクリスエスは、その一方で1400mのスペシャリスト・サンカルロの父でもある。シンボリクリスエス×クラフティプロスペクター(アグネスデジタルの父)という配合のサンカルロは、本来マイル以上をこなしてもおかしくはないが、その気性の激しさゆえに短距離を主戦場としていた。

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他にも一昨年の高松宮記念の勝ち馬コパノリチャードは、ダイワメジャー×トニービン×カーリアン×ブラッシンググルームというスタミナに優れた配合ながら、皐月賞で逃げバテ、NHKマイルCでも逃げバテて、結局は短距離に矛先を向けた典型的なスプリンターだ。

 そういった例からも血統的な側面だけで、モーリスが中距離向きと判断するのは早計だ。血統的は、その馬を計る指標の一つに過ぎない。


≪結論≫

 今回のモーリスにとって最大の焦点となるのは、やはり「2000mでも従来のパフォーマンスを発揮できるのか」ということだろう。

 すでに昨年の安田記念でG1初制覇を果たしてから、マイルCSも制して春秋統一マイラーとなっているモーリス。マイル王が距離の限界に挑戦するケースは決して珍しいものではなく、過去にも例がある。過去に統一マイラーとなった9頭の2000m以上の「最高成績」は下記の通りだ。

ニホンピロウイナー 天皇賞・秋 3着
ニッポーテイオー  天皇賞・秋 1着
オグリキャップ   有馬記念 1着
ノースフライト   エリザベス女王杯 2着
トロットサンダー  未出走
タイキシャトル   未出走
エアジハード    天皇賞・秋 3着
アグネスデジタル  天皇賞・秋 1着
ダイワメジャー   天皇賞・秋 1着

 やはり2000m以上のレースで最も距離がマイルに近い天皇賞・秋に良績が集中しているが、このクラスになると最低でも「馬券圏内」には食い込んでいる。つまり、決してベストではないかもしれないが、「ずば抜けて高いマイル能力があれば、2000mで不利を埋めることは可能」ということになる。

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 確かに札幌記念で2着に敗れたことにより距離が不安視されているモーリスだが、レース展開や雨を敗因に挙げる声も少なくない。春はやや順調さを欠いたローテーションだったが、この秋はここまでしっかりと調整が重ねられている。

 ただ、モーリスには左回りで手前を替えない癖が散見される。

 今年や昨年の安田記念では、最後の直線に入ってもなかなか手前を切り替えずに伸びを欠いている傾向がみられた。そのせいで昨年は勝ったもののヴァンセンヌにクビ差まで迫られ、今年はロゴタイプに1馬身1/4の差をつけられて完敗している。

 香港G1の圧勝劇も含め7連勝の内、昨年の安田記念が最も危ないレースだったことからも、モーリスが左回りに弱点を抱えている可能性は高い。

 無論、それは陣営も承知しており矯正してくると考えられるが、天皇賞・秋の舞台は安田記念と同じ東京。左回りで悪癖が再発すれば、直線で思わぬ失速が起こり得るかもしれない。

 したがって、モーリスの不安材料は距離よりも、むしろ「左回りの東京」という舞台設定ということになる。

 過去にトーセンジョーダンやヘヴンリーロマンス、エアグルーヴなどが札幌記念からの直行で好走しているように、天皇賞・秋に実績のあるローテーション。春は順調さを欠いたが、この秋は昨年のような強い姿が見たい。
(監修=永谷研(美浦担当))

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